名前・2
「…何だか分からないが騒ぎはゴメンだ。名前を呼べば満足するのか?」
「はい。一度だけでもいいんです。お願いします…///」

真っ赤になって「一度だけ」と願う跡部を見た周囲は、片思いの先輩に「先輩、思い出に一度だけキスして貰えませんか///」と頼む女子を連想してしまったが、本人は周りの視線や想像など全く頭にない。

ただ、必死で徳川を見つめていた。


「分かった。一度くらいなら…」

跡部ばかりか周囲までが固唾を呑んで静まり返った。



「景吾」





「…? え…っ!?//////」

数瞬の間を開けて、跡部は一気に耳どころか首まで真っ赤になった。

「何を驚いてる。名前を呼べと言ったのはお前だろう。これで満足なのか?」

徳川は跡部の様子が不思議でならなかった。
言われた通りにしたのに、何を動揺しているのか…と。

だが跡部は恥ずかしさに泣きそうな声で、震えながら答えた。

「あ…あの…。俺…みょ…名字で良かった…んですけど…///;」
「え…」


日本に住むようになってからは、家族以外には殆ど名前で呼ばれた事のない跡部。
氷帝の部員ですら名前では呼ばないのに、よりにもよって徳川が…名字で呼ぶのも飛び越えて名前で呼んだ。
まるでいきなり心臓を鷲掴みにされた気分で、完全にびっくりの域を通り越してしまっている。


「ぷっ…!あはははは…!」

堪えきれずに入江が笑い出し、それにつられて鬼も豪快に笑い出した。



(3に続く)
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