自民の機能不全に幹部「党内も誰も信用できない」 規正法でゴタゴタ

自民

今野忍

 岸田文雄首相が入る衆院特別委員会での審議など、4日に予定されていた政治資金規正法をめぐる日程が狂ったことに、国会審議での他党との窓口役となっている自民党の国会対策委員会の幹部からは日本維新の会への不満が漏れる。ある幹部が「合意をひっくり返した維新が悪い」と言えば、別の幹部は「維新は党首まで出てきて、ご丁寧にサインまでしているのに、後からゴチャゴチャ言ってきて。あり得ないだろ」とぶちまけた。

 維新と自民との協議は、表立って進めていた自民、公明両党による与党協議とは別に、水面下で進んでいた。岸田首相の命を受けた木原誠二幹事長代理が維新と接触していたが、公での協議は5月31日の首相と馬場伸幸代表によるトップ会談が初めてだった。

 今回のゴタゴタ劇は維新側の確認不足のみならず、「幅広い合意をめざす」としてきた首相が、維新との合意という「形式」を優先させ、改革案の「中身」をおろそかにした結果とも言える。

 党内協議を経て決まった改正案の内容が、他党とのトップ会談を通じて次々と変わる状況に党三役経験者は憤る。「ここまで修正に修正を重ねたなら、党内議論をやり直すのが筋だ」

 重要案件をめぐる国会審議が唐突に予定変更になったことにもため息が漏れている。首相に批判的な非主流派の閣僚経験者は「固まっていたはずの衆院本会議での採決日程を飛ばすなんて情けない。党内がかなりバラバラなのは『外』から見ていても分かる」。政権と距離を置く無派閥の閣僚経験者も「もう誰も状況を統制できていない。統制しようとする意思を持つ人もいない。みんなバラバラの方向を向いている。あまりに末期的だ」と語る。

 自民の組織論からみれば、党運営の全責任を負うのは幹事長、そのもとで国会運営の手綱を握るのは国対委員長、党の政策決定を担うのは政調会長だ。強い政権ならば、首相が信頼を寄せる幹事長の下に、それぞれが役割をこなし、スケジュールをにらみながら有機的な連携を図る。しかし、現在は岸田首相と茂木敏充幹事長に信頼関係はなく、党全体の機能不全の根っこになっている。

 規正法改正の議論に携わってきた議員は「ミッションも権限も明確になっていない。普通の会社だったら上司が『あなたはここをやって駄目ならこうやってください。それで報告して下さい』となるが、今の自民にはそれがない」と愚痴を漏らす。

 ある幹部はこう言い放つ。「党の誰がどこと、どう交渉しているかよく分からない。党外もそうだが、党内も誰も信用できない」

 首相は今国会中の衆院解散の見送りに向け、最終調整に入っている。党内からは「できるわけない。このまま選挙に突入したら、自民はみんな負ける」(首都圏選出の中堅)などと「当然」との見方が広がる。

 首相は解散を見送る代わりに経済政策や外交、憲法改正などに力を注ぎ、政権浮揚を図る構えだが、疑心暗鬼が渦巻く党内で、首相自身に最も不信の目が向けられている。閣僚経験者は、追い込まれた首相が党を追い込みかねない「暴発」を懸念する。「国会開会中でなければ衆院を解散できないなんて憲法には書いていない。やろうと思えば出来る。可能性は排除できない」(今野忍)

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    牧原出
    (東京大学先端科学技術研究センター教授)
    2024年6月4日18時9分 投稿
    【視点】

    派閥が機能せず、かといって党中央が議員を掌握できなければ、こうなります。つまり自民党の「民主党」化です。国民が求めている政治資金改革は、自民党の不透明な政治資金のやりとりを公表するよう求めています。その結果起こるのは、自民党の統治能力が失われ、かつての民主党のようになることです。派閥もかつての民主党の議員グループ程度にしかならないでしょう。これはもはや不可避となりつつあります。党内での岸田首相に対する反発とはいっても、岸田首相は国民の声に従おうとしているのですから、結局は無力となるでしょう。自民党はゆるみ、個々の議員の事務所の運営は危機的となる。そこからどう立て直すかですが、かなりの年数を覚悟しなければなりません。「政局の終焉」とでもいうべき、先を読めない政治の時代が続きます。今後立ち現れる政党間対立とは、「民主党vs民主党」です。どちらが先にガバナンスを立て直せるかで、今後の選挙の勝敗も決まってくるでしょう。

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    • #裏金
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    蔵前勝久
    (朝日新聞政治部次長)
    2024年6月4日18時30分 投稿
    【視点】

     「固まっていたはずの衆院本会議での採決日程を飛ばすなんて情けない」  「もう誰も状況を統制できていない。統制しようとする意思を持つ人もいない」  「ミッションも権限も明確になっていない」  「党内も誰も信用できない」  裏金時以降、激しさを増した自民党内の疑心暗鬼が頂点に達し、政治家の言葉が尖っています。こうした言葉だけを見れば、岸田首相が自民党総裁としての党内の信頼を著しく失っており、いつ「岸田降ろし」が起きてもおかしくないように見えます。しかし、具体的な動きはありません。「岸田首相じゃ衆院選は戦えない」と思っている議員たちは、9月の総裁選で「合法的」に降ろして、新しい選挙の顔で衆院選に臨めばいいと思っているのでしょう。昔の自民党ならば「岸田首相じゃ国がおかしくなる」と考える政治家がいて、9月の総裁選を前に首相に退陣を迫るよう求める声がでていたかもしれません。  自民党内で組織だった「岸田降ろし」の動きが出てこない理由は派閥がなくなったことの背景にはあるのかもしれません。派閥は自民党内における粘土の役割を果たしていました。砂のようにバラバラな議員を緩やかにまとめあげて、「数の力」で執行部に厳しく迫る。問題の多い派閥ですが、そうした「効能」もあったのも事実でしょう(こうした見方の一端は、下記の連載「派閥の蹉跌」にまとめられています)。いま、自民党は砂のようにバラバラです。それぞれがトップの岸田首相に不満を持ちますが、まとまった声になっていません。秋の、派閥なき総裁選ではどういう力学が働くのか、今のところ、まだ見通せません。 https://www.asahi.com/rensai/list.html?id=2102

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