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2021.10.20 06:00

台湾の半導体大手、TSMCが日本に工場を建設する理由

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台湾の半導体製造大手TSMCは、日本に工場を建設する計画だ。半導体チップの需要が急増する中、同社は日本の自動車や電子機器分野のトップメーカーの近くに製造拠点を置くことになる。

TSMCは10月14日、来年から日本の工場の建設を開始し、2024年後半に大量生産を開始すると発表した。同社のCEOのC・C・ウェイは、「顧客と日本政府の双方から、このプロジェクトを支援するという強いコミットメントを得ている」と述べた。

北京の市場調査会社マーブリッジ・コンサルティングのマーク・ナトキンは、日本政府はTSMCに「何らかのインセンティブを約束したのではないかと思う」と述べている。

「日本も、その他の諸国と同様に、サプライチェーンが混乱した場合に備えて、半導体メーカーの国内進出を望んでいる」と、調査会社トレンドフォースのジョアン・チャオは指摘する。TSMCの世界的な規模を考えると、各国の政府が彼らを積極的に誘致するのは当然のことで、TSMCの側もそれらの提案に前向きだと、チャオは述べている。

TSMCは昨年、アップルやエヌビディアなどの顧客に近いアリゾナ州にチップ工場を建設する計画を発表したが、日本工場の建設はそれに続く動きと言える。報道によると、熊本県に建設される工場の運営にはソニーも参加し、自動車用の半導体チップなどを生産するという。また、デンソーもこのプロジェクトへの参加を検討中とされている。

ソニーはスマートフォンなどの開発を行っており、日本には東芝などの電子機器メーカーもある。トレンドフォースのチャオは、「かつて世界最大の半導体の製造拠点だった日本は、今でもこの分野で重要な位置を占めている」と指摘する。チャオは、TSMCが川上のベンダーや化学原料のメーカーと密接な関係を築けると述べている。

TSMCは3月、世界的なチップ需要の急増に伴い、新技術や設備の開発に3年間で1000億ドルを投資すると述べていた。同社は、日本の新工場のコストを明らかにしていないが、この1000億ドルに上乗せすることになると述べている。

5Gスマートフォンやコンピュータ、自動車、データサーバーなどの受注の伸びが半導体需要を押し上げている。インテルは3月に、200億ドルを投じてアリゾナ州に2つの工場を建設すると発表した。サムスンも米国で170億ドルの工場建設を計画中だ。

編集=上田裕資

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2021.10.05 17:00

半導体グローバルファウンドリーズが上場へ、評価額3兆円規模

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TSMCやサムスンに次ぐ世界3位の半導体メーカーである「グローバルファウンドリーズ(GlobalFoundries)」は10月4日、米国証券取引委員会(SEC)に上場目論見書を提出した。アブダビの政府系ファンドのムバダラ・インベストメントが保有する同社は、半導体分野への投資が増加し、この業界の収益が今後10年間で2倍になると予想されていることを追い風に、IPOに踏み切ろうとしている。

グローバルファウンドリーズは、ナスダックに上場予定で、プレースホルダーに10億ドルを設定している。ロイターは8月に、同社が最大250億ドル(約2.8兆円)の評価額を視野に入れていると報じていた。

グローバルファウンドリーズは、クアルコム、ブロードコム、サムスン、アドバンスト・マイクロ・デバイセズなどの顧客が設計した、自動車のインフォテインメントシステムやブレーキなどに使用されるチップを製造している。

同社の今年上半期の総収入は30億4000万ドルで、前年同期比で約13%増加し、純損失は前年同期の5億3400万ドルから3億100万ドルに縮小した。同社は、ニューヨーク州に2つの工場とバーモント州に1つの工場を持ち、ドイツとシンガポールにもそれぞれ工場を持っている。

グローバルファウンドリーズは、2009年にムバダラがアドバンスト・マイクロ・デバイセズの製造部門を買収して設立された企業で、その後、シンガポールのチャータード・セミコンダクター・マニュファクチャリングと合併した。

グローバルファウンドリーズの本社は、ニューヨーク州マルタに置かれているが、ムバダラはケイマン諸島で同社を法人化したため、課税を免除されている。同社は、ナスダックの規則を遵守する必要がなく、取締役会のほとんどを独立取締役が占めている。

世界的チップ不足は継続の見通し


今回のIPO申請に先立ち、インテルがグローバルファウンドリーズを買収するとの見通しを複数のメディアが報じたが、CEOのトム・コーフィールドはこれを否定した。ロイターによると、グローバルファウンドリーズは、この買収がインテルのライバルで同社の最大の顧客であるAMDなどを怒らせることを危惧したという。

一方、パンデミックの影響で電子機器に対する要求が高まり、チップの需要が急増したことで、世界的なチップ不足が発生した。この問題は、自動車メーカーなどの複数の産業に影響を与え、投資家たちに、TSMCやサムスンが独占する市場にさらなる資金を注ぐよう促している。

世界的な半導体不足は来年も続くと予想され、米国をはじめとする各国は少数の企業への依存度を下げようとしていることから、さらなる資金流入が期待されている。グローバルファウンドリーズは目論見書の中で、業界の収益が今後10年間で「倍増」すると述べている。

ロイターによると、インテル、サムスン、TSMCが今年、半導体に注入する投資額の合計は750億ドルに達する見通しという。2019年の3社の投資額は約500億ドルだった。

編集=上田裕資

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2020.12.09 06:30

コロナ後も「二度と戻ってこない」職業とは?

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新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)により多くの職業が一時停止を強いられたが、中にはコロナ収束後も二度と戻ってこないかもしれないものもある。

米キャリア情報サイトのグラスドアが発表した報告書「Workplace Trends 2021(職場のトレンド 2021)」によると、緊急性がなく、コロナ収束後まで延期できる選択的医療分野での求人広告は激減。最も影響を受けた職業は聴覚専門医(オーディオロジスト)で、グラスドア上の求人は70%減った。

米国聴覚学会(AAA)のアンジェラ・シュープ会長は、聴覚専門医が長期の一時帰休を言い渡されたり、開業していたクリニックを閉じて早期引退したりしたとの話を聞いているという。また、聴覚学の分野で就職活動をしている大学新卒者の多くは、大きな施設では採用を行なっていないと告げられているとのことだ。

眼鏡技師や理学療法士の求人も、それぞれ61%と40%減少。また、総務や低スキルの事務職も不足している。コロナ後のリスクが2番目に高い仕事は、求人が69%減ったイベントコーディネーターだ。また大半のオフィスが閉鎖されていることから、秘書の求人は55%減、人事一般職は37%減、受付係は35%減となった。

【関連】コロナ後の米国で人手不足、失業者が急いで動かない理由とは

当然ながら、個人向けサービス職も激減した。最も厳しい状況にあるのはビューティーコンサルタントで、求人は53%減少。ホテルなどのバレーサービス係は51%減っていた。

グラスドアの首席エコノミストであるアンドルー・チェンバレンは「(こうした仕事は)新型コロナウイルス感染症に先行きが左右されている」と指摘。「人々はウイルスが収束するまで、以前のようにネイルサロンに行ったり、任意のレーシック手術を受けたり、対面で行われるイベントに行ったりはしない」と述べた。

チェンバレンいわく、任意の医療やイベント、個人向けサービスの仕事がコロナ収束後に完全に消えるわけではないが、回復に時間がかかることは必至だ。ただ、一部の仕事は永遠になくなる可能性があるという。

例えば、作業の多くが自動化されてきた管理アシスタント職は将来消えるかもしれない。コロナ収束後もオンラインショッピングの需要が残ることで、ブランドアンバサダーも過去のものとなる可能性がある。
次ページ > 採用が増える職業は?

編集=遠藤宗生

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2019.10.08 16:30

史上最も危険な「iPhone接続ケーブル」が発売、悪用の懸念

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iPhoneに遠隔からハッキングできるLightningケーブルが発売された。「OMGケーブル」という名称のこの製品は、外見も機能もアップルの純正ケーブルと変わらない。

OMGケーブルは、今年8月にハッカーの祭典「Def Con」で発表され、現在は量産化が進められている。このケーブルは近隣にいるハッカーが、ケーブル内部に仕込まれたワイヤレス機能を使って端末にアクセスすることを可能にする。

この様な製品は従来、ダークウェブなどで密かに取り扱われていたが、OMGは公に販売されており、「Hak5」での価格は100ドル程度だ。サイトの製品説明には、「非常に悪意のあるUSBケーブル。ケーブルを接続した途端、内部のワイヤレスネットワーク・インターフェースを通じてデバイスをコントロール可能になる」と記載されている。

Def Conでは、OMGケーブルを開発したMike Grover(通称MG)が最大300フィート(約90メートル)離れた場所からデバイスにアクセスすることができると説明した。また、周辺のワイヤレスネットワークのクライアントとして設定すれば、アクセスできる距離は無制限になるという。

Hak5によると、ケーブルは証拠隠滅のためにファームウェアを消去することができ、これを実行すると全く無害のケーブルになる。

セキュリティショーでは、これまでにもスマートデバイスにアクセスできる危険な充電ケーブルが紹介されてきたが、原理はOMGケーブルと同じだ。OMGケーブルは、善良なユーザー向けの製品として紹介されているが、ハッカーが恐ろしい用途で使うことも可能だ。

企業のノベルティとして配布したり、ホテルや空港のラウンジ、タクシーなどで提供されたりなど、利用シーンは無限に想定される。

アップルの安全神話が崩壊

「私は警察に捕まるかもしれない」とMGはツイッターでジョークを投稿し、次のように述べた。「アップルはハッキング対策を行っているが、接続するケーブルは簡単にハッキングすることができる」

MGは、もともとOMGケーブルを「個人的なハードウェアの学習プロジェクト」として開発したという。しかし、このケーブルをハッキング目的で使うことが可能であると広く知られたことで、セキュリティ業界では懸念が広がっている。

この数週間でiOSのハッキングに関する問題がいくつも露呈し、アップルの安全神話が崩れつつある。OMGケーブルの発売は、さらに懸念を強めるニュースだ。この製品がハッカーに利用される危険性についてMGに尋ねると、彼は「心配する前に、そのリスクについて気づいてもらいたかった」と述べた。

「人々に認知してもらうことがこの製品を開発した狙いだ。認知されれば、防御策も増える。悪意のあるケーブルは10年以上前から存在するが、人々はリスクに十分気づいていなかった」と彼は話した。

編集=上田裕資

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