携帯・5
「あの…」
「え?」

「それでもこっちの携帯…ダメですか?」

跡部は青い携帯を再び徳川に差し出した。
よく似た色の瞳がじっと徳川を見つめ、徳川は溜息を吐いた。


「…連絡しなくてもいいなら」

徳川はやっと自分の携帯を取り出し、通信の用意を始めた。

跡部は本当に嬉しそうに笑い、「はい!」と頷いた。



****

「ねえ、鬼」
「なんだ」
「徳川…完全に跡部くんにハマってるよね(笑)」

「うむ…。まあ、それもそうだが、アイツ…意外と不器用だな」
「うん?」

「余計な気を回すより先に、今みたいに『連絡しなくていいならいいぞ』と一言言やぁ済む事だろうに」
「そうだよね。きっと、跡部くんの事が可愛いすぎて、頭のネジが飛んじゃってんじゃないの(笑)」

「跡部も大したもんだ(苦笑)」
「それは嫌味じゃないよね」
「当たり前だ。ワシだってアイツの事は可愛いぞ」
「そりゃ、あれだけ懐かれればねえ。でも、元々は鬼が跡部くんをあんなに可愛くしたんだよ」
「そうか?」
「うん」


***

「…あ。」

何かに気づいたらしい跡部が何やら携帯を操作している。

「どうした。通信が失敗したのか?」
「いえ、ちょっとグループ分けを…」
「グループ分け?」
「ええ、普通に五十音順だと徳川さんだけ違うとこ入るんで…」

答えながら跡部は操作を続ける。
確かに入江と鬼はア行、徳川はタ行だが。

「できた」

3人がチラリと覗き見ると、自分達3人の名前が、新しく作ったらしい「先輩」というグループに入っていた。


一人満足げな跡部に3人は微笑をさそわれた。


(6に続く)
- 124 -
[*前へ] [#次へ]
戻る
リゼ