鉄壁の守護
王宮の屋上庭園。
そこに連れてこられたアンジェは、クラリスを見るのだった。
「何の用だ?」
「アンジェリカ、あんたリオン君の体調をどう思っているの?」
「――しばらく休ませたい」
「無理よ。このまま次は国内で争うことになるわ。休んでいる暇なんて、私たちにはないのよ」
外の問題が片付けば、次は内側の問題だ。
「リオンは王国の盾になる。逆らう勢力に睨みを利かせる」
「それで済むと思っているの?」
アンジェは俯くのだった。
それで終わるとは思えなかった。
必ず馬鹿も出てくるだろうし、場合によっては王国を裏切り外国に寝返る勢力も出てくるだろう。
そうした敵と戦い続ければ、リオンの精神が保たない。
「アンジェ、本当は黙っておくつもりだったけど、取って置きの方法を教えてあげるわ。もしかしたら、リオン君のメンタルを一気に強く出来るわよ」
その情報にアンジェが飛び付く。
「――何が望みだ? 叶えられる望みなら、私は何だってするぞ」
「あまりがっつくと、足下を見られるわよ。――簡単な話よ」
クラリスの話を聞いて、アンジェは「そ、それでいいのか!?」と驚くのだった。
◇
学生寮に戻ってきた俺は、机の引き出しを開けて首をかしげていた。
「あれ? おかしいな。ここにしまっていたのに」
『どうしました?』
「いや、薬がないんだ。見つからないから補充してくれ」
『嫌です。そもそも、私とクレアーレで全て回収しました』
「――おい、あれがないと寝付きが悪いんだから、さっさと出せよ」
普段から薬の使用に口うるさいルクシオンだが、俺が疲れている時は黙って薬を用意してくれていた。
だが、今日に限っては強く抵抗する。
『薬の使用は控えるべきです。一度、本格的に医療カプセルで治療を受けてください』
「今度の連休でいいだろ。というか、今度の連休もバタバタしそうだから無理かな?」
クーデターは随分と呆気なく片付いたのだが、問題は事後処理だ。
アンジェたちが手伝ってくれているが、俺も手を貸すべきなのだろう。
ルクシオンが赤い一つ目で俺を見ている。
「何だよ?」
『――薬の代わりが到着しました。マスター、時に人肌が心を癒やしてくれるのをご存じでしょうか?』
「聞いたことはあるな」
人肌が恋しくなることはあるよ。
誰かに甘えられたら、どんなに幸せなことだろう。
いっそアンジェやリビアにママって言って抱きつき――いや、ないな。
自分で考えて、ちょっと引いた。
やはり疲れているようだ。
『今夜はお楽しみですね!』
「おい、どうした?」
急に声を大きくしたルクシオンは、ドアを開けると外に出ていく。
代わりに部屋に入るのは、寝間着姿のアンジェとリビアだった。
「あれ? 二人とも、今日は一緒にお喋りでもしたいの?」
以前にもこんなことがあった。
どうせ寝られないなら、二人とゆっくり話をするのも悪くないだろう。
お風呂上がりなのか、二人とも頬が少し赤かった。
髪も少し湿っている。
アンジェが俺を真っ直ぐに見ている。
「リオン、私たちはどうやら考えが甘かったようだ」
「え? 何か問題でもあったの? すぐにルクシオンとクレアーレに相談を――」
ドアを閉めて鍵を閉めるリビアは、耳まで赤くしている。
「リオンさんの覚悟が出来るのを待っていましたけど、それだといつになるか分かりません。だから、私とアンジェで決めたんです」
――覚悟?
いったい何のことだろうか?
もしかして、王位云々のやつだろうか?
「王様になるように説得しに来たのか? なら遠慮する。今ですら辛いのに、これ以上の立場とかいらない。今だって、本気で逃げ出したいくらいで――え?」
二人がゆっくりと俺に近付き、優しくベッドに押し倒すのだった。
「――え? えっ!?」
リビアが寝間着のボタンを外した。
「アーレちゃんから色々と聞いてきました。お、男の人は、女性の胸が大好きだって」
それは人による!
いや、大好きだけど。大好きだけども!
クレアーレの奴、リビアに何てことを教えているんだ! ――ありがとう。
アンジェが俺の服を脱がせてくる。
「まったく、こっちはいつでも受け入れたというのに」
「――うぃ!?」
変な声が出てしまった。
え? もしかして、これってついに来たのか? 来ちゃったのか?
「ふ、二人とも落ち着くんだ!」
だ、だが、俺は詳しいんだ。
こういう展開になると、きっと邪魔が入るに決まっている。
マリエとか、あの馬鹿五人とか! きっとこのタイミングで――。
アンジェとリビアが、俺に顔を近付けてきた。
「もう何も考えるな」
「私たちに全部任せてください」
――嘘だろ。
え、本当に誰も来ないの?
ルクシオン(● )『ここから先はマスターのプライバシーです』
クレアーレ(○ )『ここはノクターンじゃないの。小説家になろうなの!』
若木ちゃんΣ(゜Д゜;)「え? 嘘!? 今日はここでおしまいなの!? いつもはもっとあるじゃない!」
ルクシオン(●)『マスターのプライバシーは!』
クレアーレ(○)『我々が守ります!』
若木ちゃん(#゜Д゜)「ふざけんな! もっとも大事なところでしょうか! 見せなさい。あるんでしょう? 原稿はあるのよね!! 警告覚悟で掲載させなさいよ! 警告程度にビビって――」
( ●);y=ー( ゜д゜)・∵. ターン「けひょい!」
( ○);y=ー( ゜д゜)・∵. ターン「にはちゅめっ!」
ルクシオン( ●)『……』
クレアーレ( ○)『……』
ルクシオン(●)『……』
クレアーレ(○)『……』