五つ子ミルフィーユ   作:真樹

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13_お友達から

「風太郎君、今日はお出かけの日にしませんか?」

 

 テストも無事終わった翌日の土曜日。

 いつものように中野家へ訪れたのだが五月と一緒に出迎えてきた零奈が開口一番にそのような提案をしてきた。

 

「いやダメでしょ。娘さんのテストはまだ終わってないんですから」

 

 風太郎の言う通り、五月はまだテストを受けていないのであった。

 先日聞いたばかりの話であるが体質上の問題から学校の了承の下、テストを受ける人格を五月に固定しているらしい。人格によってテストの点数にバラツキが出るため、均一な成績を出すための取り決めとのことだ。

 そして一昨日と昨日、一般生徒のテストは実施されたのだが、彼女の場合はタイミング悪く五月の番ではなかった。

 テストは次に五月が学校へ行く日に行われる予定となっている。そのため五月は他の生徒と違ってテスト勉強期間から明けていないのである。

 だから出かけたところで風太郎自身はそれほど支障ないのだが、零奈の提案はむしろ娘の邪魔をするようなものなのであった。

 

「風太郎君の言う通りなのですが、ちょっと事情もありまして」

「事情って?」

「あなたも知っての通り五月は真面目な子です。真面目すぎると言えるほどに」

「そうですね」

「その真面目さが仇になってしまっていて、他の子達がテストを終えてしまっている中で自分だけテスト勉強の期間を余分にもらってしまっていることに、この子は後ろめたさを感じてしまうんです」

「でも仕方ないことだし、学校側だってそれを認めてるんでしょう?」

「もちろんです。五月もそれを理解しているですが、どうにも身が入らないようなのです」

「それはつまり……」

 

 零奈の横に立っている五月へ目を向けた。

 五月本人も申し訳なさそうにしながら──

 

「今私に勉強を教えていただいても、あんまり効果ないかと……」

「そうかよ」

 

 風太郎からすれば羨ましい限りの話だった。

 話を聞いた感想としても、そんな甘えたことを言わずにずっと机に齧りつけと言いたかった。

 けれども雇用主の代理人とも言える零奈(契約上の雇用主はマルオ)から今日の授業は不要と言われてしまっては、雇われている側としては承知するしかなかった。

 だったら家を出る前に電話なりで教えてくれと思いながらため息をつくと、背負ったままだったリュックサックを背負い直した。

 

「今日は授業なしってことですね。なら俺は失礼します」

「待ってください」

「五月? なんだよ」

「それでは上杉君に来てもらった意味がなくなってしまいます」

「……ここに来させたのはわざとってことか?」

 

 五月への問いだったが、頷いたのは零奈の方であった。

 

「五月から話は聞いています。色々と大変みたいですね」

「……そういうことか」

「せっかく娘のために風太郎君の予定を空けてもらっているのですから活用させて欲しいのです。もちろん、本来するはずだった授業の時間分のお給料は出しますから」

「勉強を教えるわけでもないのもらうわけにはいきません……それに、せっかくの提案ですけど今日が五月の番なら問題の解決の方もあまり期待できないかと」

 

 どこまで零奈が話を聞いているのか知らないが、揉めている相手は四葉である。五月との時間をもらったってどうしたらいいものか。

 先日、五月に相談に乗ってもらってから一週間が経過している。

 今日に至るまでの期間の中には四葉の番の日もあったが、学校で話しかけても相変わらず逃げられてしまった。

 

「私に考えがあります。上杉君は私についてきてくれれば大丈夫です」

「……わかったよ」

「それじゃあ風太郎君。五月をよろしくお願いしますね」

「お母さんは一緒じゃないんですか?」

「あなたがお母さんと呼ぶ筋合いはありませんよ」

「私はご一緒しません。同級生の親がついて行っても息が詰まるだけでしょう?」

「それはそうかもですけど……その、いいんですか?」

「何がでしょう?」

 

 何の話かと、今度は零奈の方が首をかしげる。

 正直、風太郎としても察してほしかった。

 

「その、娘さんを男と二人っきりで出かけさせることとか……です」

「────」

 

 瞬間、零奈が固まった。

 その反応を見てすぐに風太郎もまた自分は口を滑らせたのかと顔を伏せて口元を手で覆った。

 別に零奈からこういった話で怒られたことがないのだが、顔を上げられなかった。

 頭の上から零奈の声がする。

 

「あなたは、心配させるようなことをするつもりなのですか?」

「いえ! まったく! 少しも考えておりません!」

「……それはそれで娘達の幸先が思いやられるのですが──」

「は?」

「顔を上げてください。あなたのことはあなたのお父さんからよく聞いています。そのお父さん自身も信用できる人だということは昔からよく知っていますから、きっと大丈夫でしょう」

 

 それに、と零奈は続ける。

 

「こういうことに関しては、男親よりも女親の方が肝が据わっているものなのですよ」

「そういうものなんですか?」

「それに行き先は五月からあらかじめ聞いてますから」

「それを先に言ってくださいよ……」

「ただそれも信用しているからこそです。もしあなたが狼になりかねないような子であったら、送り出したりなんてしませんよ?」

「…………!」

 

 最後の一言に、風太郎の頭の中で考えていたことの解像度が上がり急にこんな話をしていることが恥ずかしくなってきた。

 横を見れば自分だけではなく、五月も同様に顔を赤くして俯いていた。

 零奈だけが飄々といつもの能面を維持していることに年の功を感じた。

 

(前に四葉から告白されたって話をこの人とした時は顔を真っ赤にしてやがったのに、何が違うんだ……)

 

 

 

 

 

 零奈に送り出されて五月と二人で街へ出てきた後、連れて行かれたのは映画館だった。

 

「チケットはもう用意してありますから、このまま中へ入ってしまいましょう」

「準備がいいな」

「ええ、それはもうバッチリです」

 

 意気揚々とした態度で胸を張る五月。

 途中で五月から自分の奢りでいいからポップコーンも買っていくかという提案もあったが、チケット代も向こう持ちのため辞退して売店を通りすぎると、後ろから五月に呼び止められた。

 

「すみません、自分の分だけだけ買うので少しお待ちください」

「早くしろ」

「わかってます! えと、ポップコーンの味はキャラメルと、後飲み物はオレンジジュースで──」

 

 注文を続ける五月をよそに、風太郎は入場口の前まで移動して少しの間待っていた。後から五月はトレーを持って追いついてきた。

 トレーには樽のようにでかいカップが乗っており、そのカップには少し揺らせばこぼれるほど山盛りにポップコーンが入っていた。

 入場口でポップコーントレーで両手が塞がっている五月の代わりに二人分のチケットを係員に見せた。

 中に入る直前になって、そういえば自分が何の映画に付き合わされようとしているのか知らないままだったことに気がついた。係員から返されて半券となったチケットでタイトルを確認すると、若干顔が引きつった。

 書かれているタイトルから思い出される宣伝用のポップアップに描かれていたのは確かコテコテのファンタジーアニメだったはずだ。

 

(コイツこういうのが好きなのか……?)

 

 意外に思いながら同時にあまり期待できそうにないと肩を落としつつも劇場内に入った。

 座席はかなり後ろの端側というあまり良くない席だった。

 劇場を見渡しすとそこそこの集客具合ではあるものの、空席だってそこそこある。

 事前にチケットを用意していたならもっと良い席を取れただろうに、五月はなぜこんな席をわざわざ取ったのだろうか。

 

 

 

 上映が始まってからどの程度経っただろうか。

 まだ映画は導入の部分を過ぎた辺りだったが、その時には風太郎はすでに眠気に襲われ始めていた。

 昨日までテストに向けて毎日遅くまで勉強をしていたのだ。テスト後の昨日はそれなりに睡眠を取ったが、一日で取れる疲労でもなかった。

 こんなつまらない映画の、しかも良いわけでもない席に連れてきたのはまさか自分を寝かせるのが目的なのかとさえ思ってしまう。

 結局こいつは何がしたかったのかと、意味がわからないまま妙な脱力感に襲われた風太郎が寝落ちするのにそれほど時間はかからなかった。

 

 

 

 

「……きてください。上杉君、おきてください」

「んあ……?」

 

 肩を揺さぶられる感覚に、微睡んでいた風太郎の意識はゆっくりと覚醒していった。

 つい先程まで大音量で聞こえていたはずの音がなく今はしんっ、と静まり返っていた。

 照明も点いており、劇場内に自分たち以外の人影も見当たらなかったことから映画はとっくに終わっているのだと理解した。

 

「もう映画は終わってしまいましたよ。早く出ましょう」

「らしいな……」

 

 半ば寝ぼけ眼のまま席を立った風太郎だったが、五月に連れられて映画の外へと出る頃にははっきりし始めていた意識が、更に十月に入り冷えてきた秋風によって完全に覚醒した。

 

「それで、次はどこへ行くんだ?」

「えと……」

「どうした?」

「少し待っていてくださいね。考えますんで」

 

(考えがあるんじゃなかったのかよ……)

 

 家を出る前はあれほど自信たっぷりに言っていたというのに、今の様子からするともう次の行く当ては無いように見えた。

 映画だって別に当たりだったわけではないし、何がしたいのか。そう五月に疑念の目を向けるも、すぐさま自分が偉そうに五月のプランを評価してしまっていることに気がついた。

 考えてみれば自分だって女子と二人で出かける場所を決めろと言われれば映画館という案すら出ずに途方に暮れていたかもしれない。

 先ほど見た映画だってどちらかといえば男子が好きそうな戦い多めの作品だったし、五月なりに考えた結果なのかもしれなかった。

 ただ、今日の予定は元々四葉に避けられてしまっている現状をどうにかするためのものだったのだが、その辺りを五月がどう対処するつもりなのかまでは考えてもわからなかった。

 考えてもわからないことを考え続けても仕方がない。そう思い風太郎はとにかく歩き出した。

 

「とりあえず適当にぶらつこうぜ。ずっと外にいても寒いしな」

「そ、そうですね……」

 

 次に二人が向かった先はショッピングモールだった。

 劇場とほぼ隣接する形で建っている総合店のこの場所なら、行く宛を失い彷徨っている自分たちにはぴったりだと思ったのだった。

 とはいえ、モール内の大半の施設はショッピング用のお店であり、特に買いたいものもなければ買う金もない風太郎の足が自然と向いたのは本屋くらいであった。

 五月とは別行動で適当に好きなのを見て回ろうと別れた後、風太郎の目指した先は参考書売り場だった。

 入り口から真反対の壁際に陳列されているゾーンに参考書の案内札は天井からぶら下がっていた。

 一直線に売り場へと向かっていると、途中で文芸エリアの棚が目に止まった。

 

「そういえば……」

 

 参考書売り場へ向けていた足と途中で変えると、文芸エリアで何冊かの本を見繕った。

 風太郎が立ち止まった棚は古い著名人の作品を文庫にしている棚だった。

 数冊の本を手にしてきた道を戻ると、漫画売り場で五月の姿を見つけた。

 

「五月、もしこの辺読んだこと無かったら読んでおいた方がいいかもしれないぞ」

「何です、これ?」

「教科書とか参考書のテキストに使われがちなやつだ。あらかじめ内容を知っていれば勉強の時に物語を理解するところから始めなくて済む」

「……呆れました。今日は勉強はしないという話ではなかったのですか?」

「い、一応娯楽にだってなるぞ……!?」

「でしたらそんな本じゃなくてここにあるような──」

 

 言いながら五月は、目の前にある棚を指出そうとして固まった。

 

「どうした?」

「何でもありません。とにかく、そういった本は今は結構です! 全部知らないですし、勉強のタメだと思いながらだと面白さも半減してしまいます」

「いや、知らないっつってもこれはわかるだろ」

 

 風太郎は手に持っていた文庫本のから一冊を抜き出すと、五月に表紙を見せた。

 夏目漱石の『こゝろ』だった。

 表紙を見て、顎に手を当てながら訝しげな顔を浮かべる五月。

 

「何でしたっけ、これ……」

「……おい。この前教えたばかりだろ」

「そ、そうでしたっけ!?」

 

 未だに思い出せていないようだが、途端に鬼の形相を浮かべ始める風太郎に慌てる五月。

 しばらくその場で思い出そうと唸ると、ようやく思い出したらしく顔を輝かせた。

 

「ああ! 先週の授業でやりましたね!」

「……ったく、危うく今すぐ帰って授業に切り替えるところだったぞ」

「あはは、すみません。まあ思い出せたのでセーフということで」

「…………」

「どうしました?」

「いや、何でもない。次行こうぜ」

 

 五月に問われた風太郎は、自身の中芽生えた疑問に違和感を持ちつつも、問いには答えず歩きだしたのであった。

 最後に誤魔化すように笑った五月の作り笑いに、違和感を覚えながら。

 

 

 

 ショッピングモール内のフードコートで夕飯を済まし、帰路についた頃には夜になっていた。

 つい先日、五月たちが転入してきた頃ならまだ明るかった時間だが日がどんどん短くなっていっていることから、冬が近づいてきていると感じた風太郎だった。

 帰り道の途中、池沿いの公園の道に差し掛かった時だった。

 それまで特に会話もなく二人で歩き続けていた中、別に風太郎も気まずさを感じたわけでもないが何となく口を開いた。

 

「結局今日は大した成果がなかったな」

「成果とは?」

「お前が言ったんだろ。考えがあるって」

「……ああ! そ、そういえばそうでしたね」

「何だよ。お前さっきから様子が変だぞ」

 

 先ほどの本屋のことも思い出しながらそう言う風太郎。

 映画が終わった辺りからどうにも五月の様子がおかしい。

 特に本屋を出る直前くらいからだ。

 もしかしたら四葉の対策何ていうのはただの口実なのかもと疑ってしまう。

 

「まさかお前、今日はサボリが本当の目的だったりしないだろうな?」

「そんなわけないじゃないですか。もしそうだったらお母さんが協力するわけがありません」

「……それもそうか。さっきは先週教えたことも忘れてたみたいだったからな。もしかしたらと疑っちまった」

「上杉君の授業はキチンと覚えてます。例えば"作者の気持ちを考えるんじゃなくて、自分の感じたことを回答に書け"とか」

「悪かったって。今日は四葉のことを考えてやんないといけないんだよな。勉強は後回しにしてやる」

「そうです! 勉強はとりあえず置いておきましょう。だって──」

 

 五月は夜空を見上げた。

 

「今日はこんなにロマンチックな綺麗な月の日なのですから」

「────」

 

 その一言が、風太郎の中に芽生えていた違和感が繋げた。

 先週の話を全てちゃんと覚えているなら、五月は今自分が何を言った言葉にどういう意味が含まれる可能性があるのか意識するはずだから。

 何より、"五月なら"そんなことは言わない。

 そこまで考えれば、一つの可能性が思い浮かんだ。

 

(だが、それを言えばこいつは逃げるかもしれない……)

 

 だから風太郎は、彼女の話に乗った。

 

「そうだな」

「おや、上杉君も中々風情が分かりますね」

「さあな。俺自身はよくわからん。ところでな、"五月"」

「何でしょう?」

「この前は悪かった。あの時『関わるな』なんつっちまったのは……本心じゃない」

「────」

 

 五月の目が……いや、おそらく本来謝るべきだった彼女の目が大きく見開かれた。

 きっとずっと作り笑いだったのだろう。崩れた表情から覗かせたのは、驚愕の二文字。

 

「俺自身、よく分からないんだ。恋愛なんてって気持ちがあるのも本当だが、お前のことを──」

「もう、大丈夫です」

 

 そう言って五月……いや、四葉は頭を下げた。

 

「やはりお前だったか。四葉」

「……はい。それと、謝らなければいけないのは私の方です。急に態度を変えて困らせてしまいましたから」

「いや、お前は悪くない……悪いのは感情的になっちまった俺だ」

「いいえ、悪いのは私です!」

「いいや俺だね!」

「私です!」

 

 気がつけば二人の顔が思った以上に近づいていた。

 言い合いに白熱しすぎていたことにようやく気が付くと、二人揃って顔をそむけた。

 つい最近までの気まずさとは別の、気恥ずかしさと形容したほうがいい時間が流れた。

 だけど、それも短い時間で、風太郎の方から口を開いた。

 

「一つ訊いていいか」

「なんでしょう」

「今日は初めから、四葉だったのか?」

「……私の番になったのは映画の途中からです。最初は本当に五月で、五月は初めから映画の途中に入れ替わるために寝るつもりでいたらしいです」

「だからあんな眠くなるような映画を選んでたのか……」

「失礼ですね。名作でしたよ、あの映画」

「……お前の好みに合わせて選んでたのか」

 

 今となっては入れ替わってしまっているから五月に確認できないが、どこまで計算づくだったのだろうか。

 おそらく今回の五月の思惑は二人で外出中に四葉とバトンタッチして逃げづらくするという作戦だったのだろう。

 しかし、作戦がもしそれだけだったとすると色々と五月は分の悪い掛けに出たことになる。

 風太郎五月のフリをしたままの四葉に最後まで気が付かない可能性もあった。

 そもそも入れ替わる人格は選べるわけではないので、四葉以外が出てくるかもしれない。

 むしろ失敗する可能性のが高いのではとすら思うのだが、今の結果になったのは全て計算尽くなのか、それとも単なる幸運なのか。

 どちらにせよ、五月の作戦は成功したと言えるだろう。

 だから風太郎は言わなければと思った。

 

「だがおかげでお前に謝る時間を作れた。あいつには礼を言っておいてくれ」

「上杉さん、まだ慣れていないんですね。私に言ってくだされば五月にも聞こえてますって」

「……そういえばそうだったな。なら今ので礼は言ったってことにしておく」

「うわ、上杉さんの面倒くさがり屋!」

「……四葉」

「はい?」

「その話し方はいつまでそうしているつもりだ?」

 

 四葉の今の話し方は先週から急に始めたものだ。元々はもっと馴れ馴れしい話し方をしていた。

 そうなった理由は風太郎からの失言であり、それが文字通り単なる失言で本意ではないと分かった今、四葉その話し方を続ける理由もない。

 けれど、四葉は首を横に振った。

 

「もう少し、このままでいさせてもらいます。上杉さんを今まで困らせてしまったのは事実でしょうし……その、『お友達から』っていうことで仕切り直しをさせていただければと……」

 

 そう言って上目遣いで見てくる四葉。

 結局その物言いからして、告白そのものを撤回するつもりはないらしい。

 一応は風太郎の反応を待ってくれているらしく、それからは手を胸の前でモジモジとさせながら返事を待っている。

 もしここで、ネガティブなことを言えば今日一日の苦労が水の泡となるだろう。

 回答など、一つしかないようなものではないか。

 

「わかったよ。それでいい」

「……はい! これからもよろしくお願いしますね、上杉さん!」

 

 

 

 

 

 これは一週間前、五月が風太郎に四葉との仲直りを協力すると申し出た晩の日記である。

 

『2017年10月7日 土曜日 五月

 聞いての通り、上杉君に協力をしてあげることしました。

 二乃、三玖……できれば一花も、協力してください。

 私達は自分の体の問題上、四葉の裏をかくことはできません。

 だから上杉君には正面から四葉と向き合ってもらいます。

 来週の金曜日か土曜日、私の番に上手くなれたら寝ずに翌日へ持ち越します。

 上杉君を映画に連れ出して上映中に隣で入れ替わります。

 映画は四葉の好きそうなものにしておくのですぐに眠れると思います。

 マナーモードのアラームを数十分おきにセットしておくので、四葉以外のあなたたちの番が回ってきてしまったらそのまま寝てしまってください。

 徹夜の体なら、ちょっと寝たくらいならすぐに二度寝できるはずです。

 

 それと四葉。きっとどうにかして上杉君から謝罪の言葉を引き出させたところで、あなたは納得しないでしょう。

 だからあなたは一つ、彼を試してみてください。

 私のフリをして、彼が気が付けるかを。

 私達を見分けられることが持つ意味を、あなたならわかると思いますから。』

 

 

 

『10月14日 四葉

 五月……五月の言ってた通りだったよ。

 上杉さんは少なくとも、私のことは嫌いじゃなかったみたい。

 これからはもう少し、上杉さんとの付き合い方を考えてみようと思う。あ、付き合うって友達としてって意味だからね!?』




アンケートのご協力ありがとうございました。
先日のお詫びで掲載したメモはこちらに移動させました。

2017年
9/7(木) 中野家転入。※実力テストの日から逆算。
9/8(金) 初家庭教師。二乃に睡眠薬を盛られる。※実力テストの日から逆算。
9/9(土) 実力テスト。全員合わせて100点。
    ※朝早くからの描写のため、土曜の家庭教師の日と想定される。
    また、五月が初めて上杉家に来た日に『明日姉妹を集めておいてくれ』と発言していたことから、文脈的にこのエピソードのことを指していると思われる。
9/11(月) 三玖の屋上の告白。※実力テストを『一昨日』と風太郎が発言。
9/19(火) 三玖と決戦。
    ※風太郎は三玖に勝つため一週間歴史の本を読んだと発言。
     9/18(月)は祝日のため学校は休みと思われる。
     図書カードの貸出期間に9/11~9/18の表記有。(風太郎どうやって本返した?)
9/23(土) 二乃と三玖の料理対決。五つ子裁判。※描写的に定例の土曜の家庭教師の日と思われる。
10/1(日) 花火大会。
    ※漫画では9/30日曜日と表記。ただし2017年の9/30は土曜。アニメでは日付の言及はなく日曜日とだけ発言。
    次話では登校中の一花が花火大会の日を『昨日』と言及しているため、日曜日が正しく、漫画の日付は誤りと思われる。
10/2(月) アドレス交換。四葉バスケ部の勧誘断る。※上記の通り、花火大会を『昨日』と一花が発言。
10/3(火) 推定。始まりの写真登場。二乃、昔の風太郎の写真を見る。
    ※アドレス交換の際に生徒手帳を二乃に渡しっぱなし。それに気が付いたのが夜の自宅なので、当日には返してもらってないことに気づいたと思われる。
    風太郎の焦りようから翌日には取りに行ってると思われ、二乃が寝ている部屋に侵入し、怒られてる時に五月と四葉が起きてくる描写もある。
    ただし、この日は平日。二乃は登校前にピアスホールを開けようとした?
    もしかしたら創立記念日など、暦に影響されない理由で学校が休みかも。
10/6(金) 中間試験を巡って五月と喧嘩。※泊まり込みの勉強の日から逆算。
10/7(土) 泊まり込みの勉強、一日目。※五月との喧嘩のことを『昨日』と風太郎が発言。
10/8(日) 泊まり込みの勉強、二日目。姉妹は図書館で勉強、五月と風太郎は仲直りして自宅で勉強。
10/11(水) 推定。二回目の泊まり込みの勉強。
     ※話している場所が学校での描写。風太郎が『明日が試験当日』と発言。
10/12(木)~13(金) 推定。テスト当日。※作者の高校が大体二日くらいテスト日に使ってた。
10/16(月) 推定。テスト返却。※描写の場所が図書室なので登校日と推測される。
10/21(土) 四葉の「好きだから」発言。※描写的に定例の家庭教師の日と思われる。
10/22(日)~9(木) 推定。結びの伝説の噂を話す。前田初登場程度で、他は特にイベントなし。
11/10(金) らいは風邪をひく。※林間学校前日のイベントで間違いない
11/11(土)~13(月) 林間学校※キャンプファイヤーの日(林間学校三日目)を風太郎の結婚式、2023/5/5から2000日前、つまり結びの伝説1日目として逆算。
11/14(火)~17(金) 推定。風太郎入院期間。京都の昔話を五月としたりなど。
        ※日付の描写一切なし。ただし後述のスケジュールを噛みすると一週間以上入院したとは考えづらい。
11/18(土) 0点のテストの犯人を当てる話。
     ※いつも通り、描写的に土曜の家庭教師の日と思われる。
11/23(木) 勤労感謝の日。四葉とデート。※明確な日付の描写有。
12/01(金) 菊登場。
     ※放課後の臨時家庭教師の提案に対し、一花が聞くの面倒を見る約束を『今日』と発言。
     また、 菊初登場のページで三玖が学生服を脱ぐ描写があることから、同日中の出来事と思われる。
12/02(土) 二乃と五月の喧嘩勃発。※土曜日と五月が言及している。
12/03(日) 二乃と五月家出開始。
     ※喧嘩後、三玖に二乃と五月が家でしたという話を聞かされるまでの間のコマ割りに太い余白がある。
     また、アニメでは翌日と明言していることから一日経過していると思われる。
12/04~05(月~火) 風太郎の努力空しく空振り。※二乃の宿泊先のホテルで二乃にスルーされる描写が漫画で二回ある。
12/06(水) 麗奈遭遇。※話の前後の流れから相対的に判断。
12/07(木) キンタローの正体バレる。※五月と夕飯を食べるシーンがあるため、一日経過していると思われる。
12/08(金) 陸上部合宿宣言。※話の前後の流れから相対的に判断。
12/09(土) 四葉退部、二乃断髪、二乃と五月の喧嘩終結。※土日合宿の初日ということから判断。
12/11(月)~15(金) 期末テスト。風太郎退任宣言。採点期間。テスト返却。
     ※土曜日には五つ子同士でテスト結果確認+江端から風太郎の退任の連絡がある。
    後述のクリスマスイブに風太郎を迎えに行くまでに物件探しや諸々の契約をしたと考えると、一週間でテスト実施から返却までやり切ったと思われる。
12/16(土) 江端家庭教師代行。五つ子新居探し開始。
     ※五月の発言から土曜日であることは各艇であり、前後の流れから12/16しかありえない。
12/17(土)~12/23(土) 引っ越し先物件探し。※期間中に学校へ行ったりなど時間経過の描写有。
12/24(日) ケーキ屋バイト中の風太郎を迎えに行く。※明確な日付の描写有。

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