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TS転生したからロールプレイを愉しむ 作者:ドスコイ

序章

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第三話(裏)なあ樺地?

「なん……だと……?」


 目と口をめいっぱい見開きバハムートはそう呟いた。


「(これこれ! こう言うリアクションを待ってたんだよ!!)」


 俺としてはテンション爆上げである。

 先に本気出した方が負ける、お約束だよね。

 べジータがドヤ顔かましたり、花弁が散っても実は大紅蓮氷輪丸が解除されないとか言い出したら負けフラグなんだよ。


「見え透いたハッタリだな。それで僕を動揺させようって?」

「(んなことする必要もねーっつの)」


 千年攻撃続けても処女膜(二千年物)一つブチ破れねえよ。

 しかし、我がことながらアレだけど二千年物の処女って酷いな。

 腐ってるとか黴生えてるとか通り越してもう化石になってんじゃね?


「フン……時間停止だけじゃなく回復と防御にも長けていた訳か――だがそれだけだ」


 必死で心を立て直そうとしているのが見え見えである。

 バハたん可愛いな、銀髪ショタってのもポイントたけーし俺コイツ好きになりそうだわ。


「君の攻撃力では僕にダメージを与えられないし、速さでも僕が勝っている」


 じゃあ何で俺はお前の背後に立ってたんだっつー話。

 無理があるにもほどがあるだろ、バハたんよぉ。


「そしてスタミナと言う面でも! 良いだろう、持久戦だ。

所詮は人間、何時までも超回復と防御力の底上げを続けられるか……ぐあああああああああああああああああああ!!!」

「(彼女は瑠璃ではない)」


 言葉を遮るように無言で腹パンを叩き込む。

 尚、この際、背後から重力をかけているので吹っ飛んでから戻って来ると言う尺の無駄はありません。


「げほ! ごほっ、うぉええええ……!!」


 膝から崩れ落ち吐瀉物を撒き散らすバハたん。

 見た目的にかなりニッチな性癖にセールスを仕掛けているような気がしないでもない。


「ハッタリか、強いて言うなら――――今日初めて剣を使ったことぐらいか?」

「な……!?」


 ドレスに剣って組み合わせからしてもうポイント高いじゃん?

 絵になるかなーって思ったんですよ、はい。

 それにほら、シンちゃんが剣使ってたからね。言ってみたい台詞があったんだ。


”小娘、これが剣の使い方と言うものだ”


 的なアレをね、言ってね、決めたかったの。

 ただまあ、よくよく考えればあの子の動体視力じゃ捉え切れないよね。

 どんな美麗な剣技を披露しても、見せたい相手に見てもらえないんじゃ意味は無い。


「(まあ、シンちゃんを強化するって手もあったけど)」


 わざわざそんなことするのも露骨かなって。

 そんなにドヤりたいんですか? みたいなサムシングがね。

 『何……だと……?』もやりたかったしな。


「見事な剣の腕だと言われた時は……クク、申し訳なさで胸が痛かったぞ?」

「っっ!」


 嘲りましましで、超上からの物言いを意識する。

 するとどうだ? 見事にバハたんの顔が屈辱に歪んでいくではないか。


「何せ本職は魔女だからな。どちらかと言えば本来の得物は杖だ」


 まあ杖も使ったことないんだが。

 だって杖用意したって何も変わらないし。

 精々『うわぁ! すっげー魔女っぽい!!』って印象が変わるぐらいだろう。

 魔法の発動速度や精度、威力なんかが上昇するとかそう言うのは皆無である。

 師匠だって杖なんか使ってなかったしな――あ、いや俺をシバくために杖や鞭は使ってたか。


「そして……ああ、何だったか。私の時間停止についても何やら言っていたな」


 パチン! と指を鳴らす――勿論意味は無い。

 指パッチンしなくても時間を止められる、こんなもんは見栄え優先の無意味な動作だ。


「な……か、身体が……!?」

「意識と、発声に必要な部分のみを残し時の鎖で縛り付けた」


 バハたん何て言ってたっけ?

 そうそう、アレだ――――


「で、格の違いが何だって?」

「~~~~!!」


 にしても、正直見通しが甘かった。

 時間停止を行動を許可した者以外で認識出来る奴が居るとはな。

 しかしまあ、竜ならば納得だ。模造品とは言え、それなりに鍛えればコレぐらいにはなるだろう。

 認識させてしまったのは俺の不注意だ。

 お陰で面倒なのを呼び寄せてしまった。


「(いやまあ、結果だけ見ればショタドラゴンとか中々に美味しいキャラと出会えたんだけどさ)」


 乙女ゲー的にはありじゃない? こう言うのが人間にデレたら破壊力大きいと思うんすよ。

 未来ちゃんポジションと絡ませるキャラとしてバハたんは中々に優秀だ。


「私より長く生きている割に、貴様は随分とものを知らないな。

高みを目指すのは結構だが、その阿呆さでは片手落ちなんて話じゃないだろう」


 シンちゃんのように教育らしい教育を受けられなかったのならば分かる。

 だが、普通の人間でさえこうして力を振るう俺を見れば嫌が応にも理解するだろう。

 始原の魔女本人、もしくはその後継者であると。

 だと言うのにバハたんを見る限りでは始原の魔女なんて単語すら知らないように見える。


「だ、黙れェ!!」


 声が裏返っている。

 圧倒的な実力差に怯えているのだ。ただ、プライドゆえそれを認められない。

 だからこうして虚勢を張っている。


「無知な貴様に一つ教えてやろう。

ある領域にまで達すると人間、人外問わず身体の一部分が変色するのだ」


 瞳か、毛髪か、爪、人間ならば大体そのあたりだろう。

 竜の場合は――バハたんを見るに全身と言う可能性が高い。


「その色を、証を指して我らはこう呼んでいる」


 瞳を閉じて溜めを作り言葉と共に見開く。


「――――超越の黄金(トゥルー・ゴールド)


 完全を象徴する黄金をその身に宿すことで初めて、理に囚われぬ超越者へと至るのだ。

 俺の師匠も髪の一房が黄金だったし、他の始原の魔女もそう。

 直接の面識は無いが師匠と同じで髪の一房だったり片目だったりどこかしら変色していたと言う。


「……!」


 息を呑むバハたん。

 爛々と輝きを放つ俺の瞳に気圧されたのだろう。

 ちなみに前に出会ったザインくん、彼は金髪だがアレは別に超越の黄金と関係はない。

 ああ言う生まれつきの金髪や金目(髪はともかく目は居るのかな?)は単なる色素欠乏症だ。

 見比べてみれば違いは一目瞭然である。


「師の言によれば黄金の竜を見たこともあるそうだが……」


 多分、今の世には存在していないのだろう。

 もしそうならばバハたんがイキれるとは思えない。

 別に黄金の竜が何かをするとかじゃなく、バハたん本人のプライドがそれを許さないだろう。

 挑んで返り討ちにされてさよならバイバイするんじゃないかな。


「ひるがえって、貴様はどうかな?」

「ぼ、僕は……み、認めよう。今は君より下かもしれない。だが僕もいずれは黄金に――――」

「私は二千年で辿り着いたぞ」


 正確には千九百年ぐらいだが、百年なんて誤差誤差。


「万年生きてもそれでは、底も知れると言うもの。

もしも可能性があると言うのであればそれは今この瞬間だろう」


 共鳴? 共振?

 超越の黄金へ至る器であるならば先達たる俺に触発されて前借のような形で黄金に至る可能性がある。

 とは言え一時的なもので、直ぐに戻ってしまうだろう。

 だが一度、無理矢理にとは言え道をこじ開けられたのだからそこからは時間をかけて己を練磨すれば良い。

 そうすればいずれは本当に黄金を宿すことも出来るだろう。


「ふむ、試してみるか?」


 バハたんの首根っこを掴み空へ放り投げる。


「があぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?!?」


 突き出した手の平から絶え間なく放たれ続ける魔弾がバハたんを貫き続ける。

 俺からすりゃ雪合戦の雪玉投げてるような”お遊び”だがあの子からすれば別だろう。

 イジメみたいで趣味が悪いとは思うが、ここで完全に心を折っておかないとな。

 寛いでる時にまーた襲撃かけて来られたらたまんねえよ。

 一々あしらうのも面倒臭い。かと言って殺すのも勿体ないしな。


「そら! どうしたどうした!? 黄金に辿り着くのではなかったのか!?

機会はくれてやったぞ、貴様がそのプライドに見合うだけの力を備えていると言うのであればやってみせろよ!!」


 嘲りをこれでもかと盛り込んだ哄笑&罵倒セットに攻撃も添えて。


 俺個人の心情はともかく、エレイシアロール的にも間違ってないしな。

 力試しなんて個人的な理由でいきなり喧嘩売って来るような相手に容赦はしない。

 基本的には失望と諦観にドップリだからな。その精神に光るものでもなければ慈悲などかけやしない。


「(あぁでも、シンちゃんに怖がられるのは嫌だなぁ……)」


 視線は向けずに黙り込んでいるシンちゃんに意識を向けてみる。

 すると、


「(ん、んんん……?)」


 何とも言い難い感情が雪崩の如く流れ込んで来た。

 文字に起こすならばこんな感じか。


”畜生、畜生畜生畜生! あたしは馬鹿だ! ルークス様があの蜥蜴と同格だって!?

何て勘違いをしてたんだよあたしは……クッソ! あたしはあたしが恥ずかしい!

あの御方を何にも損なわれぬ絶対不変の存在だって……そう思っておきながら何だこのザマは!?

嗚呼! ルークス様カッケー! つえー! 綺麗! おっぱい大きい! だってのにあたしはあたしは―――”


 こんな感じで自責と俺への賞賛がループし続けている。

 ループが途切れたら『おいは恥ずかしか! 生きておられんごっ!!』になりそうだ。


「(……バハムートよりよっぽど強敵じゃねえか)」


 上手くフォローしてあげなければガチでヤバイ。

 背筋に冷たいものを感じつつ、一旦シンちゃんからは意識を外す。


「あばばばばばばばばばばば!!」

「……やれやれ。このまま小石を放り投げていても意味は無さそうだ。どれ、少し強いのをくれてやろう」


 バハたんを空中で磔にし身動きが取れないように固定。

 無造作に垂れ流している魔力を指で絡め取り綿菓子のように形を整える。

 傍目から見れば大き目の光弾に見えるだろうが綿菓子と形容したように中身はすかすか。


「黄金の階に手をかければ生き残ることが出来よう」

「あ、あぁ……!」


 威力調整はバッチリだ。

 師匠から受け継いだ神懸かり的コントロールを舐めちゃいけない。

 過不足なく超越の黄金の一端を掴み取れば耐えられるだけの威力にしてある。

 ぶっちゃけ俺も似たような感じで覚醒させられ……あぁ、心の古傷が開いてしまった。


「――――期待しているぞ」

「ぼ、僕の負けだ! 許してくれ! 許してくださいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」


 光弾を放つ寸前で、バハたんはそう叫んだ。

 涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔面――これまた特殊性癖を持つ方々垂涎のワンショットである。


「……」


 心底白けた顔をして光弾を握り潰す。

 そしてそのままバハたんを俺の眼前に叩き付けて平伏させる。


「バハムート、貴様程度には過ぎた名だな」

「は、はひ……?」

「そうだな、ポチだ。貴様の真名は今よりポチだ」

「ら、らにを――――」


 恐怖に打ち震えながら俺を見上げるバハたん。

 正直、かなり可哀想だが……まあここまでやったのだから念入りにな。


「犬になれと言ったのだ」

「な!?」


 恐怖の中に僅かな怒りが灯る。

 やはり、完全には圧し折れていなかったらしい。

 まだまだプライドが残っている、俺に歯向かおうとするだけのプライドが。


「不服か?」

「うっ……」


 後頭部を踏み付けてみたのだが絵面がやばい。

 男日照りの非モテババアがショタ相手にSMプレイかましてるようにしか見えねえぞ。

 客観的に俺の要素と現状を組み合わせたらそれ以外の何ものにも見えない……まずいっすよこりゃあ。

 流石の俺もピーポくんを前にすれば逃げの一手を打つしかないもの。


「ならば、その頭蓋をこのまま踏み砕いて――――」

「ぼ、ぼきゅは犬です! りゅーくす様の犬になりましゅ!! だからおねがい、ゆるしてぇ!!」


 女の子みたいな声しやがってこの野郎。

 かなり複雑な胸中を隠したまま、俺は最後の仕上げに取りかかる。

 踏み付けていた足をどかし、つま先でバハたんの顔をかち上げる。

 そして足の裏を突き出し、


「舐めろ」


 どう足掻いても変態ショタコンババアです本当にありがとうございました。


「は、はひぃ!!」


 ブーツの裏をぺろぺろと舐めはじめたバハたん。

 今度はどこにも怒りなど混じってはいなかった。純度100%の恐怖だけ。


「(精神的にかなりキたけど……これで仕事は終わりだな)」


 もう、いきなり馬鹿をやらかすようなことはないだろう。


「ポチ、その姿のままで居るか。犬の姿になるか、どちらが良い?」

「……こ、この姿のままで居させて頂ける、のですか?」


 ぷるぷると小動物のように震える彼を見て王都上空に現れたあの竜を重ねる者は居ないだろう。


「邪魔にならなければどちらでもよい」

「な、ならこのままでお願い致します!!」

「フン」


 俺の許可無く力が漏れ出さぬよう封印の首輪を首に括り付ける。

 即席のアーティファクトだが、スカー・ハートよりは作るのが簡単だった。

 スカー・ハートは感情を原動力にしたり何だりで色々多機能だからな。


「あ、るーくすさま……」


 呆然とシンちゃんが呟く。


「どうだ、この程度であれば殺せそうだろう?」


 皮肉げな笑みを浮かべてそんな言葉を贈る。

 王都で見物していた際に発した『アレを殺すことが出来れば強いと言えるのではないか?』と言う台詞と絡めた発言である。

 まあようは、シンちゃんならコイツを倒せるぐらい強くなれるよ! と言う迂遠なツンデレだ。

 分かり難いかもしれないが、


「あ……は、はい! 頑張ります!!」


 花が咲いたような笑顔とはこのことか。

 シンちゃんは学は無いけれど察しは良いからツンデレもちゃんと拾ってくれるんだよな。

 ちなみに先のツンデレは別段リップサービスと言う訳ではない。

 フォローも兼ねてはいるがシンちゃんならいずれはと言うのも本音だ。


「(この子の憤怒を鑑みるに……ねえ?)」


 今はスカー・ハートと言う補助輪ありきでしか憤怒の力を顕現出来ない。

 たが長じれば、スカー・ハートは本当にただの玩具に成り下がるだろう。

 火を点けたのは俺だからなるたけ面倒は見るつもりだが、


「(未来ちゃんの登板が待ち望まれる……)」


 いや切実に、頼むぜ運命。


「(しかしあれだな、これでお供がもう一人――いやさ一匹増えた訳だが、どうせなら寡黙なタイプが良かった)」


 具体的には樺地だな。

 なあ樺地? ウス、の黄金パターンに憧れを抱かざるを得ない。


「(なあ樺地?)」


 ウス、心の中の樺地がそう答えてくれたような気がした。

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