【基本情報】
番号 |
2023-11 |
不正行為の種別 |
改ざん、自己盗用 |
不正事案名 |
早稲田大学助教による研究活動上の不正行為(改ざん等)の認定について |
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不正事案の研究分野 |
教育学 |
調査委員会を設置した機関 |
早稲田大学 |
不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 |
早稲田大学 国際教養学部 助教 |
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不正行為と認定された研究が行われた機関 |
早稲田大学 |
不正行為と認定された研究が行われた研究期間 |
平成30年~令和2年 |
告発受理日 |
令和4年6月24日 |
本調査の期間 |
令和4年10月24日~令和5年11月27日 |
不服申立てに対する再調査の期間 |
- |
報告受理日 |
令和6年2月5日 |
不正行為が行われた経費名称 |
科学研究費助成事業、基盤的経費(私学助成を含む) |
【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要 |
1.告発内容及び調査結果の概要 早稲田大学国際教養学部助教が、教員として採用される前の若手研究者の時に執筆した論文等について、文部科学省及び日本学術振興会を通じ不正行為の疑いがある旨の告発があった。予備調査の結果を受けて本調査を行うこととし、調査委員会を設置した。本調査の結果、論文3編及び学会発表1編に改ざん、論文3編のうち2編については自己盗用を認定した。 2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について (1)調査委員会による調査体制 5名(内部委員2名、外部委員3名) (2)調査の方法等 1)調査対象 ア)調査対象者:早稲田大学 国際教養学部 助教 イ)調査対象論文等:8編(海外の学術誌:2016年、2020年、学内の紀要論文:2021年、修士論文:2014年、博士学位論文:2020年、学会発表:2017年、2018年(2編))(うち、修士論文及び博士論文については、ガイドラインの対象とはならないが、大学の規程により調査対象とした。) 2)調査方法 ・調査対象とした研究成果の記述内容の精査、研究成果間の比較分析 ・調査対象者に確認すべき事項の検討と集約 ・調査対象者に対する書面調査の実施 ・調査対象者から提出された回答内容および研究データの精査・評価 ・調査対象者に対する聞き取り調査 (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論 (結論) 1)認定した不正行為の種別 改ざん、自己盗用 2)「不正行為に関与した者」として認定した者 早稲田大学 国際教養学部 助教 (認定理由) 博士学位論文1編を含む論文3編及び学会発表資料1編について、各研究成果の中に示されたデータや調査結果等に関して、不適切な取扱い(論文の内容と分析したデータの内容との齟齬や、インタビューにおける発言と反訳データの不一致が複数箇所あること等)がなされていたことから、少なくとも研究者として当然に守るべき基本的な注意義務を著しく怠ったといわざるを得ず、改ざんを認定した。 博士学位論文で示した分析結果の表が、改ざんを認定した論文2編に出典を明記せず引用されていることから、自己盗用を認定した。 (不服申立て手続) 調査結果を通知したところ、調査対象者から不服申立てがなされたが、不服申立ての内容を審議した結果、再調査は不要と判断した。 3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について 科学研究費助成事業、基盤的経費(私学助成を含む)による研究成果であり、不正行為を認定した論文について以下の支出があった。 ・基盤的経費(私学助成を含む) 計179,616円(学会参加費、学会出張費) |
◆研究機関が行った措置 |
1.論文の取下げ 助教に対し、不正行為が認定された論文2編及び学会発表の取り下げを勧告した。また、不正行為が認定された博士学位論文については、論文審査を行って学位を授与した教育学研究科に対して、大学の規定を踏まえ、適正な措置を講じるよう勧告した。 2.被認定者に対する大学の対応(処分等) 助教について、令和6年3月27日付で「訓戒」処分とした。 3.競争的研究費等の執行停止等の措置 助教が研究責任者である科研費1件について、日本学術振興会からの廃止に係る通知の受領に先立ち、大学において執行停止措置を行った。また、助教が研究分担者である科研費1件について、日本学術振興会からの研究分担者の削除に係る通知の受領に先立ち、大学において研究分担者(助教)の分担金にかかる執行停止措置を行った。 |
◆発生要因及び再発防止策 |
1.発生要因 助教が教員として採用される前の若手研究者の際の分析手法および研究倫理に関する理解が著しく不十分であったことや、論文等について自身による確認が不十分であったことなどが発生原因として挙げられる。 調査対象の論文等には、図表データに関する必要な説明の欠如、単純な誤記といった初歩的なミスに加えて、杜撰なデータ分析や誤った引用が非常に多く見られる。研究手法、すなわち、社会調査法や統計分析に関する理解や研究不正に対する理解が著しく乏しく、基本的な標本抽出の考え方や、基礎的な統計分析の方法を正しく理解していなかったとうかがわれる。また、調査の結果確認された多くの誤記は、当該教員自身が論文等の投稿前または発表前に十分な確認を行っていればその多くは未然に防ぐことができたものである。 2.再発防止策 1)大学院学生に対する研究倫理教育の義務化 大学院学生には学位論文や学術誌論文の執筆、学会等における研究発表等の機会があり、一人ひとりに責任ある研究活動が求められることから、従来は博士課程学生のみに研究倫理教育の受講を義務付けてきたが、2024 年度より修士課程学生に対しても受講を義務付ける。 2)教員に対する研究倫理教育の徹底 教員が研究のみならず、研究指導を含む教育という重責を担っていることを踏まえ、教員に対する研究倫理教育を引き続き徹底する。 3)教育学研究科における研究指導体制および学位審査体制の再点検 教育学研究科は、同研究科における研究指導体制および学位審査体制が適切に整備され、規定等に則って適切に運用されてきたのかについて再点検を実施し、その結果、問題点が確認できた場合は速やかに改善措置を講じ、公表する。 4)教職員に対する本事案の共有および注意喚起 大学として、今回の研究不正事案の内容を教職員に共有し、再発防止のための強い注意喚起を行う。 |
◆配分機関が行った措置 |
科学研究費助成事業について、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、改ざんが認定された論文は科学研究費助成事業の成果として執筆された論文である。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、被認定者に対し当該資金への申請及び参加資格の制限措置(令和6年度~令和9年度(4年間))を講じた。 |
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