ヤクルトの奥川恭伸投手(23=星稜)が先発して7回を2失点(自責0)と好投した。投球内容には前向きなものと、課題が残る。安定した制球力を誇る右腕の今後について、詳しく触れたい。
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100球でマウンドを降りたが、随所に力強いボールもあり、低めの真っすぐで栗山から空振り三振を奪うなど、パワーは感じた。5安打されたが、4三振を奪い、ここぞの場面ではしっかりバッターを押し込んでいた印象だ。
最速は151キロ。試合開始直後の初球で150キロを計測し、立ち上がりから力を込めているように見えた。常に奥川のピッチングを現地で見ていないため、自信を持って言えないが、わずかに腕が下がったように感じた。
私の受けた感想が仮に正しければ、10センチいくかいかないか。ほんのわずかに腕が下がったように映った。それによって、やや横振りの投げ方になっているのではと感じた。直感的にそう見えたため、その後の2四球、2死球につながる課題を感じた。
左打者に対しては真っすぐとフォークのコンビネーションで安定したピッチングだった。冒頭で触れたように、初回栗山を低め151キロの真っすぐで空振り三振に打ち取っている。あそこまで低めにコントロールして、なおかつ打者の手元で強さもあった。素晴らしいボールに感じた。
一方で、右打者にはスライダーを勝負球として組み立てていたが、そのスライダーの制球に苦しんでいた。外に曲がり過ぎたり、内角に抜けてしまったり。左バッターの足元にひっかけて死球を与えたり、右打者の内角に抜けて同じく死球にしたり、これまでの奥川とはちょっと異なる印象を受けた。
奥川と言えば、勝負どころでスライダーをきっちりコントロールして、ゴロに仕留める、もしくは空振りを奪うピッチングだった。この日は、大きく曲がるスライダーをなかなか操れていないようだった。右打者の外角に、ストライクゾーンからボールゾーンのギリギリに決まったボールがあった。そこではしっかり空振りを奪えていたが、その確率が低かった。
そこで私が思い浮かぶのが、やや腕が下がったように感じたフォームの変化だった。横振りになっていたとしたら、それが左右のコントロールのバラツキの要因になったのではないか。これまでの奥川のスライダーよりも、大きく曲がるスライダーに見えた。
となると、より勝負球として使うには、曲がり始めるポイント、そしてストライクゾーンからボールゾーンのギリギリへの変化をきっちり操れないと、1軍の打者はボールなら見逃し、甘く入れば仕留められてしまう。当然、奥川もそれは投げながら感じているだろうし、そこを克服するために、勝負球として今のスライダーをものにしようと取り組んでいると感じた。
もう1点、許した4盗塁は多すぎる。初回、無死一塁から右打者の2球目スライダーで走られている。2回も走者を置いて左打者の3球目の落ちるボール(おそらくフォーク)で走られた。3個目、4個目は、いずれも走者を置いた次打者の初球に走られている。
クイックのタイムは1秒3(基準タイムの目安は1・25)と遅い。いずれの盗塁前もけん制を入れて走者をケアはしていたが、それでこれだけ簡単に盗塁を許してしまうことは気がかりだった。特に、初回から3回まで3イニング連続で走られている。総合力の質で高い評価を受けてきた奥川らしからぬ場面だった。
奥川が備える投手としてのクオリティーは非常に高く、真っすぐの球威、変化球の質、フィールディングを含め、エースとしてチームをけん引できる能力を持っている。ここ最近は故障やコンディション不良などが続き、シーズンを通して活躍できないでいる。
プロ5年目を迎え、体もできあがり、ここから経験を重ねながらチームに貢献する時期に入ろうとしている。変化球の制球や盗塁を簡単に許してしまうことなど、課題はある。それでも、先発投手としての大原則となる真っすぐの威力はある。1つずつ、確実に突き詰めて取り組みながら、進んでほしい。(日刊スポーツ評論家)