経済・社会

2024.03.11 16:00

ロシアと中国の「脱米ドル」加速、BRICSにデジタル通貨導入へ

安井克至
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Photo by Contributor/Getty Images

ビットコインの価格は3月8日に史上最高値を更新し、7万ドルを突破した。これにより、イーサリアムやXRPなどを含む暗号資産市場全体の時価総額も上昇している。

そんな中、中国とロシアが手を組み、デジタル通貨とブロックチェーンに基づく独自の決済システムの構築に乗り出した。著名アナリストの1人は、この動きが米国の覇権に核兵器よりも重大な危機をもたらすと警告した。

ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領補佐官は3月5日のタス通信のインタビューで、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国からなるBRICS(ブリックス)が「独立した決済システム」を構築することが将来の重要な目標だと語った。この決済システムは、デジタル技術やブロックチェーンといった最先端のツールに基づくものになるという。

「ここで重要なのは政府や国民、企業にとって便利で、費用対効果が高く、政治色のないシステムを構築することだ」とウシャコフ補佐官は述べている。

BRICS諸国はここ数年「脱米ドル」のための方法を模索してきたが、この流れは米国がウクライナに侵攻後のロシアに制裁を課して以降に加速した。

2022年にロシアは世界の主要な決済ネットワークであるSWIFT(スウィフト)から追放されたが、その際にロシアの中央銀行の元副議長のセルゲイ・アレクサシェンコは「この措置は、大惨事につながる」と述べていた。

南アフリカのアニル・スークラルBRICS大使は昨年「ドルが世界の中心だった時代は終わった。それが現実だ。私たちは今、多極的な世界貿易システムを持っている」と述べていた。

一方、中国もビットコインや暗号資産に触発された「デジタル版の人民元」を徐々に導入しており、国内の資金の流れを管理すると同時に、世界貿易で米ドルに対抗しようとしている。

香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)の昨年10月の記事によると、中国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の取引件数は昨年7月までに9億5000万を突破し、6月末時点の累積発行額は1兆8000億元(約37兆円)と、2022年年8月の1000億元(約2兆円)から爆発的に増加したという。

ギリシャの元財務大臣でエコノミストのヤニス・バルファキスは先日、オーストラリア研究所で開催されたイベントで「資金の流れが今後ますます中国のデジタル決済システムに移行していくとしたら、米国の覇権にとって核兵器よりも危険なことになる」と発言した。「米中の冷戦が激化している原因は、ここにあると私は考えている」と彼は述べていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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2024.03.29 16:00

建築家・石上純也が語る、アウトランダーPHEVが叶える新しい日常と非日常の関係

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都市と自然を行き来するモダンなライフスタイルに併走する、環境性能にも優れた三菱自動車のアウトランダーPHEV。存在感のあるエレガントなルックス、コンセントから給電できる利便性の高さを兼ね備えたこのクルマに、建築家の石上純也はどのような価値を見出すのか。話を聞いた。


多忙なビジネスに明け暮れる日常、そして週末は非日常の趣味の時間を楽しむ。都市を離れ、自然のアクティビティに没頭する。そんな生活をスマートなものに高めていくために、建築家・石上純也の建築作品に見られるコンセプトや哲学、そして作り上げる世界観はひとつのヒントになるかもしれない。

例えば2024年2月にオープンした中国山東省の湖上につくられた「水の美術館」は1kmほどの長大な建造物ながら、静かに、穏やかにうねる優しさを感じさせる自然のような建築。ところどころの床は水面にひたり、室内と湖面がつながる。環境と建築、すなわち自然と人工の良好な関係を模索し、ひとつの友好的なあり方を提案している。
©Arch-Exist

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三菱自動車のアウトランダーPHEVは、石上の建築作品に通じるコンセプトのSUVだ。どんな道でもスムースに走ることができる7つのドライブモードを搭載し意のままに走ることができる力強さを持ちながら、そのルックスは都会にも自然の景色にも溶け込むスマートなもの。

そんなアウトランダーPHEVについて石上は「風景のなかに自然と馴染んでいくような印象を受けました」と好意的に語る。

「都会に馴染めないほどワイルドでなく、洗練されすぎて自然のなかで浮いて見えることもない、両義性を強く感じるデザインですよね。おかれる景色をあまり選ばない。どこにおかれても孤立することのない馴染やすさを感じます。開発コンセプトである威風堂堂という言葉も似合いますが、威圧感はなく、山のようにその場で存在感を出しながら、自分を包みこんでくれるようなおおらかさを持ってそこにある、そんな印象を受けました」(石上)

冒頭で紹介した「水の美術館」に限らず、「House&Restaurant」など自然環境と人工的な建築の調和においては世界的に評価を受けている石上らしい観点から、アウトランダーPHEVを都市や自然に調和すると評価。

「外部となぜ調和できるのかというと、アウトランダーPHEVのそれぞれの要素が、シームレスに連続していることが一つの価値観を表しているからです。たとえばフロントのライトも均整がとれて威圧感が無く、かつ後方に向けてボディーのラインと繋がっていくようデザインされている。同様に、全体が一体感を持つようデザインされていて、それが最終的にはおかれる環境との調和を目指す、非常に現代的な価値観と繋がっているように感じます」(石上)

都市生活と自然、それはすなわちビジネスパーソンにとっての日常と非日常でもある。石上にとって日常、非日常はどのような意味を持つのかと尋ねると、オンやオフ、日常と非日常を分けて考えることはないという。

「いわゆる日常といいますが、毎日の自宅での生活でも、仕事をするオフィスでも、毎日が昨日と違う今日ですよね。日常とひとくくりで考えがちですが、実は日常というのは多元的な状況を含んでいる。日常のなかで新しいことをすれば違う日常になり、いつもと違うところにいけばそれもまた新しい日常、そう考えることのほうがぼくにはリアリティがあるんです」(石上)

平日が同じことの繰り返しのようでも、実はそこには昨日と違う今日があることに着目することで、今日がひときわフレッシュに感じられるという捉え方。では、都会を離れて自然のなかで釣りをしたりアクティビティを楽しむ休日、これは非日常ではないのだろうか。

「人工的な都市も、都市を離れた自然も、視点のスケールを変えて広く捉えれば一つの大きな環境をなしているもの。大きな違いは実はないと考えています。そして、いつもと違う日常には、いつも触れることのない新鮮な出会いがあります。それは非日常のなかの特別な体験ではなく、日常を過ごす自分が新たなものと繋がる体験です。そう考えることで、新しい自分と出会うことができるのではないでしょうか」(石上)

オフィスで働く自分も、自然のなかで趣味の時間を過ごす自分もひとつの人格。今日は日常、明日は非日常だと両者を切り離すことなく、すべての体験をひとりの自分が取り入れる。それこそが暮らしの中での体験価値をワンランク上のものにすることなのかもしれない。

「そんな日常を過ごすのには、都会でも自然でもおかれた環境に馴染むアウトランダーPHEVというのは良い車なのだと思います。さまざまな場に馴染むことができるから、自分も自然体で新鮮な体験ができる。アウトランダーPHEVは、100V AC電源(1500W)コンセントが装備され、バッテリーからの給電で電気も自由に使えて、例えば、コーヒーも淹れて車内でくつろげる。それはまるで自分の部屋で移動しているような感覚で、車のあり方自体をしなやかに拡張していくような感じがしました」(石上)


生活に必要な電気があることで、場が変わっても利便性の高い快適な状態が続く。またPHEVというパワートレインについても石上は「さまざまな動力の選択肢がある、歴史が移り変わるいまという時代に溶け込んでいますよね。EV走行とエンジン駆動が自動で、自然に切り替わることもいまの時代をよく捉えている」と、独特の観点から評価する。もちろん、アウトランダーPHEVの地球環境に優しい環境性能の高さもまた、現代が自動車に求める重要な要素だ。

周辺の状況や、その土地の歴史の文脈に溶け込みながら共存し、価値を放つことで評価されているのが石上の建築作品。そんな石上にアウトランダーPHEVと自身の共通点を尋ねると、石上は街と自然をあまり区別しないでいられるところに共感できると答えた。

「用途や場所を限定することなく、その都度おかれる状況や環境と共存していく存在。そんなアウトランダーPHEVのあり方には、いつも僕が考えていることと通じるところがあります」(石上)

日常と非日常を切り離すのではなく、日常の延長とする石上の考え方にも通じる、アウトランダーPHEV。都市生活とも、また自然のなかでの遊びにおいても、アウトランダーPHEVを使った友好関係を見つけ出した先に、スマートで先進的なライフスタイルがあるのかもしれない。

MITSUBISHI OUTLANDER PHEV P

洗練された力強さと上質の空間を追求。7つのドライブモードセレクトでさまざまな路面状況やドライバーの意思にあわせた運転が可能。ミリ単位で設計された3列目シートや内装のあしらいなどインテリアにもこだわっている。また災害や停電時には移動可能な非常用電源として活用することも視野に入れた仕様は、アウトドアシーンでの電源供給にも役立つ。7人乗りのグレード「P」のメーカー希望小売価格は6,023,600円(税込み)から。


MITSUBISHI OUTLANDER PHEV

Promoted by MITSUBISHI MOTORS│photographs by Kizuku Yoshida│hair & make-up by TOYO│text & edited by Tsuzumi Aoyama

政治

2023.09.19 08:00

BRICS拡大は中国の勝利と言えるのか?

遠藤宗生
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南アフリカ・ヨハネスブルグで2023年8月23日、新興5カ国(BRICS)首脳会議に出席した(左から)ブラジルのルラ大統領、中国の習近平国家主席、南アのラマポーザ大統領、インドのモディ首相、ロシアのラブロフ外相(BRICS / Handout/Anadolu Agency via Getty Images)

西側の対抗勢力とも目されるブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)は、南ア・ヨハネスブルクで先月開催した首脳会議(サミット)で、10年以上ぶりに6カ国の新規加盟を決めた。加盟が決まったアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)は、国情がそれぞれ全く異なる新興経済国だが、来年1月1日のBRICS加盟によって大きな影響力を及ぼす共通点が1つある。それは、豊富なエネルギー資源だ。

一見すると今回の動きは、BRICSが「エネルギーの支配」を目指して積極的に打って出たように思える。新加盟国はBRICSのエネルギー生産量を押し上げるだけでなく、その多様性を大きく広げるだろう。

サウジアラビアは中国にとって最大の石油供給国であり、輸出量は今年8月時点で日量190万バレルに上る。BRICS加盟は、すでに広範な両国の経済関係を強固にするだけでなく、サウジアラビアに対する中国の影響力が増していることを意味する。中国が米国を出し抜いてサウジ・イランの関係正常化を仲介したのは記憶に新しい。

イランは中国の長年の戦略的パートナーであり、両国は安全保障と経済の両面で強固な関係を築いてきた。中国はこの10年にわたりイラン最大の貿易相手国であり、石油・ガス開発に注力している。石油輸出国機構(OPEC)創設メンバーのイランは、世界第2位の天然ガス資源と同4位の石油埋蔵量を誇る。

中国の仲立ちによる関係正常化に続くサウジアラビアの加盟は、中国政府が思い描く中東の安全保障体制の実現に大きく貢献する。UAEはイスラエル、インド、米国と共に経済協力枠組み「I2U2」を構成し、中国の野心を抑えつつインドに炭化水素を供給しているが、今回のBRICS加盟によってI2U2の先行きにも影響が出かねない。

新加盟国の半数は旧来の化石燃料の主要産出国だが、残りの半数は未来の燃料、特にあらゆるグリーンテクノロジーに不可欠なレアアース(希土類元素)開発に取り組んでいる。エジプトの石油生産量はサウジアラビアと比べて微々たるものだが、沖合のゾフル天然ガス田は地中海で発見された中では最大のLNG埋蔵地だ。また、砂漠での大規模太陽光発電の可能性、莫大なレアアース埋蔵量、それらの開発を担える人的資本も有している。
次ページ > BRICS内部には早くも分裂や異論が生じている

翻訳・編集=荻原藤緒

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アジア

2024.03.11 08:30

中国で「個人消費」が低迷、先行き不透明で貯蓄志向強く

安井克至
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humphery / Shutterstock.com

中国の不動産危機が盛んに報じられているが、より根本的で、おそらくより重大な問題は個人消費の低迷だ。中国政府は経済の重点を大規模なインフラ投資や不動産開発、輸出から消費へと移すと以前から言ってきた。国際通貨基金(IMF)も長い間、まさにそのような経済の転換を推奨してきた。

だが、中国政府は口先ばかりで、そのような移行を図ることはなかった。重点を置いてきた取り組みが、見栄えのいい目覚ましい成長率を生み出していたためであることは間違いない。そして今、不動産危機や輸出の低迷、地方政府の債務超過に直面し、政府は国民に消費を促そうと必死になっている。問題は、政府が望むほどに人々は財布の紐を緩める気はなさそうなことだ。

中央銀行である中国人民銀行(PBOC)による最近の調査では、消費者のこうした憂いが示されている。消費マインドを示す指数は49.7と、新型コロナウイルス感染症のパンデミック前の56から大幅に低下した。調査時期に全世帯の15%が収入減に見舞われており、さらに多くの世帯が将来の収入減を予想していることが明らかになった。雇用の見通しについては、約43%が仕事の確保に不安があると回答。不動産価格に対する見方を示す指数も、パンデミック前から15%近く悲観的なものになった。一方、米ニューヨーク連銀が行った調査では、不動産価値がすぐに上がると予想している中国の世帯はわずか15%だ。

こうした状況を踏まえると、PBOCの調査で世帯の約60%が消費より貯蓄を優先し、消費を優先すると回答したのは25%にとどまったことは驚くには当たらない。中国人は確かに貯蓄好きとして知られているが、これらの数字は3~5年前からの劇的な変化を示している。

貯蓄志向は銀行預金残高の増加にも表れている。新規貯蓄は昨年初めにはすでに急増していたが、今年に入って加速している。特に、利回りのいい長期の定期預金を好む傾向が見られる。消費より貯蓄に金を回す動きは、昨年住宅ローンを返済するスピードが借り入れを上回り、住宅ローンの残高が実際に減少したという事実からも明白だ。こうした傾向はPBOCが金利を引き下げても続いている。中国のデフレは根強く、名目金利が引き下げられてもなお、人々は以前にも増して消費より貯蓄の方に魅力を感じるため、金利引き下げの効果が限定的であることは驚きではない。
次ページ > 影響は今後も続く、政府は不動産危機に取り組み始めたばかり

翻訳=溝口慈子

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