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42 撤退戦

2012.06.16 (Sat)
「くっ、そぉっ!!」

そんな罵声を漏らしながら、なんとかとった回避機動。けれども放たれたその黄色の光は、手元を掠り最後の頼みの綱であったビームライフルを融解させてしまった。

赤い機体を落とし、向かってきた残る四機のIS。
第二世代型と見えたそれらは、けれどもこと攻撃力と言う点において、此方の予想をはるかに上回っていた。

両手にビームライフルを持ち、大量のミサイルコンテナを積載、両腕のサブにはレーザーブレードで、その上四機揃った見事なコンビネーションを仕掛けてくるのだ。
正直、只でさえ4対1なんていう無理ゲーを押し付けられているのに、此処まで相手側のコンビネーションが整っていると言うのは致命的だ。
しかも更に難解な事に、回避で肝心な直感が、何故か上手く働かずに居た。いや、理由はわかる。あの四機のISの動きは、妙に気配が薄いのだ。だから、此方の直感に相手の殺意が引っかかり辛い。

「く、ぬっ!! どうなってるんだよぅ!!」
――――。
「パターン? の割には変幻自在に動いてるみたいだけど」
―――。
「……むぅ。行動パターンはランダムだけど、攻撃のモーションパターンが一定とな?」

回避を繰り返しながら、何とかバルカンの牽制を入れて斬りかかるが、機動力で勝る此方の追撃は、必ず他の三機に妨害されてしまう。
思わず歯軋りしながら、ハイパーセンサーの視界で相手を睨みつける。

――相手の気配を感じ取れない理由として、可能性は幾つかある。
前提条件として、
行動パターンがランダムな為、無人機である可能性は低い。
攻撃モーションパターンが揃っている為、無人機である可能性はある。
殺意が完全に感じられないわけではないので、有人機である可能性はある。

要するに、ロボットっぽい相手、と言うことに成るのだろうか。

有人である、という物の補助意見としては、確かに人の意志らしきものは、かすかでは有るが感じる、という事。かすかにでは有るが、人特有の生々しい殺意は確かに感じている。

で、無人機であると言う可能性に関しては、相手の攻撃モーションが一定だ、と言う点。
行動自体は人特有の其々に癖のあるモーションで、コンビネーションの錬度の高さをうかがわせるソレだ。然し、攻撃モーションに関しては、まるでVTシステムを相手にしているかのような、機械的な、それで居て鋭く隙の無い一撃が飛んでくるのだ。

――いや、VTシステム?

降り注ぐミサイルをバルカンで迎撃しつつ、爆炎を盾で突っ切りながら思考を続ける。

VTシステムはあくま織斑千冬の動きを模倣するという、根本的な部分で役に立たないソフトだ。行動パターンが織斑千冬の行動パターンの模倣である為、搭乗者の意志が完全に無視されてしまうと言う、兵器としては欠陥品どころの騒ぎではない代物だ。織斑千冬の最も恐ろしいところは、何よりもその卓越した直感と其処から導き出される判断力という、機械での再現が難しい分野なのだから。
まぁ、アレはあくまで同人ゲームだからいいらしいけど。
が、コレは違う。そう、たとえるならばISと言うゲームキャラを、リモコンで操っているかのような、そういう動きなのだ。

――だとすれば、とんでもない事だ。

「っ、死ぬ気!?」

もしその予想が正解だとすれば、ソレは文字通り身を削るものだ。
ISはあくまでパワードスーツの延長。人の挙動を補佐するのが本分だ。
然しこの予想が正しければ、やっているのは「人の挙動の延長」ではなく「人の乗ったISの操作」なのだ。

例えば高名な武術家と、運動の苦手なサラリーマンが居たとする。
もしサラリーマンが武術家の動きを完全にトレースする事ができたとして、それだけで彼が武術家と同じレベルの高みにいたれるかと言うと、決してそんなことは無い。
何せ、技を使うには先ず肉体が必要だ。技を使える肉体があって初めて技は使えるのだ。
もしソレを無視して、体無く技を扱えば如何なるか――当然、身体を壊す。それも、完全に。
身体を鍛えると言うのは、ただ強くなるだけではなく、自らの肉体を守る為でもあるのだから。

今あの連中――4機のISがやっている事が、もし本当に私の予想通りだとすれば、アレは文字通り身を削って戦っているのだろう。

確かに手ごわい。が、ソレは狂気の技術。N&T(ウチ)にこそ相応しいだろうに。

「がっ、っあ!?」

そんな、考え事をしながらの戦いが拙かったのだろう。
不意に放たれたビーム。咄嗟に回避するも、反応が遅れたか、機体をかすってしまう。途端に現れる警告表示。咄嗟に了承を押して回避機動。

――ゴッ!!!

そんな衝撃と共に、突如として背後から巻き起こった爆発。
衝撃に身を揉まれながら、なんとか姿勢を立て直す。

――拙い。只でさえ消耗しきっていたシールドエネルギーが限界値に近い。その上、さっきの衝撃で機体にガタが来てる。

爆発は、敵性攻撃ではない。HWSの一環として搭載していた、航宇宙用の追加スラスターが、ビームライフルを受けて誘爆したのだ。

――さすがはN&T製品。みごとな爆発。
散り際も美しく、とはウチの標語の一つなのだけれども、ダメージまででかいのは勘弁して欲しい。

「エネルギー残量11%、機体稼働率40%……。スラスターが落されたのが痛いね」

この機体の機動力は、イナーシャルコントロールとスラスターによるものだ。イナーシャルコントロールは確かに地上宇宙と万能な推進力ではあるが、NT独特の過敏な反応機動には向いていない。其処を補う為のスラスターだったのだが、コレが破壊されてしまったため、もう機敏な回避は無理のようだ。
残された防衛手段は、νG用の盾。ミサイルとダミーバルーンが搭載されていたのだが、それらは既に使い切ってしまった。この盾、一応アンチビームコートはしてあるのだが、流石に直撃を何度も防げるほどの代物でもない。あくまでビームを逸らす事が目的の代物なのだから、今の状況ではなんとも頼りが無かった。

それでも何とか、地球へ向かって全力でバックしつつ、追いかけてくる四機のISの弾幕を回避する。
攻撃手段が残っていれば「引き撃ち」するのだけれども、残念ながら今の私に残された攻撃手段はビームサーベルとバルカンのみとなんとも頼りない。
いや、衝撃砲が有るにはあるのだけれども、今のエネルギー残量での運用は自殺行為でしかない。

回避、回避、回避、回避、回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避回避。

繰り返す中でも、少しずつ被弾量は増えていく。
盾は徐々に削り取られ、牽制用のバルカンの弾は底を付き、それでもやまないミサイルの雨。

拙い、ジェネレーターが止まった。もうシールドエネルギーも無い。
背筋に奔るゾッとした感覚を感じながら、最早此処までかと躯が硬くなるのを感じ――

『回避を!!』
「――っ!!」

咄嗟に背後へ向けてクイックブースト。途端目の前に現れたのは、一機の巨大な鉄の塊。
何事かとνGのハイパー・センサーとペリスコープC(カスタム)が捉えたそれ。カラーリングは、N&Tの製品のカラーリングに似ているが、その形状は私が見たことのないものだ。
先ず、そのサイズが宇宙戦艦の一歩手前。巡洋艦クラスは優に超えている。それなのに、その形状は戦艦と言うよりも、ウチで昔研究していたMTに似ている。
先ずスタイリッシュな宇宙戦艦のようなものの上に『腰』があり、腰を通じて胴体らしきものがくっ付いている。
その天辺には頭のような何かが取り付けられ、両肩には長いブレードがまるで腕の様に聳えている。
何よりも恐ろしいのは、それが凄まじくでかく、同時にハイパーセンサー群から齎されるデータが、その機体の保有するエネルギーがISなぞ軽く一蹴し得るほどのものだという点。

「こ、これは――」
『スバル様、後部ハッチへ!!』

通信から聞こえた赤毛の声に、咄嗟にその巨大な機体の後を追うように加速する。
残りの全エネルギーを、残されたスラスターにつぎ込む事で、何とか相対速度ギリギリ上までの加速に成功。然しそれは向こう側の四機のISにとっても同じで、寧ろ向こう側は破損が此方よりも軽微である所為か、徐々に追いつかれているようにも感じる。

「――ちっ」
『牽制は此方で行います。スバル様はそのままハッチに入ることだけを考えてください』

振り返り、牽制に残りのビームサーベルでも投げ付けてやろうかと考えたところで、赤毛からそんな通信が入った。
途端、ハイパーセンサーが正面の鉄塊に動きを検知。視れば、鉄塊の所々に設置された砲台が、其々生々しい生き物のような動きで此方――いや、私の後ろに狙いを定めていた。

「っ」

思わず唾を飲む。
音の伝わらない宇宙の海で、それでも伝わる悪寒。
ハイパーセンサーを通して伝わる、傍を通り抜けた超高速飛翔物体。
青白く輝く稲光と、小さく光るマズルフラッシュ。――あれは、レールガン……いや、レールキャノンかな?
視れば、背後で上がる一つの炎の華。
――ISはISでしか斃せないなんて、やはりIS至上主義者の妄言だね。
あまりの――荒唐無稽な光景に、思わず苦笑のような失笑のような、そんなわらいが零れた。








背後からの追撃を振り切り、漸くの事で鉄塊の後部ハッチにνGを突っ込ませる。
予め用意してくれていたらしい着艦用ベルトに機体を突っ込ませ、ほぼ不時着と言った形で着艦する。
それと同時に、まるで淡雪が解けるように光の粉となって消えうせるνG。
バングルを一撫でし、感謝の意を伝えながら、そのまま再び立ち上がろうとして、慌てたかのように周囲の連中――最終脱出組みのイノベイド達に取り押さえられた。

「担架で医務室まで運びます。どうかご自愛を」
「大丈夫だよ、戦闘機人は軟じゃない。まだまだ動ける」

実際には右脇腹と左脚が骨折、左腕の筋肉が切れてる。その上背筋が引きつるような感覚。鞭打ちにでもなったか。
正直なところ、今すぐにでもドクターのラボで調整槽に入って寝たい。でも、現状で寝てしまうという事は、この状況からの逃避以外のなんでもない。
今は、戦争の季節だ。

「――ならば、管制室までご案内します」
「うん、よろしく頼むよ」
「それと、νGはお預かりします」

横から現れた別のイノベイドが、そんなことを言いながら手を差し出してきた。
まぁ、どちらにしろダメージレベルはD以上。自己修復だけに押し付けるよりは、簡易でも整備施設でメンテナンスを受けさせてやったほうが良いに決まっている。
お疲れ様とバングルを一撫でして、腕から取り外したそれを、イノベイドの少女に渡した。

「――それじゃ、案内ヨロシクね?」

そうして、並ぶイノベイド達に声を掛けて歩き出す。
取り敢えずは、この機体についてを尋ねる為に。
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誤字報告
その期待の 保有するエネルギー
その機体
真黒 | 2012.07.18 21:19 | 編集
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