日本テレビ系で日曜22時30分から放送中のドラマ『セクシー田中さん』は、ヒューマンドラマやラブコメの要素が絶妙にブレンドされ、笑いあり、感動ありの展開が評判に。「心打つ作品」とSNSでも話題となり、TVerのお気に入り登録者数はスタート時から増え続け、86万人超え(2023年12月14日現在)。強力なライバルが多い日曜日に放送されるドラマの中でもトップに立ち、再生回数ランキングで常に上位にランクイン。終盤に向けて、さらに支持を集めている。
原作は現在、コミックスが7巻まで発売されている芦原妃名子による同名マンガ。昼は地味で目立たない会社員だが、夜はベリーダンサーとして活動するアラフォーの田中京子を主人公に、田中を慕う20代の派遣社員、倉橋朱里や周りの人々との交流、さらに登場人物の成長が描かれている。日本テレビの大井章生プロデューサーは、コミックがまだ1巻しかなかった時点で原作の存在を知ったという。
「タイトルがとてもキャッチーで目を引きました。コミックを手にした瞬間、『なんだ、このマンガは!?』と思ったほどです。タイトルだけだと『ギャグマンガかな?』と思わせますが、話が進むにつれヒューマンな物語が待っていて、登場人物一人一人の変化が丁寧に描かれていたのが、とても印象的でした」(大井氏、以下同)
実際にドラマ化に向け、動き出したのは2023年に入ってからのこと。
「原作にとても魅力を感じましたが、一方で驚きの急展開が続くストーリーではありません。ドラマにしたとき、視聴者のみなさんがどんな反応をするのか読めないところがありましたが、幅広い世代から支持されている大人気コミックなので、原作のよさを壊すことなくドラマにすれば心打つ作品になると考えました」
田中はAI(人工知能)のごとく優秀な仕事ぶりを見せる一方、人とコミュニケーションを取るのは苦手。しかし夜になると“Sali”と名乗り、派手なメイクと衣装でベリーダンスを踊っている。この意外性に富んだ主人公を演じるのが木南晴夏。同枠で23年の1月クールに放送された『ブラッシュアップライフ』でも、主人公の親友をナチュラルに演じ話題となった。木南は本作で地上波GP(ゴールデン・プライムタイム)連ドラ初主演になる。
「田中さんは“キャラクター”として確立していますが、決して非現実的でなくリアリティーがあります。それが原作の面白さでもあるので、実写化したときその二面性をどう表現するのか、塩梅(あんばい)が難しいと思いました。23年1月に放送した単発ドラマ『ノンレムの窓 2023・新春』で木南さんとご一緒して、コメディのお芝居が抜群に面白くて、さらに“この人いそう”というリアルなお芝居もお上手で。それで木南さんにオファーをしました」
昼と夜とではまったく違う顔を持つ田中の生き方に引かれ、20代ながら親交を深める朱里役は生見愛瑠。“めるる”としてバラエティー番組で人気を博す生見はドラマでもめざましい活躍を見せており、23年も『日曜の夜ぐらいは...』『風間公親-教場0-』などの出演作で確かな演技力を披露している。
「朱里は見た目が圧倒的にかわいいキャラクター。そのビジュアルから男性から言い寄られますが、そのことによって自分の気持ちが消耗されています。さらに中身がリアリストという絶妙なバランスを求められます。生見さんはそれぞれの作品で見せる演技の幅が素晴らしくて、ぜひ朱里を演じてほしいと思いました。朱里のキャラクターについて話し合った際も、『朱里の気持ちはすごくわかります』とおっしゃっていただき、共感を持ちながら演じてくれています」
男性陣の“炎上”言動もしっかり描く
劇中では、世代の違う田中と朱里の心の機微に加え、女性に対する偏見まみれの商社マン、笙野浩介(毎熊克哉)の発言や、何事もそつなくこなすが、なかなか本音を見せない笙野の同僚、小西一紀(前田公輝)の人との距離感などが描かれている。
「この作品では、突拍子もない展開はありませんが、普段の生活の中だったら“大事件”と言える出来事がたくさん起こります。日常の延長線の話として、劇中で起こる各エピソードを最大級の出来事になるようにしていますし、キャラクターが自分にとっての一大事に遭遇したことにより、それぞれの心情がどう変化するのかをクライマックスに持ってくるようにしています」
ドラマスタート前は、タイトルに“セクシー”とあるものの決してセクシュアルな物語ではなく、加えてただコミカルなだけでもない、“自分解放”をテーマにした人間ドラマであることを意識した宣伝を展開した。放送開始後は、真面目でひたむきな田中さんや、自分のことより他人を気遣う優しさを持つ朱里への応援が多く、「自分事」として物語を受け止めている視聴者が多い印象とのこと。半面、3話の『おばさんなんだよ! 抱けないよ』といったせりふに代表される、女性蔑視とも取られかねない笙野の発言や態度への反感が予想以上で驚いたと明かす。
「放送中にエゴサーチをしていると、最初、笙野がかなり“炎上”したんです。ある程度、そうなるとは思っていましたが、『こんなにも嫌われるんだ』というほどでした。でも、笙野は真面目で不器用なだけで、根はいい男。実際、話数が進み田中さんや朱里と関わることで笙野のこれまでを顧みる姿を描き、それとともにSNS上でも評価が上がっているので、安心しています(笑)。原作の中でも、年齢を重ねた女性に対して男性陣が失礼な言動を見せることがあります。今の時代、もしかしたらそれをドラマにするのは避けたほうがいいかもしれませんが、『実際にあること』との反響をいただいていますし、朱里がそういう場面に遭遇したとき、ちゃんと行動を起こします。それがこの物語のよさとして、支持していただけているのかもしれません」
最終回はクリスマスイブの12月24日。原作はまだ続いているため、ドラマオリジナルの結末となる。
「田中さんも朱里も、さらに笙野や小西も人との触れあいの中で変化しています。人って、根本はなかなか変われませんが、そのときどき価値観は変わっていくと思うんです。それは男女問わず普遍的なテーマなので、田中さんたちがさらにどう変わり、どんな生き方をしていくのかご覧ください。みんなの関係性が変わったことで、恋愛の面も最後まで盛り上がります。田中さんと笙野、朱里と古くから付き合いのある進吾(川村壱馬)、小西の微妙な三角関係……。恋愛軸もしっかり描くので、クライマックスに向けて恋愛ドラマとしても楽しんでいただきたいです」
日曜22時30分 日本テレビ系
TVerでもリアルタイム配信。放送後、TVerにて見逃し配信。huluでは第1話から最新話まで見放題独占配信。
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コメント1件
HJ
原作のよさを壊すことなくドラマにすればといの一番に言っているのは、原作者と脚本家の経緯を踏まえてなのか、壊し方の定義が違うのか。
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