「ゆとり教育」で教科書から消えた3桁同士の掛け算。「493×738」を筆算するときの考え方

子どもの計算力の低下

参考までに筆者は2000年前後に、3桁同士の縦書き掛け算の教育が必要であることを、朝日新聞2000年5月5日の「論壇」などで強く訴えた。残念ながら2002年からの「ゆとり教育」では、3桁同士の掛け算は算数教科書からは消えてしまった。

ところが、国立教育政策研究所は2006年7月に、「特定の課題に関する調査(算数・数学)」(小4〜中3の約3万7000人対象)に関して次の報告をした。

小4を対象とした「21×32」の正答率(正解は672)が82.0%であったものの、「12×231」のそれ(正解は2772)が51.1%に急落したこと。

さらに小5を対象とした「3.8×2.4」の正答率(正解は9.12)が84.0%であったものの、「2.43×5.6」のそれ(正解は13.608)が55.9%に急落したこと。

それを機に、「3桁同士、あるいは最低でも3桁×2桁の掛け算は学ばなくてはならない」という機運が高まってきた。

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まもなくして筆者は、文部科学省委嘱事業の「(算数)教科書の改善・充実に関する研究」専門家会議委員に任命された(2006年11月〜2008年3月)。その議論の結果、掛け算の桁数の問題、四則混合計算の問題、小数・分数の混合計算の問題……等々についての持論を最終答申に盛り込んでいただき、その後の学習指導要領下の算数教科書では掛け算の桁数の問題は改善されてきた。

『0.007÷0.003の「あまり」をすぐに答えられますか?「小数」と「分数」を徹底復習!』へ続く