ようこそグラドル幼馴染みがいる教室へ 作:nightマンサー
今回は次の話への幕間の話を作成してみました。
短いですが、楽しんで頂けたら幸いです。
(まさか、愛里に守られるなんてね……)
無人島試験が開始して数時間が経過した頃、私―――伊吹澪はDクラスが【スポット】としている場所から近い森の中で座り込んでいた。着ているジャージや顔は土で汚れ、背中の辺りには足跡も付いており、見た目はかなり悲惨な状態だ。
(それにしても、土で顔やジャージを汚して龍園から逃げてきたって思わせるなんて、愛里って意外と機転が利くのね)
龍園から代案を出すように言われた愛里は、吃りながらも土で汚すという案を出した。確かに見た目だけならそれで騙せるし、殴られた痕よりも全身で悲惨さを感じさせる事が出来る。もしかしたら愛里はグラビアアイドルの経験から、人にどう見られるかということに対して熟知しているのかもしれない。その愛里の代案のおかげで、私は一切傷付かないで済んだ。
(愛里にも驚かされたけど、虎城も大概だったな…)
愛里の提案で終わったと思ったら、虎城が急に自分を殴ったものだから、再度驚かされた。その後の虎城の言葉から、勝手な想像だけど、龍園を止めなかったのに罪悪感を感じたんだと思った。
(作戦上仕方ないって私も割り切ってたのに、自分を殴るのでケジメつけるって……愛里が好きになるのも納得のお人好しだわ)
―――そんな優しい者同士、目茶苦茶お似合いだけど。と付け加える。そんなことを考えていると、遠くから話し声がこちらに近付いて来るのが聞こえた。恐らくDクラスの生徒だろう。
(……庇ってくれた愛里のためにも、しっかりやらないとね)
◆
(やっぱり、龍園さんは凄い人だ……!)
龍園さんからこの特別試験での作戦の概要を聞いて、俺―――石崎大地は間違っていなかったと確信した。入学当初こそ龍園さんに楯突いたが、龍園さんのそのカリスマ性と能力の高さ、何より勝ちへの執念に惚れ込んだ。
「―――作戦は以上だ。てめぇらは今回の特別試験、明日まで目一杯バカンスを楽しめばそれでいい。その様子そのものが、無人島でサバイバルしてる他のクラスへの不満を高めるからな」
龍園さんの言葉に沸き立つクラスメイト達。何せ俺達はバカンスを楽しむだけで、今後毎月80万プライベートポイントがクラスに入ってくるのだ。特別試験が開始して数時間で、俺達は既に勝ったも同然だった。そんな中、龍園さんの後ろから伊吹が此方に向かってくる。
「……あん?伊吹、虎城と佐倉はどうした?」
「……虎城が自分で自分を殴ったから、暫く戻ってこないよ。金田、虎城に氷持ってくから、少し分けて」
伊吹の言葉にその場にいた全員が驚き、場が一瞬静まり返った。
「金田」
「っ!す、すみません。どうぞ、伊吹氏」
同じく固まっていた金田に伊吹が再度声を掛けたことで、時間が動き出したようにクラスの奴らがざわつき出す。
「おい、伊吹。どういう事だ?」
「私もわかんないわよ。なんか、自分で自分が許せなくなったから、気合い入れ直したんだってさ」
伊吹はそう言い残して、氷の入ったビニールを片手に来た方向へ戻っていった。
「りゅ、龍園さん。どういうこと、ですかね?」
何故虎城さんが自分自身を殴ったのか、皆目見当がつかず龍園さんに尋ねた。
「大方、俺が作戦のために金田と伊吹を傷付けようとしたのを、結果的に止めなかったからだろうな。虎城は入学当初みたいな確実に必要な暴力以外は避けたがる。伊吹が無傷なのは佐倉が止めたからで、虎城じゃねぇ。だがまさか、気合い入れに自分を殴るとはな」
龍園さんの言葉に、俺を含めたクラス全員が虎城さんの行動の意図に気付いて、息を呑んだ。
(じゃあ虎城さんは、作戦のためとはいえクラスの仲間が傷付いたから、自分にけじめを?)
そう気付いた俺は、このクラスであることに誇りを感じ、同時にもう1つ確信した。
―――龍園さんと虎城さんの2人なら、必ず頂点に立てる……!!
その後、島に残る追加メンバーを虎城さんが募集したので、役に立つために迷わず立候補した。
【参考】もし虎城と佐倉の2人が龍園クラス以外だったら――
- 葛城・坂柳クラス(初期Aクラス)
- 一之瀬クラス(初期Bクラス)
- 不良品クラス(Dクラス)
- 龍園クラス以外認めない!