【刀装具】鉄鐔(鉄鍔)の手入れ法~一般向け~rev.1 | 【お役立ち処】よりきあん見聞録!

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鉄鐔の手入れについては人それぞれ色々な意見があります。

私の手入れの基本は木綿の布でよく磨く。ただこれだけです。

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時代錆がついた鐔を延々と磨けば、このようにネットリとした艶のある錆色になります。

(参考)
これは江戸初期の伊予正阿弥派の鐔。今の愛媛県で作られた鐔です。
平地を鎚目で鍛えたまま仕上げて微妙な凹凸の変化を出してます。錆色と相まって黒釉の抹茶碗の雰囲気がいい味です。


鉄鐔なら箱にしまわず、始終ナゲシなどに吊るして空気に触れさせるのが一番。そして錆を育てます。育ったら布で磨きます。


ただし、、、鉄を蝕む悪性の赤錆を落としてからです。これが手入れの本題です。

鉄鐔といっても、板鐔、高彫りのある鐔、地透かし鐔、肉彫り透かし鐔、金象篏のある鐔など様々。

正直、その鐔の鉄質、製作年代を考えてケースバイケースで手入れをする事になります。

そんなケースバイケースは、鉄鐔を相当数手入れ(修復に近い世界)した経験があり、なおかつ器用さと忍耐力に自信がないと難しいです。

一歩誤るとせっかくの時代錆を削り落としてしまったり、金象篏をダメにしたりと自己責任でやる覚悟が必要です。正直、触らないほうが良い場合があります。


ここではそんな難しい手入れではなく、板鐔や透かし鐔のごくオーソドックスな方法を紹介します。

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上の画像は一般的な手入れ用具一式です。

鉄鐔の手入れの目的は、
「より美しい錆色にすること」
「赤錆を落として黒錆を育てて腐蝕を予防すること」
「より鐔と親しむ手段として手入れを楽しむこと」

この三点を念頭におけば大丈夫です。

特に親しんで愛着を高めるには、手入れが一番かもしれません。

●道具紹介(上の画像をご参照)
1、木綿の布
綺麗なネルを用いて磨く方もいますが、洗い晒しでくたびれた木綿のタオルで十分。
鐔を磨いて鉄錆を細かくし、より艶やかな錆色にするために用います。基本中の基本の道具です。

2、鹿の角
赤錆を削り落とすために使います。鉄を傷つけず赤錆のみ削り落とせれば何でも構いません。たぶんベストは鹿の角。

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※この鹿の角の形状は、私なりに試行錯誤した結果行き着いたものです。鹿の角の根元付近を輪切りにして握りやすくしてあります。

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※また、角の突起が細かな部分の赤錆落としに使える万能スタイル。

手入れ道具の画像左に棒がありますが、これは折れたグラスファイバーの釣竿。あれば便利。鹿の角より強いので力加減に注意が必要。無くても構いません。

3、歯ブラシ
赤錆を落とした際の赤錆払いです。細かい部分に溜まった赤錆を払い落とすのに便利。歯ブラシでなくとも、靴磨きのブラシでも何でも結構。
歯ブラシを愛用する理由は、柄部分のブラスチックで赤錆を削る事があるからです。
 鹿の角より削る力が弱いので、最初に錆の状態を見る際の試し削りによく使います。

4、明るい照明
赤錆の削り具合を確認しながらの作業となるので、出来るだけ手元を明るく照らす光は必要です。透明な白熱灯を好んで使ってます。目は疲れます。


これで基本的な道具はOK。あとは愛情と根気があれば何とかなります。


●手入れの作業説明

1、布で磨く
特に赤錆がない鐔は延々布で磨いて下さい。錆の粒子が細かくなり、より艶やかになります。
 これは日々の手入れです。好きなだけ磨いてやって下さい。そのうち一番上の画像にあるような、ネットリした黒錆のいい味が出てきます。

2、鹿の角を使って赤錆落とし
錆がありそうな部分に鹿の角を擦りつけてみました。すると、、、このように赤い錆が出てきました。

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ある程度鹿の角で擦ったら、落ちた赤錆を布なりで払って下さい。そしてまた鹿の角で擦ります。
あらかた赤錆が落ちると白っぽい鹿の角の粉が残ります。これでOK。

3、天日干し
赤錆を落として、それなりに布で磨いたら、基本的に手入れは完了。ですが、思いもよらない錆が新たに出る事があります。
そこで天日干し。空気が綺麗な地域なら晴天を選んでベランダに吊るしても良いでしょう。
天日干しで、手入れで出てこなかった錆が新たに湧いてくる事があります。いつかは湧いてくる錆ですから、赤錆を落として気にせず手入れしましょう。

また、天日干しをすると錆がネットリしてきます。理由はよく分からないのですが、片面ばかり天日にさらしていると錆色が変色しているのが分かるので、何らかの化学反応をしているのでしょう。
私の場合、カーテンレールをうまく使って室内から天日にさらしてます。週一程度で表裏をひっくり返してます。しばらくしたら回収して赤錆の具合を確認しながら、また布で磨きます。

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カーテンレールに吊るしている実際。陽当たりが良い分、外から見たら変な光景かも。

、、、こんなところですね。

以上が鉄鐔のオーソドックスな手入れです。

●ワンポイントアドバイス
・赤錆を落とす時は気長にやりましょう。一気に落とそうと頑張ると、疲れますし、集中力が途切れます。

・また、落としたつもりの赤錆が落ちきれていないなんて事がよくあります。数日、数ヵ月、数年!?かけてノンビリやりましょう。

・赤錆の防止にと、油を塗る人もいます。油を塗ると油の艶が目立ち、鉄鐔本来の艶やかさが失われます。さらに、鉄が錆を生みにくくなりますから、錆が育ちません。
油は塗らず、良性の黒錆を育ててやって下さい。

・布でひたすら磨けば、必ずや艶が出てきます。箱にしまいっぱなしにせず、気が向いたら音楽でも聴きながら鐔を磨いてやって下さい。


●番外編

応用編に複雑な面をした鐔の赤錆落としがあります。詳しくはまた別の機会に。

そうですね。銅版画や木版画、篆刻の経験があると役に立ちます。

どの本でもダメ出ししている金属を用いた手入れが中心になります。
破壊力抜群ですから、鐔に傷をつけず、時代の黒錆を落とさない微妙な力加減を要求されます。

参考に数枚写真を掲載します。これは一番面倒であろう木目彫りの鐔です。丸い木目が一番厄介。
作者も大変だったでしょうが、赤錆落としも大変です。

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作者の彫ったタガネ運びを観察しながら、タガネ運びに逆らわず、篆刻刀で赤錆を削っている様子。
布や指の入らない隙間ですから、結構赤錆が蓄積しているものです。

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ある程度赤錆を削ると、赤錆が邪魔で彫りが見えなくなります。歯ブラシで赤錆を払っている様子。
数十秒に一回は歯ブラシで赤錆を払います。

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赤錆削りを繰り返して、確認に布で拭いた状態。何とか傷つかず綺麗になりました。本当に冷や汗もの。
これでしばらく休憩。余力が充分に残っているうちに潔くやめます。
気がつかなかった赤錆に後日気がつくのが当たり前の世界。

このような金属を使った手入れのコツを聞かれたら、
「カッターで、すね毛を剃る練習が役に立つ」と答えてます。

それくらい微妙な力加減と、タガネ運びを見極める目が要求されます。

rev.1 画像を一部修正
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