2024/5/27
弁護士の成果報酬制度について、特に養育費の成果報酬制度は如何なものかなどのご意見を事務所宛に頂きます。
これを踏まえて、G7各国の弁護士の成果報酬制度の制限について国会図書館で調査依頼しました。頂いた資料をご紹介します。
【依頼内容】
養育費の成功報酬を原則禁止にしている国とその理由に関して調査しまとめてほしい。
【調査概要】
▼アメリカ
成功報酬の制限/あり
主な制限規範/法律家職務模範規則(Model Rules of Professional Conduct Rule)1.5 (d)
制限対象/
①家事事件の報酬で、その支払又は額が、離婚の成立又は別居手当若しくは扶養料の額若しくはそれらに代わる財産的解決にかからしめられるもの
※扶養、離婚後扶養その他の財産上の支払命令が発令された後の、支払義務の不履行部分に関する法律的代理行為については、完全成功報酬契約が禁止されない。
②刑事事件における被告人の弁護に対する成功報酬
主な制限理由/
①弁護士の報酬が離婚を助長したり事件当事者間の調整を妨げたりすることが公序良俗に反する。
②成功報酬を生み出すような経済的利益が存在しない。
▼イギリス
成功報酬の制限/あり
主な制限規範/1990 年裁判所及び法務法(Courts and Legal Services Act 1990(c.41))第 58A 条
※第 58A 条第 2 項には、家事事件手続の例として、1973 年婚姻事件法(Matrimonial Causes Act 1973)、2002 年養子及び子ども法(Adoption and Children Act 2002))等に基づく手続が挙げられている。
制限対象/①家事事件手続②刑事事件手続
主な制限理由/
・弁護士による請求額の誇張や証拠隠匿などの危険が伴う。
・弁護士が依頼者に対して不当に低額であっても和解に応じさせて報酬を受けようとする危険を伴う。
▼カナダ(オンタリオ州)
成功報酬の制限/あり
主な制限規範/1990 年ソリシター法(SolicitorsAct, R.S.O. 1990)第 15 章第 28.1 条 Rules of Professional Conduct 3.6-2
制限対象/
①カナダ刑法に基づく手続その他の刑事手続及び準刑事手続
②家族法に係る事項
主な制限理由/
②家族法手続の性質とそれに関わる問題(親権、子供との面会、扶養、財産分与を含む。)を考慮すると、弁護士が依頼者と成功報酬契約を結ぶことは不適切である。
▼ドイツ
成功報酬の制限/あり
主な制限規範/弁護士報酬法(Rechtsanwaltsvergütungsgesetz)第 4a 条
連邦弁護士法(Bundesrechtsanwaltsordnung)第 49b 条
制限対象/完全成功報酬は、原則として禁止される。個別事件について、例外的に条件付成功報酬が認められることがある。
主な制限理由/予測可能性がない。弁護士の司法制度における役割と矛盾する。
▼ フランス
成功報酬の制限/あり
主な制限規範/1971 年 12 月 31 日の法律(Loin° 71-1130 du 31 décembre 1971)第 10 条
制限対象/完全成功報酬は原則として禁止。条件付(部分的)成功報酬は認められている。
主な制限理由/弁護士倫理に反する。アメリカの一部で見られる濫用に対する懸念が強い。
▼イタリア及び日本
成功報酬の制限/なし
【別紙】
※紙資料はタイトルのみのご紹介となります。
資料1 アメリカ法曹協会, 藤倉皓一郎監修(日本弁護士連合会訳)『ABA 法律家職務模範規則―完全対訳―』第一法規, 2006, pp.61-66.
資料2 髙中正彦ほか「座談会 弁護士報酬と預り金管理」『ジュリスト』1533 号, 2019.6, pp.64-78.
資料3 中村良隆「イギリスにおける成功報酬制と弁護士保険」『自由と正義』725 号, 2009.6,pp.138-141.
資料4 三宅知三郎「イギリスの民事手続における弁護士費用の敗訴者負担実務の最近の動向」『判例タイムズ』1225 号, 2007.2.1, pp.83-89.
資料5 日本弁護士連合会「イギリス調査報告書」2003.10.7. 鹿児島大学司法政策教育研究センターウェブサイト
資料6 「報酬」ペータース法律事務所ウェブサイト
https://www.peters-legal.com/ja/%e5%a0%b1%e9%85%ac/
資料7 日本弁護士連合会弁護士報酬敗訴者負担問題欧州調査団「弁護士報酬の敗訴者負担制度調査報告―欧州における制度と運用―」2003.10.30, pp.8-23. 鹿児島大学司法政策教育研究センターウェブサイト
資料8 「費用体系」Clare Légal ウェブサイト
https://www.clarelegal.com/ja/%E8%B2%BB%E7%94%A8%E4%BD%93%E7%B3%BB/
資料9 福井しず香「ドイツの弁護士を取り巻く状況」『自由と正義』754 号, 2011.10, pp.62-64.
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/kokusaishitsu/data/JS_No48.pdf
資料10 互助会運営委員会「マルセイユ弁護士会訪問記」『NIBEN Frontier』2015.10, pp.38-42.第二東京弁護士会ウェブサイト
https://niben.jp/niben/books/frontier/frontier201510/2015_NO10_38.pdf
資料11 山本和彦『フランスの司法』有斐閣, 1995, pp.43-44, 50.
https://dl.ndl.go.jp/pid/12658295
資料12 髙中正彦『弁護士法概説 第 5 版』三省堂, 2020, pp.45-51.
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