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【解説】イスラエルとハマス 合意なるか

イスラエルとイスラム組織ハマスの間で戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉が行われる中、イスラエルのネタニヤフ首相は「合意の有無にかかわらずガザ地区南部のラファへ部隊を進める」と述べ、あくまでハマスの壊減を目指す姿勢を強調しています。

ハマスは人質解放の条件としてあくまで完全な停戦の実現を求めていますが、アメリカのブリンケン国務長官はハマスに対し提案に応じるよう強く求めています。別府正一郎キャスターの解説です。

(「キャッチ!世界のトップニュース」で2024年5月1日に放送した内容です)
 

・イスラエルの要求が譲歩

イスラエルとハマスの間の交渉では、イスラエルが譲歩を見せたことから合意への機運が高まっていると思われていたところ、今度は、ネタニヤフ首相が「合意の有無にかかわらずラファへ部隊を進める」と発言し、早速雲行きが怪しくなってきました。

果たして、合意はなるのか。そのために、乗り越えるべきハードルは何か。まずは、今回の交渉で合意に向けた期待が出ている理由を押さえておきます。
 

大きいのはイスラエルの要求がトーンダウンされた点です。ハマスによって人質とされた人は253人と見られますが、このうち、すでに解放されたりした人を除くおよそ130人の行方がいまだに分かっていません。イスラエルは、まずは女性や高齢者など40人の解放を求めてきましたが、それを33人でよいとして、譲歩したと伝えられています。33人戻ってくれば、まずは40日間戦闘を休止する内容だと見られます。

もちろん、戦闘は直ちに終わるべきであり、人質は全員即時解放されるべきであり、今回の交渉で合意しても不十分です。それでも前進ではあります。それだけに、何とかまとまって欲しいところです。
 

・双方のリスク要因

しかし、イスラエル、ハマス双方に、この交渉をとん挫させるリスク要因があります。このうち、イスラエルには内政の課題があります。強いリーダーを自認するネタニヤフ首相ですが、政権基盤は盤石ではありません。極右政党と連立を組んでいて、その意向を無視できないのです。
 

その極右政党は、ガザでの戦闘の継続を求めていて、これまでも合意に反対してきました。極右の代表格のべングビール国家治安相は30日、ネタニヤフ首相と会談したあとに声明を出して、「無謀な合意には反対する」と述べたということです。首相の「合意の有無にかかわらずラファへ部隊を進める」という発言の背景には、こうした極右への配慮があると見られます。ネタニヤフ首相としては、交渉で合意にゴーサインを出すかどうか、自らの政権崩壊のリスクも天秤にかけながら判断するものと見られます。
 

一方のハマスですが、こちらも組織内に強硬派を抱えていると見られます。そもそも、ハマスのガザ地区トップのシンワル指導者は健在だと見られています。また、イスラエル軍が、壊滅的な被害を与えたガザ地区の北部でも、ハマスとイスラエルの戦闘が再び起きていることが示すように、ハマスは一定の活動を続けることができています。

こうした中で、ハマスの中にも、「合意に応じる必要はない」という声が出ている可能性もあります。しかし、自らの権力の存続や組織の理屈などのために、平和に背を向けるようなことは許されることではありません。
 

双方の指導者は、合意に向けて、強い意志を示すべき時に来ています。
 

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放送[総合]毎週月曜~金曜 午前10時5分
※時間は変更の可能性があります。