1人ぐらい食べてもまぁバレへんやろ 作:こだまりパン
ヤクザーマンの名刺の住所を頼りにフロント企業らしきオフィスを探したところ、一見わかりにくい立地に事務所を見つけることができた。
明るいうちは人の出入りがそれなりにあったので暗くなるのを待ち……まぁ暗くなったところでそこはヤクザもんの巣らしく、夜の十時を回ってもオフィスには煌々と明かりが灯っていた。舎弟さんたちが泊まり込みでお仕事してるんやろなぁ。
というわけでビルの裏手に回り、靴を脱いでから非常階段をするすると上がる。今回はなるべくスニーキングするつもりなんでぇ……あ。
「あん? ──ぶぃ゛っ」
階段に座り込んでスマホぽちぽち舎弟くんとこんばんはしてしまったので。
必殺目つぶし! 相手は死ぬ!(死ぬ)
甲赫をまとった抜き手を目玉に撃って眼窩ごと脳みそをぶち抜く。勢いあまって推定舎弟くんが確定サイクロプスくんどころか死せる生け花(矛盾)にワープ進化してしまったけどまぁええやろ。
ぺろっと手についた血肉をテイスティング。
うーん、……微妙。ヤニくせえなこいつ。あと若干クサみが強いのビタミン不足だろ。知らんけど。
総評:まずい。死ね。あ、死んでたか……。ゴメンネ。
頭部お漏らしオブジェくんを放置するわけにもいかず、とりあえず隣のビルの屋根の上のくぼみにテトリスよろしくはめておく。おらTスピン! 追加点よこせ! 変な方向に足開いちゃったけどおれ的芸術点は加点対象!
……もうちょっと奥詰めとくか。おら、おらおら、よっと。あ。……わぁ、ちぎれちゃった。
まぁいっか。
気を取り直して元のビルに戻り、非常階段を上がりながら鍵が開いている裏口がないか順番に確かめる。
一番上まで確認したところ、やっぱりさっきの舎弟くんがサボっていた階の扉だけが開いていたのでそこから入ることにした。
きぃ、と若干の建付けの悪さを感じる音が小さく響く。
非常口の案内板だけが緑色に廊下を照らしていて、さっき外から見た感じだとここから一個下の階に人が集まっているようだった。
なのでそっちはスルーして、まずは最上階に抜き足差し足忍び足。
最上階から順番に部屋を漁っていく。扉の施錠は
資料室っぽい部屋から簡易寝泊まり部屋、なんか怪しい在庫が段ボールで積まれまくってる部屋、なぜか知らんがエッチな衣装やら道具がやたら丁寧に陳列されてる部屋や……大きな金庫がある部屋とかね。そうそうこれよこれ。
見つけた金庫をこんこんと軽く手で叩いてみるけど、うーん、この感触は……うんこの感触は穏便には無理! 硬ぇわ! 軟便になって出直せぇ!
これはしゃーない後回しにするとして、他の部屋も回ってみて、棚を漁って机を漁って、手っ取り早く金品に絞ってナップザックに詰めていく。
時折う~トイレトイレと上がってくる組の
「──! ──ぁ! ─ぃ──!」
「おら、逃げんな!」
「ちゃんとお仕事するんだ…よ!」
「次の現場こいつでいいか?」
「あー…、あっちの社長さんのご機嫌取りもしねーとだからなぁ」
「なぁ、こいつの連絡先からひとりパクってくるのは?」
「や、──! ───ぅ……!」
「うっ、お、もうやべ、ぁ!」
「ばっ、振り回すんじゃねえよきたねえな!」
「おい俺の寿司に、っ、てめえザッケんなクソが!」
「だぁっはっはっは!」
「ウケる! おいそれ食わせてやれよ!」
「ぅ、──ゃ───゛っ」
「代われって、次オレだから」
あ(察し)
うーん、これは……。
……うん。
バカ騒ぎはいったん放置して念のため下の階も、人の気配がないかだけさらっと見てきたけどだ~れもいなかった。ご丁寧に玄関ほかすべての出入り口は施錠済み。
これは……事件の香りですね。
はい、ということで完成した猟奇殺人事件現場がこちらです。
蛍光灯で明るい室内の真っ赤な彩とのコントラストが派手ですねぇ。
札には「大会議室」とか書いてあったけど一体どんな意見をぶつけ合っていたんでしょうか…?
ひろーい室内はもともと置いてあったのであろう長机と椅子がすべて雑に壁際に寄せられ、どうやって運び込んだのかキングサイズの柵なしベッドが部屋の中央にデン!
休憩用のソファにローテーブル、冷蔵庫、おまけに簡易シャワーユニットまでわざわざ部屋の中に用意して、やってたことは所属モデルとの懇親会()とはたまげたなぁ。
あの後すぱーんと入室かましたところ、予想通り生まれたての姿のままで騒いでいた
まず一人目を人外ラリアットwith赫子で頭すっぽんしたところで阿鼻叫喚。逃げ出そうとしたヤツはまだまともな反応だったけど、何を思ったのか逆上して向かってきたヤツもいたのがまじで地獄絵図。
グールボディに生半可な攻撃なんて通じないから特別な武器も何もない人間さんが突撃してきたところで脅威でも何でもないんだけど、でもさ? 想像してみ? キレた猿みたいな形相で半狂乱のフルチンマンが突っ込んでくるんだよ? ふつーに怖くない?
ていうか絵面がばっち過ぎて触るのもなんかヤダったから手早く背面蹴りで処理。死に際で本能ビンビンだったのか頭部を失って倒れた後にまたぐらから白濁液がピュッピュルしてるのは少し笑えた。
立ち向かう裸んぼ、逃げ惑う裸んぼ、放心してへたり込む裸んぼ。みんな等しくさよならばいばいである。
立ち向かう裸んぼを優先的にサクッと処理し、へたり込み裸んぼも道すがら首をすぱぱんぱん。
逃げる裸んぼは一人ずつ追いかけっこを楽しんで、一発ゲームオーバーのデスゲームにご案内。気分はホラー映画のキラー役。
いやー追っかける側って結構楽しいのよね。獲物がフルチンぶらぶらのきたねえお兄さんじゃなければもっと。
裸んぼとはいえ生きるのに必死な人間を自由に逃げ回らせるのは拙いとわかっていたので、ビル内は物色ついでにあらかじめ小細工をいくつか施しておいた。
防火扉でルート限定したり、外に通じる扉の錠だけわざと潰して開けられなくしたり、飛び降りれそうな高さにある窓は室内の鏡とかガラスを割った破片をまきびしよろしくばらまいて近寄れなくしたり。まぁみんなあわてんぼうの丸腰素っ裸ボーイだったから通用した小細工だよね。
そうこうしてるうちに、ほいっと、最後の男さんもこれでご臨終。この男さんはジョン・マクレーンばりに覚悟をキメてまきびしガラス片も構わず爆速ダッシュかました人ですね。良いぞダイ・ハード。その心意気だけは買ってやろう。だが無意味だ。
裸んボーイズの処理が終わったので最初の大会議室に戻れば、あらあら、男らから熱烈接待されてた女三人が身を寄せ合って震えてやんの。
ベッドの上でぷるぷるぷる。シーツや毛布を頭から必死にかぶって……うわぁ、布越しでも恐怖状態の人間バイブレーションって目に見えるものなんだなぁ。
これが……
かよわいね?
すごい必死だね。かわいいね。
「──、ね、ねぇ」
お?
「あ、あなた、……なに、なんなの」
「ヤメっ……ナニ考えてのよあんたッ……!」
「ヘンなことしないでよぉ……!」
なんか話しかけてきたな。うける。
そして残りの女二人、すげえ形相でもう一人のこと睨みつけてらぁ。ここにきて仲間割れかぁ? あ、元から仲間意識なかった系か。呉越同舟……的な?(誤用)
「まるで化け物……いえ、そんなことはどうでもいいわね……」
「だ、黙ってなさいよバカが……!」
「ころされちゃう……!」
「黙らないわ。どうせ黙ってようが泣き喚こうがきっと変わらない。……でしょ?」
「、は、え?」
「な……なに、どぉゆうこと」
……ほーん。
「殺すんでしょ、私たちのことも」
「は? ……ふ、ふざけないでッ……うそでしょ、だってッ」
「へ……? え?」
「これだけ派手に殺して、しかもその、正体かしら? バケモノじみた姿までさらして……たとえ私たちを助けにきてくれた奇特な奴だったとしてもやらかしたことに見合うだけのメリットがあるとは思えないもの……」
「う、ウソよ! イヤ、死にたくない! さんざんイヤな思いしたばかりなのに……! あたしは、これから……!」
「な、に? なに、なんのはなし……!?」
うえ……、すげえ冷静だなこの人。
「まぁ殺されるにしたって……ふふっ、さっきまでの催し物は正直言ってスッキリしたわ。聞いた? あいつらの悲鳴。ざまぁみろって感じよ! ふ、うふっ、うふふふふふ、ッ───m¥き゜ょ」
赫子で頭を上から潰してあげた。
うっせえなこの姉ちゃん。
めっちゃべらべら回る口だったけど、よく観察してみりゃ場の状況に酔ってハイになってただけだな。それっぽく振舞ってただけで異常なステージに立たされた自分に陶酔して、まさに悲劇のヒロイン気取りで浮かれてただけっぽい。
ごめんなぁ? 急に
ねーよタコ。死ね。……あ、死んでたか。ソッカァ
ちいさき命……なんともろい……。
「ひ──きゃああぁぁあぁぁ!!??」
「イヤ! いやっ!! イヤァァァァ!?!?」
はい残る二人も半狂乱。SANチェックファンブルでござい。
じゃけんはい~。おねえさん方も元・同僚おねえさんと同じとこいこうね~。
「たす、jきょ」
「だ@ぃぉ」
おー。口開いてる途中で叩くの地味におもろいなこれ。
さーて後は上の階の金庫だけだなぁ。
もうここまできたら騒音なんて気にしないでちゃちゃっと壊しちゃおうかね。
さすがにあれだけ尋常じゃない騒ぎ方すればお巡りさんとか来ちゃうだろうし……。
「劇場型の人ってチョー苦手ぇ~」