【社説】露戦術核演習 威嚇に屈せずウクライナ守れ

ロシアの南部軍管区における戦術核兵器の軍事演習は、プーチン大統領が、フランスのマクロン大統領によるウクライナへの地上軍派遣の可能性に触れた発言などに対して「西側諸国による挑発的発言」と反発して命じたものだ。核威嚇に屈して国際社会のウクライナ支援が滞ればロシア軍を止められない。ロシアの侵略こそ許されない暴挙であり、ウクライナを守り抜くべきである。

マクロン氏がEUに一石

クリミア半島を併合した2014年以来、プーチン氏は核兵器の使用に言及しながらウクライナを侵略し続けている。野蛮かつ卑劣だが、核恫喝(どうかつ)による国際社会への牽制(けんせい)は、諸国の軍事介入を招いていない点でロシア側の意図した効果を認めざるを得ない。

欧米はじめ国際社会は、22年2月に本格的な軍事侵攻を始めたロシアに「最大限の怒り」を表明しながらも、ウクライナから求めのあった軍の派兵を拒否した。バイデン米大統領は、核戦争になる恐れがあるとして言下に米軍派兵を否定した。その代わりとして極めて強力な対露経済制裁および武器供与を含むウクライナ支援を行い、プーチン政権の予想を覆して首都キーウ陥落を回避し、戦いは長期化している。

だが、米国や欧州連合(EU)のウクライナ支援も、ウクライナ軍の反転攻勢が失敗に終わった昨年夏以降になると継続が厳しくなった。ウクライナ軍は弾薬が不足し、徐々にロシア軍が支配地域を広げている。

プーチン氏は大統領選挙で勝利して今月、5期目の任期に入っており、一方的に併合宣言したウクライナ東・南部4州の全域を完全に手中に収めようとしている。兵力が劣勢のウクライナ軍は抵抗力を失いつつあり、さらなるロシア軍の西進も懸念される。

マクロン氏の一連の発言は、この状況に強い危機感を持ち、ウクライナへの地上軍派遣や、戦略核を含む欧州の安全保障枠組みの必要性について提起したものだ。マクロン氏は、ウクライナを攻撃しているロシアのミサイルの発射拠点へのミサイル攻撃を許容すべきとも主張している。ロシアの脅威への対処について温度差のあるEU内に一石を投じるものだ。

一方、ロシアは戦術核兵器演習でEU諸国に揺さぶりを掛けて世論を分断し、ウクライナに対して不作為になるように仕向けている。だが、このままロシア軍がウクライナで不法占領した領土を広げるならば、EUはさらなる脅威に直面する。

使用させない核抑止力を

冷戦時代には、むしろ北大西洋条約機構(NATO)が、通常兵力で勝るソ連軍を戦術核兵器で抑止しようとした。核を抑止できるのは核だ。ロシアの戦術核兵器演習にNATOは対抗する必要に迫られよう。

ロシアに戦術核を決して使用させない抑止力をウクライナおよびNATO、国際社会は結束して構築しなければならない。同時に、ウクライナにロシア軍が入ってしまった後では撃退することが非常に難しい現実がある。わが国も教訓として日米の拡大抑止を強化すべきだ。

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