難民申請不許可取り消し求めたスリランカ人男性の悲痛な訴え 「私たちは家族」
難民申請が不許可となった処分の取り消しを求めてスリランカ人のナビーンさんと妻の久保なおみさんが起こした裁判(※注)で、原告2人への証人尋問が4月18日に東京地裁で行なわれた。こうした裁判では通常、在留資格が付与されない本人が原告になるが、日本人配偶者が原告になったのは「仮放免という、労働も移動の自由も認められない状態に置かれることで家族も苦しむことになるから」(なおみさん)だ。
午後2時過ぎに始まった証人尋問では、まずナビーンさんが、原告代理人の浦城知子弁護士からの質問に対して証言した。 スリランカで父が統一国民党(UNP)の広報を担当していたナビーンさんは補助として2001年からポスター発注やポスター貼り、支援を訴える戸別訪問などをしていた。しかし04年4月15日、父と車で帰る途中、前を走っていた車に道を塞がれ、UNPの対抗政党である人民連合(PA)の男たちに棒で殴られ右手首を骨折。父は腹部を殴られ、それが原因で腎臓が悪くなり、ナビーンさんの来日後に死亡した。 命の危機を感じたナビーンさんは、家族の勧めもあり、日本語学校への留学生として留学生ビザを携えて04年12月に来日。だが学費をだまし取られ、退学を余儀なくされた。相談を受けた入管は「専門家と相談を」と言うだけで対処してくれなかった。 05年12月にビザが失効したが、帰国を恐れて在留資格のないまま千葉県で農家の手伝いなどをしながら生きてきた。不法滞在が発覚した12年に入管に収容され、後に仮放免されて16年10月になおみさんと入籍するも、17年2月に再収容。今は仮放免の身だが、働けないことで「家族を支えられない。心が痛い」と言って証言を締めた。 続いて被告である国側の代理人の弁護士が反対尋問。難民申請時の調査書にナビーンさんが「暴行された時、対向車を避けるため一時停止した」と記載したとの記録を示し「証言と違う」と指摘。ナビーンさんは「調書へのサイン後に私が言っていないことが後付けで書かれている」と証言の正しさを強調した。以後も国側代理人は「オーバーステイ(不法滞在)となった後も入管を恐れ住居をいくつも変えたのでは」と当たり前の質問を繰り返したが、肝心な質問は夫妻の婚姻関係の真実性についてであるはずだ。その質問はついに一つもなかった。