テレビ朝日が、2014年8月11日に、スクープ動画投稿サイト「みんながカメラマン」を開設したのですが、その利用規約の中で、「投稿動画は無償で自由に編集・改変して番組で放映するが、問題が発生した場合の解決や賠償の責任は、投稿者が負う」といった規定があったため、サイト開設その日に炎上した、という事件がありました。そして、この事件の少し前に、UNIQLOのリリースしたアプリの利用規約が炎上する事件もありました。

 テレビ朝日やUNIQLOのような大企業が作成した利用規約で、なぜこのような炎上事件が起きてしまうのでしょうか。

 私はこれを、大企業の法務部が陥る罠だと思っています。

 大企業の法務部は、日々、高度な企業法務を取扱っているため、法律にも精通しています。そのため、利用規約にどのような規定があれば、会社の「権利」を「最大化」する一方で、「責任」を「最小化」できるのか、理解していて、そのような規定を盛り込んでしまいます。

 UNIQLOの場合は、ユーザーが投稿したオリジナルTシャツのデザインを最大限に利用するためには、著作権を譲渡してもらう規定にしよう、テレビ朝日の場合は、投稿動画でトラブルが発生した場合に、局の責任を最小化できる規定にしよう、ということですね。

 これが、一対一で取り交わす紙の契約書の時代なら、特に騒ぎにはならなかったでしょう。契約者が、契約を結ぶ際に、紙の契約書を目にするだけなので、そもそも、問題点に気付かれる機会が少ないですし、気付かれたとしても、その人が契約しないだけで終わるでしょう。

 しかし、Webサービスの利用規約の場合は、全く話が違います。Webサービスの利用規約はいつでも誰でも(別にそのサービスを利用するわけではない人でも)見ることができます。そして、その中には、利用規約に詳しい人がいたりして、利用規約の問題点に気付くわけですね。

 しかも、SNSが発達した現代では、一人の指摘があっという間に拡散します。あとは、「祭り」に参加したい人たちが、炎上を引き起こしてくれるというわけです。

 では、どうすれば利用規約の炎上を防ぐことができるのでしょうか。ポイントは二つです。

  1. ユーザー目線でチェックする
  2. 法的に不要なことは規定しない

 ユーザー目線でのチェックは、UNIQLOの利用規約炎上事件を見れば分かります。ユーザーは、オリジナルデザインTシャツを作るために、アプリにデザインを投稿するわけですよね。

 それなのに、投稿デザインの著作権がUNIQLOに譲渡されて、以降投稿デザインを利用することができなくなってしまうなんて、あり得ない話ですよね。ユーザー目線でチェックすれば、こんな規定は受け入れられない、ということが分かるはずです。

 法的に不要なことは規定しないことは、テレビ朝日利用規約炎上事件を見れば分かります。例えば、他の人が撮影した動画が無断で投稿され、テレビ朝日がそれに気付かずに放送してしまった場合、著作権侵害のトラブルになります。ですが、著作権者から著作権侵害のクレームがあった場合に、局として何も対応しないわけにはいきません。

 放送自体が、著作権の侵害行為なわけであり、侵害行為の停止は、局の責任になります。また、それによって局が被った損害については、投稿者に対して賠償を請求することは可能です。そして、この投稿者の損害賠償責任は、利用規約に規定していなくても、法律上当然に発生します。つまり、今回炎上を招いた規定は、法的には不要な規定ということです。

 確かに、法的に不要な規定であっても、利用規約にあえて明記することで、ユーザー対応をやりやすくするという事実上のメリットはありますが、それで炎上を招いてしまえば、元も子もありません。

 以上の二つのポイントを押さえて、会社を法的に守りつつ、炎上を招かない利用規約を作ってくださいね。