同性婚について一般の方の声を知るべく、同性どうしの結婚について悩みを持つ当事者や近親者の方を探していたところ、紹介を通じてとある地方在住の女性から話を聞くことができた。
「うちの孫(女/13歳)はこの春中学2年生になりました。去年、1年生の1学期には元気に登校していたらしいのですが、夏休みが終わってからは一切学校に行けなくなってしまったようです」
こう話し始めて涙を拭ったのは浅山みのりさん(仮名・68歳)。最愛の孫に最後に会ったのは7年近く前だという。

孫が小学校に入学した際、「お情け」で会わせてもらったのだとか。それ以外は、誕生日やクリスマスなどに贈り物を送るくらいしか交流はない。
「最後に会った時の孫は、まだ無邪気でした。息子(40歳)ともその相手の男とも仲の良い感じで。私は3人が家族のような顔をしている様子を見るだけでも虫酸が走りました。孫にだけ会いたかったです」
後に詳述しているが、みのりさんはこの孫と血の繋がりがない。しかし、それを知らされてからも孫への愛情は変わらないという。
「うちの息子は、孫が2歳にもならない頃にカミングアウトというやつをしました。嫁とは多少揉めましたが、争点となったのはその後の生活資金のことばかり。
お金の話が片付くと、嫁は孫への執着を見せることもなく息子と別れて出ていきました」
親が土地代を援助して若夫婦が建てた家は、みのりさん夫婦が暮らす家の隣町にあった。
「息子はローンが残った状態でその家を売却し、市内の分譲マンションに引っ越しました。すでに息子には相手の男性がいて、マンションはその人が随分前に買ったものだと」
その男性とともに孫を育てながら家の残債を返していくと真顔で報告した息子を、みのりさんは許すことができなかった。
「男性がいいなら、なぜあの嫁と結婚したの、と涙ながらに聞きました。すると、お母さんが強く望んだからでしょ、と私を責め始めたんです。
世間体ばかり気にして、早く結婚して孫の顔を見せろと迫るから好きでもない女と結婚したと。私、そんなに追い詰めた自覚はありません。結婚する気はないの?ってたまに聞いたくらいのことで」
みのりさんは、女性を好きになれない息子がなぜ子供をもうけることができたのか、とても不思議だった。
「結論から言うと、孫はうちの息子の実の子ではありませんでした。
本当の父親が誰なのかは知りませんが、妊娠中の嫁と知り合って、子作りしなくても子供が持てるとでも思ったのでしょうか。未婚で出産しようとしていた嫁と形式的な結婚をしたわけです。
嫁には嫁で事情があったとのこと。他人の子を一緒に育てると申し出た奇特な息子は都合が良かったんでしょう。
だから愛情なんてありませんよね。性行為をする必要もないですし。利害が一致した、と言っていました。出生からすでに不憫な孫なんです」
みのりさんは時折溢れてくる涙を抑えながら話をした。
後編ではさらに浅山さんと息子の確執が明らかになる。
取材/文 中小林亜紀