「AV新法」施行から2年…条項に“見直し”記載も検討せず?女優たちが異例のデモ 「法律がアングラに追い込んでいる」宇佐美典也氏が訴え
宇佐美氏があげる問題点は、同法によって現場が“地獄のループ”に陥っていることだ。「弱い立場にある人ほど経済的困窮に追い込まれる。有名な女優さんは継続して出演が見込めるが、若い人やメーカー専属ではない人は、短い期間でPDCAを回さないといけない。公開までに5カ月もかかると、仕事がなくなってしまうわけだ。そうなると違法な環境や海外売春で稼ぐしかなくなる。この法律によって仕事をなくした人がアングラに誘導され、そして逮捕されるマッチポンプのシステム。それは“成果”とは言えず、法律を見直さないと止まらない」との見方を示した。 AV男優のしみけんは「問題を起こすのは適正AVではない人たち。長いこと業界にいるが、逮捕されるのは会ったことも見たこともない人だったりするので、適正AVと同人AVは区別してもらいたい」「メーカーは法務が増えただけでなく、撮影本数も減り、5カ月の期間があると何が売れるかも予測できない。大手メーカーは生き残れるが、体力のない中小メーカーは潰れてしまう。若手は小さいところで研鑽を積んでから大手に行くが、それができず下が育たなくなる」と語る。 また、体調不良による問題点も指摘。「今までは、撮影の2、3日前に発熱してしまったら代わりの男優さんに頼めば良かったが、“契約を結んでいないからダメ”と言われ、解熱剤を飲んで出ることがある」とした。
■具体的な改正案は?
改正すべき具体的な内容について、宇佐美氏は浜田聡参院議員の案に賛同。「法律の名称変更」「“1カ月-4カ月ルール”の柔軟化」「政府に寄る業界の実態調査」の3つを訴える。 「女優さんからは“自らの意志でやっているのに、被害者に見られる。そういう言葉を使わないでほしい”と聞くので、シンプルに“AVに関する法律”などとすべき。1カ月ルールはやっぱり出演をやめたいという時には機能しているが、差し替え(代役)時には困ってしまう。撮影から公開まで4カ月というのも長すぎるので、もう少し短くする柔軟化が必要。また、政府も議員も業界の実態を把握していない。被害者の言うことは聞くけれど、メーカーの言うことは聞かず、どの省庁も“我々の所管ではない”と言う。出演者に2~3%しかお金がいっていないという話も出ているので、それが本当なのかも含めて調査すべきだ」 これらの実現可能性はあるのか。牧原議員は「1つ目は、性行為の撮影を合法とすることへの懸念から、あえて“AV出演被害防止・救済法”とした経緯がある。名称が後から変わることはあまりないが、議論の対象になる。2つ目の1カ月-4カ月というのは確かに、必ずしも根拠があるものではない。制作期間を経て、世に出る前に必ず出演者が確認できるというのが根本なので、もっと早くできるなら4カ月も期間を取る必要はないだろう。3つ目は、実は内閣府も法案は通したが所管しているわけではない。実態の把握を誰がやるのかは、今すぐには思いつかない」と答えた。 現場としてはどうか。しみけんは「1カ月ルールで強制的に考える時間を与えられたことは、撮影のバラシも多いが、いいことだと思う。出演する女優さんの多くは強要されていないが、作品が公開された後に生活環境が変わり、後悔して取り下げることが多い。法律ですぐに取り下げてもらえるというのは安心して出演できるきっかけになると思う」と述べる。 宇佐美氏は「最後にどうしても言っておきたい」として、「AV業界は自主規制の枠組みがあった。AV人権倫理機構があって、メーカーはそれに従うというものだ。そこにAV新法が入ってきたことで信頼関係がガタガタに崩れてしまい、政府が入り込まないとその枠組みが危うい状況になっている。この法律の見直しを機に、業界がルールを守れる仕組みを作って欲しい」と訴える。 これを受けて牧原議員は「自主規制の枠組みが崩れているなら、元に戻した方がいい側面もあると思うので、これは持ち帰りたい」と応じた。 (『ABEMA Prime』より)