保護欲・5
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数分後、空調の利いた脱衣所で、跡部はまだ鼻を押さえていた。
面倒を見ると言っていた筈の入江は、徳川が跡部の後を追ったのを見て任せる事にし、鬼と共に浴室に残っている。
徳川「まだ止まらないのか?」
徳川は既に着衣を済ませているが、跡部はまだ腰にバスタオルを巻いただけの姿で籐の椅子に腰掛けている。
そのタオルすら、慌てているのを見かねて徳川が巻いてやったものだ。
跡部「ええ。すみません」
徳川「別に謝らなくていい」
それから徳川は一度跡部の前を離れると洗面台でタオルを濡らしてまた戻ってきた。
徳川「これで体を拭け。血が付いているだろう」
確かに、滴った血が腹や脚に付着して既に乾きかけている。
跡部は受け取ったタオルでゴシゴシとそれを拭った。
片手で鼻を押さえ片手で血痕を消すのは見ていてもやりずらそうだ。だが、徳川は困ったように言った。
徳川「…拭いてやってもいいが、あまり触られたくないんだろう?」
腰にタオルを巻いてやるだけでも真っ赤になっていたのだ。また止まりかけた鼻血が出るのは容易に予想された。
跡部「はい。大丈夫です、自分で拭けます///」
徳川「そうか。何か冷たい物でも飲むか?」
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徳川はミネラルウォーターのペットボトルを持ってきて渡してやった。
(6に続く)
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