【詳報】「原作改変どこまで」すれ違い正せず◆セクシー田中さん調査報告書で「説明会」【時事ドットコム取材班】
連続ドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが死去した問題を受け、日本テレビは31日、「社内特別調査チーム」の報告書を公表した。約3時間にわたる記者説明会の様子を詳報する。【時事ドットコム取材班】 【写真】「最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」訃報を受けた日テレのコメント ※説明会における主なやりとりを基に、発言内容を再構成しています。 ◇石沢社長「重く受け止め」 【ラジオ・テレビ記者会の要請を受け、日本テレビは「調査チームから直接説明し、理解を深めていただく」として、2024年5月31日午後1時から、東京・汐留の本社で「記者説明会」を行った。記者会見という位置付けではなく、カメラ撮影や録音の公開は禁止。冒頭に、石沢顕社長から発言があった】 石沢社長:原作者の芦原妃名子さんに対し、心より哀悼の意を表するとともに、ご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げる。今回の事態を重く受け止め、客観的な視点で検証を行うため、外部有識者に入っていただいて調査を行った。このドラマの制作に関わった全ての方に感謝する一方で、制作関係者や視聴者を不安な気持ちにさせてしまったことについておわびする。日本テレビは指摘された課題について、ドラマに関わる全ての方がより安心して制作に臨めるよう、責任を持って取り組んでいく。 ◇死亡原因究明「目的でない」 【社内特別調査チームの責任者を務めた、日テレ取締役の山田克也コンプライアンス推進室長が報告書について説明した】 山田氏:公表版の報告書は、誹謗(ひぼう)中傷などのニ次被害を防ぐため、人物を匿名としていることをご理解いただきたい。調査の目的は、ドラマの原作者、脚本家、出演者、制作者らが、より一層安心して制作に臨める体制を構築するためで、今回の原作者の死亡原因究明については目的としていない。日本テレビや小学館関係者、脚本家を含む社外関係者、有識者ら計39名に書面回答を含むヒアリングを行った。 ◇「原作改変」巡りすれ違い 【続いて、調査チームの早稲田祐美子弁護士が、報告書概要に沿って、調査の認定事実について説明した】 早稲田弁護士:ドラマ化する上で、一定の原作の改変が必要であることは、小学館や原作者も理解していたが、改変の許容範囲が一致しないこともあり、いくつかのエピソードを巡って原作サイドから厳しい指摘を受けることもあった。原作サイドは制作サイドに不信感を持つようになり、9、10話のドラマオリジナル部分については「創作」を入れないでほしいとして、脚本家の交代を強く要請。その結果、9、10話の脚本は原作者が執筆し、脚本家は降板した。 最終的に放送されたドラマは、原作者の意図を全て取り入れたものとなったと日テレ側も小学館側も認識している。 原作者はブログに「必ず漫画に忠実にすること」「場合によっては原作者が脚本を執筆する可能性もあること」などをドラマ化の条件として投稿したが、この条件があったかについては、日本テレビと小学館の間で認識に食い違いがあった。 ◇食い違いの出発点は… 【次に、調査チームの国松崇弁護士から、認定事実の分析結果について説明があった】 国松弁護士:原作サイドのドラマ化へ向けた要望が、制作サイドには許諾条件やそれに近い強い要求であると伝わらなかったことが、食い違いの出発点と位置付けられる。制作初期の段階で、制作サイドが原作者と面会して意思疎通する機会がなかったことも一因だと考える。 脚本家は降板を告げられた後、9、10話に自分が関与したことを示すクレジットを入れるよう要望したが、受け入れられなかった。こうした流れで不満が募り、この2話の脚本を原作者が担当することになった経緯をSNSに投稿することにつながった。 このドラマを制作する上で、6カ月という制作期間は適正だったのか。今回ドラマの制作を担当したのは比較的若手のプロデューサーだったが、フォローする体制が足りていなかったのではないか。ドラマは最終的に原作者の意向を全て取り入れた形で制作、放送されていたが、日本テレビは制作過程にみられた諸問題について、丁寧かつ真摯(しんし)に向き合うべきだと考える。 【次に、調査結果を受けた『今後へ向けた提言』について説明があった。ドラマ化に当たり、原作サイドとの信頼関係構築やトラブル回避のため、「原作者との面談を要請する」「最終話までの全体像が理解できるような構成案を事前に作る」「プロデューサーの業務量を見直す」などの内容】