「学級委員がふざけてくれるから、僕らもバカやれる」佐久間宣行×NHK
こんにちは!NHK広報局です。
NHKでは、メディアなど各界で活躍する方にNHKについてのメッセージをお聞きし、1分のミニ番組として随時放送しています。
1分ミニ番組といっても、もちろんたっっっぷりお話を伺っています。
その内容は、放送だけではもったいない!ということで、編集で泣く泣くカットした部分も含めて、全文公開させていただくことにしました。
(ご快諾いただいた話し手のみなさま、ありがとうございます!)
今回は、2021年3月にテレビ東京を退社され、幅広くメディアで活躍されている、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんに、NHKについてお聞きした内容です。
次週まで録画を何回も見た「ふしぎの海のナディア」
Q:NHKの番組で特に記憶に残っている番組はありますか?
たくさんあるんですけど…いちばんは、「ふしぎの海のナディア」(1990~1991年放送)というアニメです。
僕は当時もう高校生だったんですけど、毎週バイトから早めに帰ってきて見るのを楽しみにしていたんですよね。で、次回放送の翌週までは録画を何回も見るみたいに、本当に夢中になったアニメでしたね。
ナディアってSFと戦争モノみたいなのが組み合わさっているんですけど、愛すべきキャラクターとして描かれた乗組員が亡くなる初期のシーンがあって、それがもう頭から離れなくて。
一見ポップな作風のアニメの中で、こんなに深い考えまで及ぼしてくれるって『この監督すごいな』という風に思って。そこで初めて、アニメの監督っていうのをめちゃくちゃ意識したと思います。
それが庵野秀明さんだったんですね。
庵野さんって、当時OVA(オリジナルビデオアニメーション:放送以外のアニメーション作品)で活躍されているっていうことは知ってたんですけど、NHKで、しかもゴールデンタイムのアニメでこんな攻めてくる監督ってすごいなと思って。この監督が次にやる作品も絶対に観ようと思って。
大学に進学してから、その監督がロボットアニメを始めると聞いて、それを見始めたらそれがエヴァンゲリオンだったということですね。
そういう意味で言うとエヴァンゲリオンをリアルタイムで見れたんで、ナディアにはめちゃくちゃ感謝してますね。
“マイノリティーを描くのにもちゃんと予算がつく“
Q:佐久間さんにとって「NHKらしさ」ってどんなものだと思いますか?
僕はもともと民放のディレクターだったんで、NHKに対してはなんていうか…「本当におもしろい番組をたくさん作るけど、それは予算があるからだ」と、テレビ東京からするとそういう気持ちがあるんですよ。愛憎半ばって感じなんですけど。
僕の考えるNHKらしさというのは、公共放送だからできる多様性の確保と、その多様性によってマイノリティーを描くものにもちゃんとした予算を割けるということ。そこがNHKのいちばん強みだし素晴らしいところだと思うんですよね。
民放だとマイノリティーを描く番組とか、それをテーマにした番組に、あんまり予算がつかないこともあるんですけど、NHKはどのジャンルにもきちんと予算がつくから多様性を描ける。そこが素晴らしいしうらやましいところだなと思います。
Q.民放では作りにくいですか?
そうですね。視聴率って部分も出てくるし、スポンサーとの売り上げっていうのも出てくるだろうから、民放だとやっぱ多少厳しくジャッジするし、なかなか企画が通らなかったりするんです。
でもNHKは本当に、民放だったら通らない狭いテーマでもその中に生きる人たちもしっかり描くし、しかもそれを長期で密着したりするじゃないですか。
それは本当に、一視聴者としてすごく好きなところです。
学級委員がふざけてくれるから、僕らもバカやれる
あとはNHKって、子供のころ見てた時はすごい真面目なイメージがあったんですけど、大学生ぐらいになって、もっとNHKの番組見るようになってくると、意外にふざけてるというかユーモアのセンスはすごいあると思って。
笑いとかユーモアに対しても力入れているイメージがあって、民放でバラエティのディレクターをやっていたときも、すごく意識していましたね。
NHKがハッチャけてくれると、”学級委員”がふざけてくれてるんで…俺らもバカやって、全体的に日本のテレビがおもしろくなるっていう、そういう気持ちでもいました。
民放のバラエティーって、やっぱり演者の力に頼るところが結構あるんですよね。企画といってもやっぱり演者の力を出そうというもの。
でもNHKの企画っていうのはスタッフと、演者に長期密着して、演者から違うリアクションを引き出すとか、新しい面を見せるというか、なんと言えばいいんだろう…「ドキュメントロック」みたいな。それをすごくNHKのバラエティーから感じます。
Q:制作者として感じられることですね。では、視聴者として感じることはありますか?
視聴者として見ても、近年NHKが手がける”ドキュメントバラエティー”と言われるジャンルのものは、やっぱりすごく質が高くておもしろいですね。
ノーナレとか素晴らしいと思いますし、ドキュメント72時間も素晴らしいし、なかなか民放ではあそこのレベルに持っていくのは大変だと思います。
若いクリエイターをキュレーションしてほしい
Q:NHKは、もっとこうしたほうがいい、こうあるべきだ、という部分はありますか?
そうですねえ…NHKって、昔の、僕が大学生くらいのときのイメージというと、何かの文化を推薦したというか、キュレーションしてる番組が多かったような気がするんですよね。
「これがおもしろいよ」ってレコメンドしてたりして、若い制作者にチャンスを与えているイメージがあったんですよ。
それが、今は少し足りない気がしていて。「既にすごく実力のある作り手」に遊び場を提供している感じ。もっと若い制作者にチャンスをあげる局であってほしいと思う。
それと、今だったらやっぱりコロナ禍で疲弊しているライブエンターテインメントビジネスとか、演劇とか、そういったものに注目するような番組をどんどん作ってほしいと思っています。
それがさらに小劇場とかの”おもしろい人たち”を発掘していくことになって、結果的に、もしかしたら大河ドラマを変えたりとか、朝ドラを変えたりとかっていう、NHKの太い幹を強くするようなきっかけになる気もするんですよね。
そういう意味でいうと、未来の宮藤(官九郎)さんとか三谷(幸喜)さんみたいな方を発掘していくようなことも、NHKの中でやってほしいなと思います。
Q:NHKが新しいことをすることで、広く文化を支えていくという、ということでしょうか。
そう思います。やっぱりいま民放って、微妙な立場でもあるじゃないですか。配信も出てきて、番組を作るだけじゃなくてマネタイズも考えながらやっていくっていう、その瀬戸際の中で。
でも実は若い制作者にチャンスを与えるというか、新しいものを作るというところがちょいちょい見逃しがちになっちゃうんで、それはNHKには見逃さないでほしいなと思いますね。僕らももちろんその気持ちはあるけど、NHKだからできるってことがあると思うんですよね。
最近だと、よるドラの枠で玉田企画の玉田くん(脚本家)と作った「伝説のおかあさん」(2020年放送)とか…
三浦(直之)さんが脚本を担当した「腐女子、うっかりゲイに告る」(2019年)とか。ああいうタイプのドラマって、NHKは新しいことやってるなって。
「腐女子、うっかりゲイに告る」は、多様性を、しかもこんなフレッシュな感性で作ってくれるんだって、視聴者にとってもNHK全体のイメージが変わることにもなると思っているんです。
NHKのドラマに新しい風を吹き込んでいるだろうし、演劇界にとってもこんなおもしろいクリエイターがたくさんいるということが広く知られるという意味で、お互いにとっていろんなきっかけになっていると思うんです。
もう、どんどん未来を広げてほしいなと思いますね。
若い制作者をどんどん引き上げたり、新しく「こんなおもしろいものがあるんだよ」と視聴者に伝えるきっかけ作りみたいなもの。
それが結果的に日本の文化を多様にするし、NHKの番組をまたフレッシュにするんじゃないかと思っています。
やっぱり僕自身、NHKでナディアというアニメに出会って、そこで庵野さんだったり、新しいクリエイターを知って、それで自分の世界が何倍も広がったんです。
今のNHKも、そういうきっかけをどんどん作ってほしいなと思っています。
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「若いクリエイターを発掘・紹介し、文化を、未来を広げていく」「多様性を確保する」、NHKへのメッセージ、ありがとうございました。
コンテンツを愛してやまない佐久間さんが、テレビ番組のみならず、映画、音楽、ゲーム、漫画など、ありとあらゆる「コンテンツ」について熱く語る番組を放送します。
「コンテンツ・ラヴァーズ」 8月17日(火)[総合]後10:30~後11:00