携帯・3
「徳川、わざわざ注文をつけるなら、理由くらい言ってやれ。それじゃ、跡部も納得いかんだろう」
「跡部くんも言いなりにならずに訊いていいんだよ?」
鬼の口調は非難混じりで、入江の徳川に向ける表情もキツかった。
「じゃあ伺いますけど…何故ダメなんですか?」
「簡単だ。俺はさほど親しいわけじゃないだろう。そっちに登録したところで連絡しあうとも思えない」
いつも通りの冷たいくらいの無表情に、跡部は唇を噛みギュッと拳を握る。
だが跡部はもう一度重ねた。
「徳川さんにとっての俺はそうなのかもしれませんけど、でも俺にとっての徳川さんは鬼先輩や入江さんと同じくらいお世話になってる大事な人ですから、同じ携帯に登録したいんです。どうしてもダメなんですか?」
揺れる青い瞳に正面から見つめられて、徳川は目を逸らした。
「…やれやれ」
入江は口にしたティーカップを受け皿に戻し、溜息を吐いた。
「…徳川。何考えてるんだか知らないけど、跡部くんは優しく嘘つかれるより、はっきり冷たい事言われた方がマシなんじゃないかと思うよ」
視線を戻すと跡部はまだ真っ直ぐ徳川を見ていた。
「……。…俺は、」
根負けして、徳川が再び口を開いた。
(4に続く)
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