反AI激増、デマを流す
画像生成AIの基本的画力の向上、LoRAによるデザイン・画風の再現性向上、SNSへの進出、そしてAIと関係なく元々イラストレータに対して悪意を持っていた人間による「他人の絵をi2iで加工して公開する」「それを指摘されると指摘した人物をターゲットにして報復する」といったテロ行為など、複数の要因により、2023/2~3にかけて反AIが激増。
それに伴って、反AIによるデマの流布、恣意的な法解釈、ダブルスタンダード、罵倒、誹謗中傷、私刑、リンチも大幅に増加した。
ただし、反AIと言ってもAI全てに反対していたわけではなく、正確には「反AIイラスト」である。彼らは画像生成AIに強く反発する一方で、同じく無断学習で作成された翻訳AIは「ただの便利な道具」として平然と使用するなど、一貫性はなかった。つまり当初より「イラスト以外はどうでもいい」という姿勢であり、最初からダブルスタンダードだった。
現在主流のデマは下記の4つ。
①「生成AIには無断学習で作られたデータが混じっているので存在自体が違法」
2019年に施行された著作権法第30条の4の規定により、機械学習は無断が原則、かつ無断でも合法なので、法的にはそもそも「無断学習」という概念自体が存在しない。そのようにして作られた学習データが「存在自体が違法」という事もない。もちろん盗用でもないし、剽窃でもない。
また、しばしば「グレーゾーン」と言われるが、グレーゾーンでもない。機械学習は完全に合法である。グレーゾーン(違法だが権利者が訴えていない状態)なのは、同人誌・同人グッズ等の二次創作だけである。
②「画像生成AIの学習データは収集した画像を圧縮したものであり、プロンプトに応じてそれらを復元・合成する一種の検索エンジンである」
そのような稚拙な設計で生成AIを作る事は難しい。
例えばSDXLの学習モデルは6.6GB前後だが、反AIがよく引用する「58億枚」という数字(※LAION-5B Datasetの枚数)で割ると、画像1枚あたり僅か2バイト以下になる。画像そのものを保存していない事は明白である。
③「無断学習が合法なのは法整備が追いついていないからで、今後違法になる」
現実は逆で、「都合のいい法解釈が乱立して開発者が足を引っ張られ、手が止まることが目に見えていたため、先手を打って2019年に30条の4を作り、予め機械学習を合法化しておいた」のである。
これは、インターネット黎明期にレコード会社や出版社の顔色を伺って規制だらけにした結果、検索・配信分野でGoogleやAppleに完全敗北し、数十年単位で成長の停滞を招いたという過去の反省を踏まえている。
④「AIで生成した画像には著作権がないので転載・二次利用し放題」
米国著作権局、Creativity Machineの著作権登録を拒否
2023/3/17、アメリカ合衆国著作権局が、「AI画像生成エンジンにプロンプトを与えて出力された画像は米国では著作権で保護されない」と発表。厳密に言うと「Stephen Thalerが作ったAI『Creativity Machine』を絵画『A Recent Entrance to Paradise』の著作者として認めない」と発表。
反AIは本件を根拠にして「AIで生成したイラストには著作権が発生しない」というデマを流した。このデマには以下の2つの誤りがある。
① 米国は「作品を著作権局に登録して初めて著作権が発生する」というシステムになっているため、本件のように、著作権局の一存で、ある作品に著作権を与えたり、与えなかったりする事ができる。日本では作品を作った時点で自動的に著作権が発生するので、これができない。
② 前述の通り、Stephen ThalerのCreativity Machine問題は、「AIで作った画像を著作権局に登録しようとして拒否された」という話ではない。「AI(機械)そのものを著作権者として登録しようとして拒否された」という話である。これは非常に特殊な事例であり、一般化できない。