ミネラルのバランスが健康にもっとも重要だ

だからといって、ミネラルをむやみに大量摂取すればいいわけではありません。例えばカリウムは野菜や豆類に多く含まれているミネラルで、人体に欠かせない栄養素です。しかし、ナトリウムとのバランスで過多になっている状態では問題が生じます。

私たちの体は約37兆個の細胞でできており、その内と外は水分で満たされています。細胞内の水分を「細胞内液」、細胞外の水分を「細胞外液」と言いますが、双方の水分量はナトリウムとカリウムのバランスによって調整されているのです。

現代の日本人は、減塩ブームの影響でナトリウム不足、カリウム過多になっている人がほとんどです。そうすると細胞外液が細胞内液に取り込まれて、細胞が浮腫んだ状態になってしまいます(ナトリウム過多・カリウム不足だと逆の現象が起きて細胞が痩せる)。

先に「カリウムには(ナトリウムとは逆に)血管を拡張させる作用がある」と述べました。血管が拡張すると血液の流れは弱まりますので、血圧は下がります。その結果、脱力感や食欲不振、低血圧症、冷え性、失禁などに悩む人が増えています。

血流には体の隅々に栄養と酸素を行き渡らせ、血管の老廃物を押し流すという役目もあります。血流が弱まることで血管内壁に老廃物がこびりつき、血管が狭まり、必要なところに栄養と酸素が行き渡らなくなります。そうなると微細な血管が集まっている部位からダメージを受けます。その結果、眼球(近視)や脳(認知症)の疾患が増えています。

健康になりたいのなら塩を減らすのではなく、ミネラルのバランスがいい塩を摂ることです。ミネラルのバランスが取れていれば、どれだけ摂っても問題はありません。逆に、悪い塩だとナトリウムやミネラルのアンバランスが生じて、あらゆる健康トラブルを招いてしまいます。

間違いのない塩の選び方とは

では、「いい塩」とはどのようなものでしょうか。地球上に存在する塩は海から採れる「海塩」、ヒマラヤ山脈などの山から採れる「岩塩」、ウユニ塩湖などの湖から採れる「湖塩」の3つに分類されます。

ミネラルのバランスがもっとも整っているのは「海塩」です。岩塩や湖塩は何万年もの間に降り注いだ雨によってミネラルが海に流れ出ており、偏りがあります。また、産地によっては地中に含まれる有害な金属類と結合している可能性もあります。

海塩の製法には、海水を塩田に導いて風の力で濃縮し天日乾燥した「天然海塩」、海水にニガリを加え平窯で煮詰めてつくる「再生加工塩」、海水をイオン交換膜でろ過して塩化ナトリウムを取り出した「精製塩」があります。

精製塩はろ過の過程でミネラルのほとんどを取り除いてしまいます。逆に天然海塩はあらゆるミネラルが含まれていてバランスが取れていますが、有害な物質が結合してしまっている可能性があります。

例えば、海の中にはプランクトンからクジラまで多数の生物がいて、毎日相当量が死んでいます。死骸はバクテリアによって分解されますが、たんぱく質の分解産物にはたいてい毒性があります。また、近隣に工場排水や汚水を排出する施設があると環境汚染も心配です。そうした心配が少ないのは西オーストラリア、メキシコ、伊豆大島、沖縄の海域で採れた海塩です。

塩に含まれる有機物は250度以上の熱を加えると気化してなくなってしまいますので、イオン交換膜を通していない海塩を「焼き塩」にします。高温にするほどいいというものでもなく、900度以上で焼くと一部のミネラル分が溶けてセラミック化してしまいます。250度以上600度以下でじっくり焼いたものを選んでください。