Lenovo Legion Tab Y700 2023 (拯救者平板 Y700 2023) を購入しました。
高性能8.8インチタブレット
Lenovo Legion Tab Y700 2023はSnapdragon 8+ Gen 1を搭載しており、今では絶滅危惧種となった8インチタブレットの中でも最高峰の性能を持っています。
失敗作だったSamsung製の8 Gen 1とは異なりTSMC製である8+ Gen 1は性能も電力効率も改善されており、原神を最高画質かつ最新エリア フォンテーヌでプレイしても平均58.7FPSとスムーズです。
大好評だった2022年モデルから全体的にスペックアップしつつも、重さは16g軽量化されています。
Lenovo Legion Tab Y700 2023は中国限定販売ですが、NEC LAVIE Tab 9QHD1として日本でも発売されています。
このレビューはZUI_15.0.549バージョン、12GB+256GB版で行っています。
- 8.8インチ、144Hzリフレッシュレート対応
- 高性能なSnapdragon 8+ Gen 1
- 手で覆われにくいステレオスピーカー
- 45W急速充電対応6550mAhバッテリー
- デュアルUSB Type-Cポート
- バッテリーを傷めにくいバイパス充電対応
- microSDカード対応
- 指紋認証センサーなし
- GPS非対応
- イヤホンジャックは廃止
Lenovo Legion Tab Y700 TB320FC | |
---|---|
OS | Android 13 |
RAM | 12GB / 16GB LPDDR5X |
ストレージ | 256GB / 512GB UFS 3.1 microSDカード対応 |
プロセッサ | Qualcomm Snapdragon 8+ Gen 1 |
ディスプレイ | 8.8インチ 2560 × 1600 アスペクト比 16:10 144Hz LCD |
サイズ | 208.94 x 129.46 x 7.6 mm |
重さ | 350g (実測350.8g) |
SIM | — |
メインカメラ | 13MP + 2MP |
フロントカメラ | 8MP |
バッテリー | 6550mAh |
USB端子 | 長辺のUSB Type-C (USB 3.1 Gen 2、映像出力対応) 短辺のUSB Type-C (USB 2.0) |
目次
説明書、充電ケーブル、充電器などが付属しています。
保護フィルムは貼り付けられていません。
旧バージョンのLenovo Legion Tab Y700の保護フィルムも一応使えるものの、サイズが微妙に違うのでインカメラの位置がずれます。
充電器は11V / 6.2A = 68.2W対応というヘンテコなタイプです。
ディスプレイ:大画面と操作性を両立
Lenovo Legion Tab Y700 2023は8.8インチ 2560 × 1600解像度のディスプレイを搭載しています。
アスペクト比は16:10で、大画面でありつつもゲームなどの操作がしやすい程度のサイズ感に収まっています。
少年ジャンプ+などのマンガアプリでは見開き表示もできます。
左右に余白がでます。
10インチタブレットと比べると一回り以上小さいです。
明るさ自動調整オンでの全白HDR動画再生時に輝度をLX-1336Bで計測すると、最大421nitsに達しました。
屋内向きです。
2022年に引き続きWi-Fiモデルなので屋内使用だけを想定した設計なのだと思いますが、後継モデルではモバイルデータ対応かつもっと明るいパネルを搭載して外でも使いやすいようにしてもらいたいところです。
中国ではY700 2023と共に有線モバイルルーターを発売していますし、需要があることはLenovoも分かっていると思うのですが…。
明るさの度合いを示す単位で、高いほど明るいという意味です。
屋内では400~500nits程度、屋外では800~1000nits程度でないと見にくいとされています。
ちなみに、明るさの自動調整をオンにしないと最大値が制限される機種が多いです。
リフレッシュレートは144Hz対応で、120Hzにもできます。
設定で144Hzや120Hzに変えれば固定できる…のですが、非対応ゲームでも固定されたままになるので基本的には自動のままにしておいたほうが良さそうです。
タッチサンプリングレートをTouch Sample Rate Testerで計測すると、シングルタッチ・マルチタッチともに平均240Hz程度でした。
ゲームモードを有効化すると何故か140Hzになり入力イベント呼び出しレートのほうが60→140Hzへと上がります。
WALT Latency Timerで計測したタッチ遅延は14.1ms、画面描画遅延は28.4msで合計42.5msでした。
画面をタッチしたときに反応してくれるまでの時間です。
この数値が小さいほど、素早く反応するということです。
ゲーミングスマホでは25msほど、通常のスマホでは30~40ms前半が一般的です。
Widevine L1で、Amazonプライムビデオ (ベータ版) などでHD画質でのストリーミング再生ができます。
指紋認証センサーは搭載しておらず、顔認証にのみ対応しています。
ロックなしにしたい場合は開発者向けオプションで有効化できます。
背面:指紋が付きにくい
背面はメタリックで、指紋汚れなどが付きにくいです。
カメラは若干出っ張っており、机の上に置いた時に少しガタガタとします。
ゲーミングタブレットなのですしもっと薄いおまけカメラで良いと思うのですが、付けておかないと一般用途に使いたい人からは不満が出るのでしょうね…。
重さは350.8gです。
スピーカー:音量が大きく手で塞がれにくい
Lenovo Legion Tab Y700 2023はステレオスピーカー搭載です。
左右対称で、横持ちしたときに手で覆われにくい場所にスピーカーがあるので音が小さくなってしまうことがありません。
音量は1段階でも十分なレベルで大きく、特にボーカルが聞こえやすいです。
低音は若干こもった感じに聞こえることがあるものの、全体的にはクリアで8インチタブレットの中では格別です。
Cirrus Logic CS35L45アンプを搭載しています。
Dolby Atmos対応で、スピーカーではオフにできません。
WALT Latency Timerでオーディオ出力遅延を計測すると36msでした。
2022年モデルの初期のほうのファームウェアでの計測だと77.9msだったので、大きく改善されています。
BluetoothではLDACのほかAAC / aptX / aptX HD / aptX Adaptive / aptX TWS+などにも対応しています。
ポート:デュアル対応でバイパス充電も可
Lenovo Legion Tab Y700 2023は45W急速充電対応です。
2つのUSB Type-Cポートを搭載しているため、充電しながらUSB Type-CイヤホンやUSB DACを使うこともできます。
残念ながら2022年モデルにあったイヤホンジャックは廃止されてしまいましたが、基本的にはDACをかませた方が高音質になりますし、充電の邪魔をすることもないので1ポートしかない端末に比べればまだマシです。
長辺のほうのUSB Type-CポートはUSB 3.2 Gen 1で、DisplayPort Alt Modeでの映像・音声出力にも対応しています。
microSDカードスロットもあり、容量追加が可能です。
ゲームモードからバイパス充電を有効化できます。
バッテリーを充電せず直接給電できるため、バッテリー切れの心配をなくしつつバッテリーの負荷や発熱を減らせます。
過充電を防ぐ機能やバッテリー残量を50%程度に維持して寿命を延ばす機能などが用意されています。
2022年モデルにあったスイッチは廃止されており、電源ボタンがギザギザとしています。
スイッチはFPSなどのオーバーレイ表示のオンオフにしか使われていない無駄機能だったので、廃止は妥当でしょう。
GPSは設定の説明にはソース例として書かれていますが、残念ながら非搭載です。
Wi-FiやBluetoothでの位置情報スキャンしか使えません。
どうしてもGPSを使いたければUSB GPSレシーバーを使えばなんとかなりそうですが、動作が不安定ですし精度もあまりよくありません。
性能:低い温度で性能長持ち
Lenovo Legion Tab Y700 2023は通常版Snapdragon 8+ Gen 1を搭載しており、放熱設計が良いおかげで高い性能が長続きします。
Geekbench 6ではパッケージ名偽装版 (=メーカーの不正ブーストの影響を受けない) でシングルコア1859・マルチコア4796、通常版でシングルコア1871・マルチコア4800でした。
大きな差がないため、パッケージ名判定での性能制御は行っていないようです。
Snapdragon 8 Gen 2のスマホに負けず劣らずの高いスコアです。
AnTuTuをはじめとする有名ベンチマークアプリをパッケージ名で判別して、ベンチマーク中だけスコアをよく見せかけるため熱制御を緩めたり高クロックに固定したりとチート行為をするメーカーが続出しています。
通常のアプリ使用時とは異なる挙動であるため、「ベンチマークは良いのに他のアプリの動きは大して良くない」ということが起こります。
メーカー毎にブーストの挙動が違うので、ブーストされた結果で比較しても何の意味もありません。
そのためパッケージ名を変更して一般アプリに偽装し、ブーストされていない正しいスコアを出すことが重要です。
こちらの記事で詳しく解説しています。
背景ぼかしやテキスト処理などで使われる、CPUの処理性能がどれほどあるかを数値化するベンチマークです。
普段使いの軽い作業にはシングルコア、重たいゲームなどにはマルチコアの性能が重要です。
2023年現在はシングルコアで1200、マルチコアで3000以上なら大抵快適に使えるでしょう。
ベンチマーク結果はこちらの記事にまとめています。
パッケージ名を偽装した3DMarkでのWild Life Extreme Stress Testではスコア2762→2439で、温度上昇は29℃→48℃ (19℃上昇)でバッテリー消費は11%でした。
安定度が高めです。
GPUでの発熱は大きいようで、どちらかというとCPUを使うことが多い原神のプレイ結果と比べるとバッテリー温度が高くなっています。
Wild Life ExtremeはVulkan APIを利用し、3840×2160解像度のグラフィックでGPU性能を数値化するベンチマークです。
スコアが高いほどゲームなどで滑らかな3D表示が可能で、Stability (安定度) が高いと高い性能を長時間維持できるという意味になります。
発熱とバッテリー消費とのバランスも重要で、安定度が高くて温度上昇とバッテリー消費が少ないものが理想です。
2023年現在は2000以上あれば、大抵のゲームをグラフィック設定を極端に落とすことなく快適にプレイできる傾向にあります。
あくまでもVulkan API使用時の汎用的な簡易指標でしかなく、実際のゲームの挙動は最適化や放熱性能、解像度など様々な要因で変動するため、「このスコアならだいたいこんな動きをするだろう」という推測の材料にする程度に収めてください。
ドキュメント操作など普段使いでのパフォーマンスを計測するPCMark Work 3.0 (パッケージ名偽装版) ではスコア12479でした。
ウェブの閲覧、画像・動画の編集などでの処理性能がどれほどあるかを数値化するベンチマークです。
高いほど高速な処理ができますがバッテリー消費とのバランスも重要なので、スコアが低めだからといって悪いとは限りません。
2023年現在は8000以上あれば十分です。
UFS 3.1ストレージ、LPDDR5Xメモリを搭載しています。
UFS 3.1ストレージ搭載機種としてはかなり高速なほうです。
シーケンシャルリード・ライトは大きなファイルのコピー時や動画エンコード・デコード時などに影響する読み書き速度です。
ランダムリード・ライトは細かなファイルの読み書き速度で、アプリ・ゲーム使用時はこちらの速度が重要です。
原神を最新エリアであるフォンテーヌ (水中→陸上) にてパフォーマンスモード・最高画質・60FPS設定でプレイしてWeTest PerfDogで計測すると、平均58.7FPSで1FPSあたり127.89mWの消費電力でした。
バッテリー温度は最大39℃程度まで上昇しました。
8+ Gen 1にしては消費電力が大きめではあるものの、発熱はそれほど大きくありません。
パフォーマンスモードは性能が過剰だと思うので、バランスモードのままのほうが普段使いしやすそうです。
他社の8 Gen 1機種だともっと負荷が低いエリアでさえ同じ消費電力でせいぜい50FPS程度しか出せていなかったので、TSMC製になったことで性能と電力のバランスが大きく改善されていることが分かります。
1FPSあたりの消費電力が低いほうが電力効率が良いと言えます。
電力効率が良いとバッテリー消費が少なく、悪いと消費が激しくなってしまいます。
ゲームで電力効率が悪いスマホは他のアプリでもバッテリー消費が大きい傾向にあるため、バッテリーの減りが早いと感じることが多いです。
平均FPS (フレームレート) は、どれほど滑らかな表示を維持できているかを示し、高いほど良いです。
(細かく言うと平均FPSが高く、なおかつ「ジャンク」というちらつきが少ないほど体感の滑らかさが良くなります)
崩壊:スターレイルを最高画質・仙舟「羅浮」で15分プレイすると平均53.7FPSでした。
バッテリー温度が50℃を超えたあたりでスロットリングが始まり、GPU温度は90℃から一気に70℃まで下がりました。
3DMarkで傾向が分かったようにGPU使用時の消費電力・発熱が大きめで、GPUを使いやすいスターレイルだと原神と違ってバッテリー温度の上昇が早いです。
制限された状態だとバッテリー温度は42℃ほどで推移しています。
OS:日本語化可能
初期設定では日本語を選べないものの、設定のZUIバージョンのところを7回連打してDeveloper optionsを出してUSB debuggingを有効にした上でPCでadb shell settings put system system_locales ja-JP
を実行して再起動することで日本語設定にできます。
設定や他のアプリを含め、ほぼすべてがちゃんとした日本語になります。
【2024/04/20追記】バージョン15.0.774ではどうやら微妙に対策されたようでadb shell settings put system system_locales ja-JPzhzh
を実行しないといけないようです。
また、APKMirrorなどでPlayストアのAPKをダウンロードしてインストールしたあと、アプリ→右上のドット→Google Basic Servicesを有効化するだけでPlayストアを使えます。(インストールしてから有効化する順番でないとうまく動かないことがあるようです)
個人用にカスタマイズ→フォント→Mine→原生字体を選ぶと日本語フォントになります。
ゲームモードで使える機能は他のゲーミングスマホと比べると少なめで、モードは省電力とバランス、パフォーマンスモードの3つから選ぶだけでカスタマイズはできません。
フレームレートや使用中のCPU・GPUの最大クロックなどが分かるフローティング表示もあります。
どちらかというと使用率を出してくれたほうが役に立つと思いますが…。
Peripheral Mode (周辺機器モード) を使うと、元々コントローラーに対応していないアプリでもコントローラー、キーボードやマウスを使った操作ができるようになります。
制限はなく、原神など好きなアプリで有効化できます。
ゲームなどのフローティング表示も可能です。
原神とスターレイルを同時にダウンロードさせようとしたら十数分後にはクラッシュしてしまいました…。
ステータスバー中央にある3つのドットは「全画面ウインドウ」ボタンで、押すと分割やフローティング表示に素早く切り替えられます。
分割画面では真半分にするほか、一方のアプリを小さめにすることもできます。
ジェスチャー機能も豊富にあり、3本指ダブルタップでの画面分割やダブルタップで画面オンオフなどができます。
Android 13の機能であるタスクバーやアプリ別の言語設定も搭載。
タスクバーはスワイプか長押しどちらで表示するか選べます。
Bootloader Unlock可能
Lenovo Legion Tab Y700 2023は特別な申請やsn.imgの用意をすることなく、fastboot flashing unlock
とfastboot flashing unlock_critical
でのBootloader Unlockが可能です。
KernelSUはandroid12-5.10.136のものを使えます。
GSIではダブルタップで画面オンは画面点灯中にecho "1" > /proc/gesture_control
を実行すれば有効化できます。
ただしバージョン15.0.774以降ではBootloader Unlockができず、グローバルROM化もできないようです。初回セットアップ時はWi-Fi接続せずアップデートされないようにしてください。
まとめ
- 8.8インチ、144Hzリフレッシュレート対応
- 高性能なSnapdragon 8+ Gen 1
- 手で覆われにくいステレオスピーカー
- 45W急速充電対応6550mAhバッテリー
- デュアルUSB Type-Cポート
- バッテリーを傷めにくいバイパス充電対応
- microSDカード対応
- 指紋認証センサーなし
- GPS非対応
- イヤホンジャックは廃止
Lenovo Legion Tab Y700 2023は8インチクラスのタブレットでは世界最高レベルの性能を誇っており、バイパス充電やデュアルUSB-Cポート、手で覆われにくい大音量スピーカーなどゲームに役立つ機能がいくつも搭載されています。
10インチタブレットだと指が届きにくく誤操作してしまいやすいものですが、Legion Tab Y700 2023は絶妙なサイズで横持ちしたときの操作感はスマホとそれほど大きく変わりません。
コントローラーやキーボード・マウスを色々なゲームで使えるようにする機能もありますし、至れり尽くせりです。
2022年モデルと違ってシステムのほぼ完全な日本語化ができるところも良いですね。
Lenovo Legion Tab Y700 2023は残念ながらグローバル投入や日本発売はなく中国限定のようです。
Lenovo Legion Y700 2023は京東では2499CNY (税込約5.5万円) ~で購入できます。