携帯・4
徳川は言いにくそうに…だが、今度こそ本当の理由を話し出した。
「…俺は、普段から電話もメールもロクにしない。しても、家族や部内の連絡くらいだ」
「? はい」
「だが、その青い携帯は割と頻繁に連絡を取り合うヤツが登録されてるようだから…それなのに、もしそこに登録されている俺が一度も連絡をしなかったら…その…お前の事だから、また変に気にして泣くんじゃないかと…思った」
「「………。」」
「…なんだ?」
かなり決死の思いで言った筈が、目の前の3人は何やらポカーンとした顔をしていて、徳川の眉間に皺が寄った。
「俺は何かおかしな事を言ったのか?」
「い、いえ…あの…
「ワシもメールなぞせんぞ?」
跡部の声と鬼の声が被った。
「え?;」
意外そうな声をあげたのは跡部ではなく徳川の方だった。
「ワシがちまちまとメールを打つように見えるのか、徳川」
「い、いえ;」
「跡部は別に大して期待しとらんだろう。なあ?」
「はい。勿論…連絡を頂ければものすごく嬉しいですけど、でも無くてもいいんです。アドレス交換してくれたって事は、俺が連絡しても構わないって事でしょうから、それだけでも嬉しいです///」
跡部ははにかむように笑ってみせた。
「そう…なのか…」
今度は徳川の方ががっくりと力が抜けていた。
「徳川、気にしすぎ(笑) それに、そんなにまで気にするならメールしてあげれば済むことじゃない」
「そうは言いますが、別に打つ用事がないです」
「そんなの、『元気か?』って1行打てば、きっと跡部くんの方が大喜びしていっぱい打ち返してくるよ。ねえ?」
「ワシも同感だ」
先輩達の言葉は妙に説得力があった。
(5に続く)
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