国の交付金7200万円が泡と消えた!? 千葉・一宮町、サーフィンで町おこしのはずが…使途に疑問符<ニュースあなた発>
2023年12月26日 07時38分
サーファーの聖地・千葉県一宮町が7年前、サーフィンによる地域おこしを掲げて国から受けた交付金7200万円について調べてほしいとの声が、本紙の「ニュースあなた発」に届いた。町はサーフィンセンターや移住者向け住宅の整備を構想し、用地測量や経済効果調査などに交付金を充てた。しかしその後、建設費が確保できず計画は頓挫。町議会では「多額が動いたのに町に生かされなかった」と、今なお議論が続いている。(加藤豊大)
「国からの交付金が泡と消えた」。12日にあった一宮町議会12月定例会で大橋照雄町議が町側に迫った。2021年東京五輪のサーフィン会場となった釣ケ崎海岸近くが地元の大橋町議は、18年の初当選以来ほぼ毎回この問題を議会で取り上げる。
この日疑問視したのは、旧市街地にある観光スポットの一つ玉前神社近くで、町が空き家を現代風に改装したシェアオフィスだ。
テナントとしてラーメン店などが入るこの施設は17年にオープン。サーフィンで町を活性化させる「一宮版サーフォノミクス」計画の一環で、町が立地調査と改修をした。費用の3000万円は、国の「地方創生加速化交付金」を使った。
当初は町も出資した第三セクターが運営したが、経営難に陥り、21年に民営化。本紙に声を寄せた同町在住の男性は「この施設はサーフィンとはあまり関係がないように思える。この他にもサーフィンセンターは結局完成しておらず、交付金の効果が感じられません」と口にする。
そもそもの始まりは、町が15年に策定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」にある。
この中で町は一宮版サーフォノミクスを提唱し、(1)住民と各地のサーファーらが集うサーフィンセンター建設(2)移住を考えるサーファー向けのお試し住宅(モニタリングハウス)整備(3)旧市街の商店街活性化などを、5カ年計画で構想した。
実現に向け、町は16年度事業分として同交付金7200万円を受け、(3)に関連する前述のシェアオフィス整備のほか、経済効果調査(494万円)、モニタリングハウス予定地の測量(518万円)、サーフィンセンター基本構想策定(497万円)などの計10事業に充てた。
町企画広報課によると、17年度以降は国の「地方創生推進交付金」を活用し、モニタリングハウス整備を進めるはずだった。そのための実施計画も国に提出していた。
ところが、17年3月、国が「土地造成費は制度上、交付金の対象外」との考えを示し、資金確保のめどが立たなくなった。サーフィンセンター建設はモニタリングハウス完成を前提としていたため、両事業は現在も凍結されたまま。再開の予定はないという。
◆町長「一定の効果あった」
本紙の取材に応じた馬淵昌也町長は、一連の事態について「モニタリングハウスやサーフィンセンターは建設に至らず、結果として用地測量やセンターの基本構想策定の事業が無駄になったのは事実だ」と認めた上で、「土地造成費が交付金の対象外となるのをもし事前に知っていたら、これらの事業は実施していなかった」と説明する。
ただ、7200万円の交付金事業全体については「シェアオフィスは町ににぎわいをもたらした。実現できたものでは一定の効果が上げられた」と語る。
国と地方の関係に詳しい名城大の昇秀樹教授(地方自治論)は「サーフィンによる町おこしの構想自体は良かったが、計画通り実現できなかったという点で、交付金の使途として失敗だった。財政の民主的コントロールの観点から、国民や住民の納得が得られるかが重要だ」と指摘する。
<地方創生関係交付金> 2014年に安倍晋三政権が閣議決定した人口減少対策「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を受け、各自治体が「地方版総合戦略」を策定し、その実現に向けて「地方創生推進交付金」が創設された。これに先立ち、同趣旨の地方創生加速化交付金が15年度補正予算で盛り込まれた。
地方創生推進交付金を巡っては、栃木県塩谷町が地元農産物の6次産業化を目指した商品開発事業で、不適切な支出があったとして、交付金と延滞加算金計1217万円を自主的に国に返還するケースもあった。
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