この記事はサーボ基板の設計(KiCADの使い方・回路編)の続きです。未読の方はそちらを先に読んでください。
> フットプリントの作成フットプリントの作成
基板設計に使う部品の寸法や端子のデータをまとめたものをフットプリントと言います。KiCADには最初から豊富なフットプリント・ライブラリが用意されていますが、一部の部品は自前で用意する必要があります。今回はDCDCコンバータKIC-053のフットプリントを自分で作成します。
> 空のライブラリ・フットプリントの作成空のライブラリ・フットプリントの作成
図のボタンを押しフットプリントエディタを立ち上げます。
ファイル>新しいライブラリ>プロジェクトを選択し、ライブラリに適当な名前を付けてOKします。今回は「DCDC」としました。
ファイル>新しいフットプリントを選択し、フットプリントに「KIC-053」と名前を付け、フットプリントタイプをスルーホールにしてOKします。空のフットプリントが作成されます。
ファイル>名前を付けて保存を選択し、先程作成したライブラリ「DCDC」に「KIC-053」を保存します。これで準備完了です。
> パッドの配置パッドの配置
右上の「パッドを追加」ボタンを押し、端子を挿入する穴を配置します。とりあえず適当な場所にクリックして配置しましょう。
KIC-053のデータシートを開き、図面を見ながらパッドを配置していきます。
パッドをダブルクリックするとパッドの大きさや位置、番号が指定できます。
全てのパッドを配置したところです。
> シルクの配置・コートヤードの設定シルクの配置・コートヤードの設定
部品のシルク(基板に印刷する白線)を引いていきます。
F.Silkscreenのレイヤーを選択し、長方形を適当に描きます。
長方形の辺上でダブルクリックし、プロパティを出して大きさを図面通りに合わせます。
次にF.Courtyardのレイヤーを選択し、コートヤード(部品の干渉を判定する線)を引いていきます。
シルクの外側に適当に長方形を描きます。
同じく長方形の辺上でダブルクリックし、プロパティを出して大きさをシルクの長方形+0.5mm程度に合わせます。
ctrl+sで保存してフットプリントの作成は終了です。フットプリントエディタは閉じて大丈夫です。
> フットプリントの関連付けフットプリントの関連付け
必要なフットプリントが揃ったので、回路図中のシンボルとフットプリントを関連付ける作業をしていきます。
(丁度のフットプリントが無ければ、先程の手順に戻ってフットプリントを新しく作ります。)
フットプリントの関連付けウィンドウを以下のように立ち上げます。フットプリントビューワ(図の赤丸左)も同時に立ち上げておくと便利です。
各種のフットプリントライブラリや検索欄を使って目当ての部品のフットプリントを探していきます。
フットプリントは秋月電子のページやデータシートを見ながら一致するものを探します。
今回は以下のように選定しました。
必ず「適用して、回路図の保存&続行 」を押してから、 OKしてウィンドウを閉じます。(これをしないと未保存の割り当てデータが全部消えてしまいます)
これでフットプリントの割り当ては完了です。
> 基板エディタの立ち上げ、部品の配置基板エディタの立ち上げ、部品の配置
基板エディタを立ち上げます。図赤丸をクリックします。
部品を配置します。図赤丸をクリックし、「基板を更新」を押すと部品が配置されます。
基板設計中に回路図を修正した場合は、毎回この手順を行いましょう。
> 外形線の描画外形線の描画
基板の外形を描画します。レイヤーをEdge.cutsにし、直線ツールを選択、グリッドを5mmにして長方形を描きます。
今回は60x80mmにしてみました。
曲線ツールで角を丸めておくとより良いでしょう。
> 固定穴の配置固定穴の配置
右上のICマークをクリック、「mountinghole」で検索して、基板固定用の穴を配置します。
穴を選択して右クリックでプロパティを出し、リファレンスや定数を非表示にして「Not in schematic」にチェックを入れておきます。
あとは穴をコピペで四方に配置すれば完了です。
> 部品の配置部品の配置
部品を移動して基板の上に置いていきます。部品を選択し、Mで移動、Rで回転、Fで裏返しができます。
グリッドは2.54mmから出発し、部品が置きにくければ1.27mm→0.635mm→それ以下と下げていきます。
白線が交差しないよう、また電源の経路を意識して、なるべく見た目が良くなるように配置するのが後の配線を楽にするコツです。こればかりは、場数を積んで感覚をつかむしかないです。
また、パスコンは部品の最寄に置く、水晶発振子はマイコンになるべく近づけるなど他に意識すべきことも多いです。
今回は以下のように配置してみました。
> 配線配線
部品を配置したら配線を繋いでいきます。まず配線幅とビア(表裏を繋ぐ穴)のサイズを定義しておきます。
左上の配線>定義済みのサイズを編集から、配線幅定義のウィンドウを立ち上げます。
適当に配線幅とビア直径を定義しておきます。今回は以下のようにしました。
OKしたらいよいよ配線していきます。
配線幅は1mmあたりだいたい1A流せるので、高電流が流れる場所は配線を太くします。
配線が交差する時はビアを打ち、レイヤーをB.Cuに変えて裏面を通し、ビアを再度打ってレイヤーをF.Cuに戻して交差させます。
配線はクリックするとその場で曲げることができます。ノイズ放射を抑えるためになるべく45度で曲げるようにし、90度曲げは避けます。
パスコン周辺の電源配線は電源ーパスコンー部品という順に電流が流れるようにします。
水晶発振子の配線はなるべく最短で繋ぎます。
電源の配線はなるべく太くし、電流経路を意識して配線します。
GNDについては、後述のGNDベタを使って配線するので配線しないでおきます。
配線は注意することが多くパズルのようで、これも慣れと直感が必要になる作業です。
今回は以下のように配線してみました。
> GNDベタGNDベタ
配線以外の箇所をGND銅箔で塗りつぶします。こうすることでGNDの電位が安定化しノイズ減や安定動作に繋がります。
右の塗りつぶしツールをクリックし、基板外形を覆う四角形を描画します。
編集>全てのゾーンを塗りつぶしでGNDベタが施されます。
> ベタ抜きベタ抜き
GNDベタはそのままでも機能しますが、尖った箇所があるとそれがアンテナになってノイズを拾う/放射する原因となります。
そこで、GNDベタの尖った場所にベタ禁止ゾーンを被せてベタを取り除きます。
ルールエリア追加ツールをクリックし、銅箔をキープアウトのみにチェックを入れてOKします。尖った部分を覆う長方形を描画します。
再度塗りつぶしを実行すると尖ったベタが取り除かれていることが分かります。
> DRCDRC
ここまで終わったらDRC(Design rule check)を行います。
赤丸をクリックし、DRCを実行します。エラーがあれば、指摘された箇所を修正します。
今回は何個かwarningが出ていますが、無視して大丈夫です。
> シルクの調整シルクの調整
各部品にはリファレンス(部品番号)がシルク印刷されますが、そのままだと見栄えが悪かったりするのでこれを調整していきます。
レイヤーの欄で右クリックし、「表面組立レイヤーのみ表示」をクリックします。
このように被ったシルクは、各リファレンスを選択し移動することで整理します。
シルクを整理し、見栄えが良くなりました。
全てのリファレンスを整理したら、同様に裏面組立レイヤーのみ表示を選択、裏面についてもシルクを調整します。
> 基板完成基板完成
これにて基板設計は終了です。お疲れ様でした。
ビュー>3Dビューワを選択すると基板の完成予想図を3Dで見ることができます。
ファイル>エクスポート>stepを選択するとCADファイルに書き出すこともできます。
今回作った基板です。可愛いですね。
続いて基板の発注に移ります。サーボ基板の設計(KiCADの使い方・発注編)を参照してください。