大学に通っていた最後の歳に、悪友(Rakesh)がダークWebについて、それからフランスのWebサイトで賭けができて稼ぐ事が出来ると話してくれた。あんたが言いたいことは分かる、俺も同じことを考えた:
フランスのギャンブルのWebサイト?なるほどまったく信用できそうじゃねえか。
だがRakeshがこのサイトは合法であると断言したし、支払い方法はPayPalだけが採用されていた。まあ幾らかマシなものかもしれない。
それでこの日曜日に、死ぬほど退屈していた俺は、ついにそこで一発狙ってみることにした。ウェルカムページの英語の使い方はゴミみたいなもんだったが、何にせよ登録は簡単だった。数分後にはルーレットのロビーに到着した。そして何かで手に入れた$100ほどが俺のペイパルアカウントに残っていたから、$100分のヴァーチャルチップを買った。
このサイトではルーレットをプレイするのに3つの部屋が用意されてた。だがすべて満席だったから、ページを再読み込みし続ける羽目になった。なかなか空席が出ない。俺はついに我慢の限界が来て、これを最後の一回にしようと決めた。もしまだ満席なら、大人しく去ろう、あいつらは俺の金を欲しいとは思ってないってことだ。多分だれかが俺の身代わりになってくれたんだろう。それで最後の更新ボタンを押すと、変化が起こった。ページ全体のレイアウトが突然完全に変わっちまった。元々の陳腐な茶色っぽいページが一面黒のページになった。それよりもリンクが一つしか無くなっていた。そこには「Erreur」という名前のヴァーチャルルームへのリンクだけがあった。
正直腑に落ちない出来事だった。鬱陶しい(AdBlockをすり抜けた)広告のバナーをクリックしたのかと思って、「戻る」をクリックしても何も変わらない。何にせよ、俺はその$100にもう別れを告げたんだ、この得体のしれない何かをやってやろうじゃないか。ロビーをクリックすると、本当に入室するかどうかの確認画面が表示されたが(あいつらはまだ俺のお金を奪いたいと思っていないらしい)とにかくついにロビーに入る事が出来た。
これを読んでいる奴がオンラインルーレットをプレイしたことがあるか知らないが、とにかく俺が見たものはこんな感じだ。まずWebカメラを通じて怪しげなカジノの映像がライブ中継される。あんたが数字を選択しベットすると、ディーラーがリアルタイムにルーレットを回し、勝つか(あんたの場合の負けるだろうが)が決まる。実際のルーレットと大体同じだ。それでWebカメラの動画がロードされると、俺の目に飛び込んできたのは少女だった。間違いなく15-16才以下だった。背は低くて、かなり痩せていて、ブロンドだった。それからかなり疲れた顔をしていた。多分後ろの奴らはコイツをを馬車馬のようにこき使っているに違いない。カメラからは部屋の中、その少女の後ろも見えて、賭けのテーブルは何かしらの壇上にあるようだった。だいたい5つぐらいのカードテーブルがあって、どこも満席だった。なのにその場所はひどく静かに見える。とにかく、俺はついに金を失う決意をして、最初のベット。
奇数に$5。
「ベットが締め切られます!」
その少女がルーレットを回したあとささやくように言った。ディーラーはショーの一部としてこの言葉を言う決まりになっているらしい。つまりビジネスの一部ってことだ。
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クソッ、残り$95。俺は賭け方の習慣があって、ノートに番号を書き留める。すべての数字を書いておけば、次の番号を予想できる、素晴らしい考えだろ?(冗談だよ)
奇数に$10。
「ベットが締め切られます!」
小さなろくでなしの玉は12に止まる。ちくしょう、まあいい、まだ$85残ってる。
奇数に$20。
そいつがルーレットを回すとき、部屋がおかしなことに気付いた。誰も居ないように見えたんだ…
5
よっしゃ、$40の勝ちだ、合計$125。悪くないな。$10を奇数に。ああ俺の賭け方は中々だろ?
「ベットが締め切られます!」
少女がそう言った。ボールのスピードがゆっくりになるときに、俺はWebカメラから部屋の周りを見渡してみた。1分前の違和感は正しかった。誰も全然全く動いていないんだ。まったく。
1
俺の残高が増えていくのは良いことだが、しかしこの奇妙さは何なんだ。誰も指すら動かしてないように見える。5つのテーブルそれぞれに6人の客とディーラー。後ろに突っ立ってるウェイトレスさえドリンクをトレイ持ったまま微動だにしない。そのままなんだ。この映像がカジノ側の用意した写真で、よりカジノをそれらしくする為の物だろうと納得しようとした。だがどう見ても写真じゃない。タイマーが鳴り始め、次のベットの時間だ。
奇数に$20。
少女がルーレットを回している間、俺はその背後をくまなく調べようとした。賭けよりもその背後のおかしな状況に興味を持っていかれたんだ。それで、結論はこうだ、これは写真じゃない。こいつらは本当に微動だにしていないんだ。
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悪くない、また$40だ。俺が勝ち続ける限り、こいつらが本当に動かないのか確かめられるってことになる。
奇数に$20。
俺はその少女のことを気にし始めた。他に何があるっていうんだ?まとも動いているのはコイツだけだ。さっき言った通り、こいつは若くて、疲れて見えた。あと何かにおびえている様にも見える。ときどきこっちを直接覗き込んでるんじゃないかっていう気がしたが、そう勘違いさせるように出来てるってことだ。
さらに$40の勝ち
プレイそのものを続けたいとは思わなかったが、とにかく4つのベットが進んでそのうち二つを勝った。その時点で$200ぐらいになっていたはずだ。俺の好奇心は高まっていったが、後ろの忌々しい奴らはまだ微動だにしていなかった。もちろん追加のフォトショップされた写真が追加されることもなかった。何かがおかしい。それでこいつらを見続けるためにプレイを続けることにした。
奇数に$40。
俺は今更Webカメラの横にチャット機能がある事に気付いた。本当に返答があるのか「やあ」って打ってみた。タイプしだすと、部屋の中を男が歩いているのが見えた。だから言ったろ、写真じゃねえって。そいつは黒いコートを着て襟を立てているようだった。何だコイツは?その男はゆっくりとテーブルの間を動いている。テーブルのうちの一つに止まったと思うと、かがんで座っていた男に目をやった。男の顔の前1インチのところから睨んで、だが座っていた奴もたじろぎもしなかった。一体何なんだこいつらは。
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俺の金は$230近くになっていたが、今はそれどころじゃない。問題はここで何が起こっているかってことだ。男を拡大してみたが、WebカメラはHDですらなく、細かいところまでは良く分からなかった。ただ一つ気になったのは、こいつだけ黒と白以外の色が無いってことだ。男の肌の色は真っ白で他の微動だにしない奴らとは明らかに異なっていた。フランス製のクソみたいなカメラの作る数ピクセルですらその違いが分かるほどだ。何なんだ、こいつは。タイマーがのベットの締め切りを告げるブザーを鳴らしだした。
クソが、奇数に$20だ
俺はまた黒白男に注意を向けてをズームした。動じないカードプレイヤーを目の前で睨んだ後、部屋の壁まで歩いていった。それでそいつは壁を舐め始めた。冗談じゃないぞ。そいつは壁の前に立って、壁を舐め始めたんだ。そいつの舌はその解像度の低いカメラからでも分かるぐらい異様に長く見えた。そいつの肌とのコントラストのせいかもしれないが舌はどす黒く、壁は明るい赤の壁紙で、そいつの色味のおかしさを強調させていた。おれが「いったい何がそこで起こってるんだ?」って書こうとしたのをディーラーの少女が中断させた。まるで、the Twilight Zoneに出てくるフランスのカジノの雰囲気を俺がぶち壊そうとしたのを知っていたかのようだった。
「5!」少女は叫んだ。
驚いて、思わずのけ反った。また勝ちだ、だが今はそれどころじゃない。今、問題なのはこの黒白男が壁を舐め続けてるってことだ。
なあ、今俺がどれだけ変な状況に居るか分かるか?真っ暗な部屋で午前2時、一人椅子に座って何となく始めたインターネットカジノで、ディーラー以外誰も動いていないことに気付いたらどうする?しかもやっと動き始めた黒白男は動かないやつを睨んで、それから壁を舐め始めた。
ロビーに居続けるための次のベットの時間がやってきた。
奇数に$100。
男が壁を舐めるのを止めて動き出した。もう一つ向こうのテーブルのところまで歩いて、ディーラーの肩に手を置いた。そして何かをささやいた。唇の動きとそのかすかな音を頼りにすれば「Tuaに言え」と言ったように見えたが定かじゃない。そしてディーラーは振り返った。そいつが少女と黒白男に続いて身動きをした3人目になった。
「1!」少女が叫んだ。俺がそれを見ていないことに気付いているみたいだった。つまり俺の注意を引こうとしたように聞こえた。また勝ちだ。だから何だっていうんだ。
ディーラーは顔にこの世の終わりみたいな恐怖を顔に浮かべたまま黒白男を見つめている。
奇数に$200。
3人目の男はそのまま30秒ぐらい固まったままだった。俺はチャット欄で「おい、そこで何が起こってるんだ?」と書いたが少女は何も反応をしなかった。こいつがただの飾りなのか、それとも向こうに見えていて無視しているのか、俺にはわからなかった。
「11!」
どういうわけか、俺は勝ち続けていた。それはいい、しかしそれよりも今ここで何が起こっているかだ。
奇数に$200
男の隣で固まっていたディーラーが震え始めた。そして「ノン」か何かつぶやいたあと倒れた。黒白男は微動だにしなかった。ただ倒れた男を見下ろしているだけだ。そして部屋の居る誰も動こうとはしない、あの少女すらも。俺はコンピューターの前で「ちくしょう、なんてことだ!」と叫んだ。その瞬間カメラの向こうの部屋の全員が、男も女も全員がこちらをまっすぐ見た。断言できる、本当に一人一人がこちらを見ていた。やつらは体を動かさずに、こちらを見据えていたが、少女はただおびえているように見えた。するとテーブルの横にある何かのボタンを素早く押すと黒白男は私の居るテーブルに向って歩き始めた。チャット欄に初めて俺が書いたのではない文字が表示された。
逃げろ
すでに背中から嫌な汗が流れていたが、この瞬間ほど背筋は凍ってはいなかった。こいつらがモニターを通り抜けてこちらにやってくるなんて馬鹿な話は無い。それでもずっと続いている奇妙な状況は俺の神経を逆なでしていた。
男はウェブカメラに近づき、こちらを睨んでいる。ここで一つ疑いが晴れた、こいつの色は本当に白と黒だけで出来ている。何がどうなっているのかは知らないが、何かのバグか、カメラのせいか、編集なのか。とにかくこいつは映像の中で色が抜け落ちていた。後ろの奴らはまだ俺の方を睨んだままだった。
男の目はこれ以上なく見開かれて、こちらを観察しているように見えた。恐ろしくなってきたが、このゲームを終わる事は出来ない。男はさらにカメラに近づいて、映っているのはほとんど目だけになった。こちらを見ている?そんな馬鹿なことがあってたまるか。だがこの目は、残酷で、恐ろしく凍った目が黒と白だけで映っていた。やつがカメラから離れた時、俺は自分の体が固まるのを感じた。カジノにいた30人以上が男のすぐ背後に並んでこちらを見ていたからだ。目は大きく見開かれている。そして微動だにしない。どうやってこいつらが一瞬でここまで移動したのか、まったく分からない。画面いっぱいに男の目が映っていたのはほんの数秒だったはずだ。
そこにあの少女が並んでいないことに気付いた。彼女はテーブルの前で硬直していた。男はそれに目をやり、そしてもう一度こちらを振り返った。少女がこの部屋のモノではなくなったことを見せつけるようにだ。男は少女の背後まで歩いていき、そこで止まった。震えながら少女は「い、、、い、いち、1」とつぶやいた。明らかに背後の男を怖がっている。男は少女の方に腕を載せようとしていた。俺は叫んでいた。画面に向かって
「何やってるんだてめえ!」そう叫んだ。
男は笑い始めて、こちらを見ながら少女の体にに腕を回していった。これがどれほど頭がおかしくなりそうな体験だったか、どうすれば伝わるのか分からない。
少女はこちらを見た。こっちが向こうを見ているのを知っているようだった。そして何かを悟ったような顔をしていた。
さいごに消え入りそうな力でこう言った:
「ありがとう...きょうは一緒に遊んでくれてありがとう...そしてあなたの数字を忘れないで!」
そう言うと男の腕が何か別の生き物のように動いて彼女の首に巻き付いた。その瞬間映像は途切れた。
画面は元の陳腐な茶色のページを映している。俺のアカウントには$520が残された。
俺はしばらく座ったまま固まっていた。何か悪い夢を見たに違いない。現実の訳が無い。黒白男が誰も動かないカジノを歩き回って奇妙なことをして、カメラを通してこちらを見ていた?ああ、これが現実だと思えるならまったく俺はどうにかなっちまったんだろう。だが本当に起った。やっとの思いでベッドに倒れ込んでこの出来事を忘れるのに苦労しながら眠りについた。昨日の朝目が覚めてカジノはまだ頭の中に残ったままだった。もう一度そのロビーに入ろうと試みた。
クソが。あれは何かのいたずらだったに違いない。俺はそれを調べるために丸一日かけた。何が分かったかって?クソの役にも立たない事だけだった。それでも色々調べたさ、Rekeshにも話したが、あいつは笑い話だと思ったらしい。全部一から百まで話して、それでもあいつは納得したようには見えなかった。その話の最後、あの言葉を俺は思い出していた。少女は最後にこう言った。
そしてあなたの数字を忘れないで!
ディーラーが最後に言う言葉にしては普通じゃない。俺は書き留めていたノートを見直した。ほとんどはもっと前のメモだったがその夜の部分はこうだ
16 12 5 1 19 5 8 5 12 16 13 5
それから最後の3つの数字を書き漏らしていることを思い出した。画面に集中しすぎていた。何時間か考えて、この数字を睨んだが何も浮かばなかった。もういい、忘れよう。やっぱりクソガキのいたずらだったに違いない。ああ、まてよPayPalアカウントに払い戻しをすることだけは覚えておこう。それで終わりだ、俺は元の日常に戻った。
それも今朝までのことだった。正直言うとフランスのオンラインカジノの馬鹿げた夜のことはもう忘れていた。今日は二つの講義があって、2番目の講義では講師が暗号パズルを解読しろって内容だった。ある男がついに解読に成功して、前に出てきて順を追って説明させていたが、正直くだらねえ話だと聞いていた。 説明の中で使ったあらゆる原則をご高説いただいたがまあ正直聞いちゃいなかった。ただ一つ、数字と対応する文字について言及した部分を除いては。
閃いて家に戻ってからノートを開いた。
16 は P
12 は L
5 は E
1 は A
19 は S
5 は E
Please
8 は H
5 は E
12 は L
16 は P
Help
13 は M
5 は E
Me
Please help me(訳注:私を助けて) 少女はホラー映画のようなカジノに閉じ込められて、助けを求めていた。俺はそれに気づくのには馬鹿すぎた。ただのいたずらか?偶然の一致?まさか。
何をしたらいいか分からない。もう一度Webサイトにログインしたが、何もかも通常通りで「Hata」ロビーは影も形も無かった。俺には何もできない。
これを書いて、何が起こったのか考えるのに何時間か費やした。考えられるありとあらゆるフレーズをGoogleに費やしたが何も見つからなかった。
それから最後の3つの番号を思いだした。
1, 11, そして 1。
A, K, そして Aだ。
俺の名前の最初の3文字。もしあのままゲームが続いていたらあと2文字だった。膝に力が入らない。最低の気分だ。
偶然じゃない。
さらに悪いことに、あいつらは俺の名前を知っている。
回答者:匿名