交流・4
そして話題の的、跡部はといえば…この険悪な雰囲気に耐えきれず、彼らしくもなくコソコソと逃げ出していた。
「何だよ、アレも俺のせいかよ;」
「別に跡部が悪いんじゃないけど、でも原因は跡部だC~」
「しっかし、アレやな。あそこ、エラいドロドロしたオーラが見えるで;」
「ひぃ~っ、超コエー!(笑)」
「俺にどうしろってんだよ; 鬼先輩達とばっかり居るって手塚達に文句言われて、でも今度は入江さんがあいつらにケンカ売りに来やがるし;」
「モテる男は辛いわなぁ(苦笑)」
「他人事みたいに言うな!#」
「実際、他人事やん(笑)」
忍足はあくまで傍観者の立場を貫く気らしい。
ジローも相変わらずだし、まあ…一番変化が無くて落ち着く場所かもしれない。
「でもさー、結局は跡部の好きにしたらE~んじゃん? どうせ短い合宿だもん。楽しく過ごした方がE~よ?」
「ジロー」
「好きなとこ行ってきなよ。あのドロドロテーブルは今はやめた方がE~けどさ」
「…ああ」
「樺地もおらんで寂しいんやろ? 甘えられるとこ行ってきたらええわ」
「別に樺地には甘えてねーだろが!」
「アホか。偉そうにしとるだけで、メチャメチャ甘えとるわ;ホラ、ちゃんとせんと先に帰った樺地が心配するで」
チッと舌打ちし、跡部は氷帝コンビのテーブルを去った。
***
そして跡部がどこに行ったかというと…。
「あれ、跡部は?」
「いつの間にかいないな。どこに行ったんだ」
「フフ…たぶん鬼のところじゃないかな」
「そうとは限らないでしょう。氷帝の仲間もいるし」
4人は室内を見回し、そしてほぼ同時に跡部を発見した。
その跡部の現在地は、彼らが予想した鬼のテーブルでも忍足達のテーブルでもなく…。
****
「本当に参っちゃいますよ;」
「でも、人気があるのは悪い事じゃないし、いいメンタルトレーニングだとでも思ったらどうですか?(笑)」
「…トレーニングですか;」
跡部はなんとコーチ達のテーブルに避難していた。
ずるいようだが、確実に攻撃を避けられる。
***
「…跡部くんにしては考えたね;」
「ああ、そういえば跡部は年上が好きだとか言ってましたよね、入江さん? 入江さん達高校生も『通ってきた道』やら経験やらが豊富らしいですが、まあ…コーチ達には敵いませんよね、フフ…」
「…随分と饒舌だねえ、幸村くんは(笑)」
テーブルの周りから段々人が減っていく…。
***
「コーチ達、今日またバーに行きます?」
「ああ? お前また来んのか?」
「自分では飲まなくてもお酒の匂いが移るからなるべくやめなさい」
「でも…今日はちょっと疲れたから、ゆっくりしたいんで…。いいでしょう?」
「しょうがねえな。10時までに部屋に戻れよ」
「はい」
…暗雲立ち込めるテーブルをよそに、ちゃっかりしっかり大人に甘えていた跡部であった。
(おわり)
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