BBC番組「日本の秘められた恥」を批判する愛国女性の正義感

「女として落ち度があった」って…
井戸 まさえ プロフィール

BBCの番組が放映された後、杉田氏は自身の発言部分について「切り取り」だと主張し、番組に抗議、そして「一番危惧しているのはこのこと」として、さらにこう発言している。

「BBC伊藤詩織特集のディレクターは以前、日本の性産業を糾弾したBBCの番組『Young Sex for Sale in Japan』を制作したErica Jenkin氏のようです。その時、出演していたのが、ヒューマンライツナウの伊藤和子弁護士。HRNが国連を利用して慰安婦問題の嘘を世界中にばら撒いたということについては、国会の質疑でも取り上げました。

そのHRNは今年3月、NYの国連で開催された女性の地位向上委員会で伊藤詩織さんとともにトークイベントを開催しています。これらは全て繋がっています」

つまり、BBCの放送の背後には伊藤和子弁護士がいるというのだ。慰安婦問題も、日本の性産業の問題も世界中にばら撒いていることは全て繋がっていると。

これに対し、伊藤和子弁護士は反論している。

「杉田水脈氏やネトウヨを名乗るアカウント等が
BBCの伊藤詩織し特集の背後に私がいる、と何の根拠もなく述べて私を誹謗中傷しているようですが、
一切そうした事実はありません。
私は今回、私に関するBBCの映像使用を許諾してません。
何の根拠もなく私を攻撃して守りたいものは何?
美しい日本?」(原文ママ)

杉田氏は十分な確認をしないままで発言することに躊躇はない。自分は正義を貫くヒーローだ。

邪悪な敵に指摘されれば、言葉足らずは棚に上げて「そんなことは言ってはいない」「良く読んでほしい」旨の反論を出す。

「この記事の中に『番組の取材に対し杉田議員は、伊藤氏には「女として落ち度があった」と語った。』と書かれており、ネット上では『セカンドレイパー』だとの批判が噴出していますが、これも[切り取り]です。
 もし女性が、薬を飲まされて無理やり連れ込まれて強姦されたのであれば、私は『女として落ち度があった』とは全く思わないし、そんな犯罪者は本当に許せないと思います。
が、この点については……」

いつものパターンで、批判されると対象となっている問題そのものについては肯定する。しかし、具体事例については徹底的に否定するのだ。

 

「杉田水脈(的日本女性)」の生きる場所

それでも分が悪くなると「モラル」を持ち出すのも「愛国」のパターンである。

「‪もし私が、『仕事が欲しいという目的で妻子ある男性と2人で食事にいき、大酒を飲んで意識をなくし、介抱してくれた男性のベッドに半裸で潜り込むような事をする女性』の母親だったなら、叱り飛ばします。『そんな女性に育てた覚えはない。恥ずかしい。情けない。もっと自分を大事にしなさい。』と。‬‬‬‬‬‬‬
それが母親というものです」

という具合に。 

これは親に対する侮辱でもある。個人に加えて、育てた親の責任も加味することで、さらに見下す。

多くの性暴力の被害者は、「女だから」被害にあっているのだ。男性をその気にさせる魅力的な女性は意識しなくともその存在だけで「落ち度」となるのであろうか。勝手にその気になる男性に「落ち度」はないのだろうか。

日本では「女に生まれること」自体が相当な「負荷」を背負っている現実を直視しなければならない。杉田氏に言わせればその「負荷」は「落ち度」となる。なぜそうした翻訳が行なわれるのであろうか。

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