名前・4
「…跡部」
「はっ、はい!///」
徳川は合宿が始まって以来、初めて跡部の名字を呼んだ。
「これからは、こうして呼べばいいんだな?」
「はい…」
「分かった、気をつける。だから、席に戻って食事をしろ」
跡部は鬼のジャージを離してゆっくりと自分の席につき、ナイフとフォークを掴んだ。
そして、それを合図に周りのテーブルの者も食事を再開し、食堂に元の喧騒が戻った。
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「…本当に面倒な連中だぜ」
「笑ってますよ、柘植コーチ」
「だって、見たかよ。あの徳川のツラ」
「いつものポーカーフェイスが崩れてましたね。珍しい」
「精神コーチとしては、少しばかり虐めてあげたいところですねぇ(笑)」
「でももう平静に戻ってるようですよ。少なくとも見かけは」
「もう1人はまだガチガチだな。ったく、跡部のヤツ、鬼だけじゃなく徳川にも気があんのか?」
「聞こえてますよ、コーチっ!///#」
跡部が立ち上がって隣のテーブルの柘植を非難した。
「馬鹿野郎、わざと聞こえるように言ってやってんだ。ありがたく思え」
「思うわけないでしょう!///俺、別に先輩達に対して変な気持ち持ってないですから!///」
「…おい」
「えっ?」
「うるさい。座れ」
「…はい;」
徳川に叱られて跡部は大人しく席についた。
「と、く、が、わ。」
「え?」
「名前は?いきなり約束破ってるじゃない」
「あ…」
入江の指摘に「しまった」という顔をする徳川に、跡部は
「大丈夫です。もう気にしませんから」
と苦笑いした。
「それがいいよ」と入江も笑い、鬼も「そうだ。男がつまらんことを気にするな」と笑った。
徳川は「それを早く言ってやってくれ…」と思ったが、口には出さなかった。
(おわり)
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