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この作品「匂わせたいねん。」は「アオチリ」「aocr」のタグがつけられた作品です。
匂わせたいねん。/是空ぅ。の小説

匂わせたいねん。

4,116文字8分

アオチリグッズが無事に買えますようにって願いながらほろ酔いで書いてた乱文。
コガネ弁?ムズカシワカラナイ……_( ◜࿁◝ _ )_

1
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「アオキさん、どーも!お疲れさんです」
「あ、どうも。お疲れ様ですチリさん」
「隣、ええですか?」
「どうぞ」
椅子を引いてあげると、おおきに!と満面の笑みでぺこりと会釈して腰掛けるチリさん。
宝食堂で食事を摂っていると、最近時々こうして会うんですよね。
同僚とはいえ、こんなしょぼくれたおじさんとこんなうら若き女性が食事を共に……
自分は口数も少なく口下手ですし、一緒にいても蠢く置物みたいでつまらないと思うんですが、はぁ。
「おっ、ええ角度♪」
パシャッ。
……飯の写真なんて撮って楽しいのでしょうか?
「飯の写真なんて撮って楽しいのか?っちゅう顔してはりますね」
「え」
「映えですよ、映え」
「バエ?」
「SNSに載せるんです。ほら、結構いいね付くんですよ♪」
「ほう……」
スマホロトムの画面を向けられ見てみると、ランチの写真や自撮り、良い景色と手持ちのポケモンの写真。
「なるほど、どの写真もよく撮れていますね」
「ほんま?へへっ」
お世辞ではなく本当に素直に思ったことを伝えたんですが、伝わったでしょうか。
「せや!アオキさん、チリちゃんとツーショ撮ってもろてもええですか?」
「え、お断」
「ご飯代出しますんで!」
「ええ……」
理解できません。ツーショ、とはそのまんまツーショットという意味ですよね?
え、こんなおじさんと?
「だめ?」
少し眉尻を下げて首を傾げるチリさん。
う……断りづらいな……
「わかりました。ベストを尽くします」
「そんな硬くならへんでもええのにー。けど、おおきに!」
ウキウキしながら自撮りモードにして、自分の隣にぴったりくっつき……いや近い近い。
そしていい匂いがしますね。
「んー、角度がもうちょっとアレやな。こうすると影になってまうし、ぶつぶつ」
あーでもないこーでもない、とぼやきながら撮影を繰り返すチリさん。
彼女が動くたびにさらさらの艶髪が揺れ、またいい匂いが……シャンプーの匂いでしょうか。
「アオキさん、もう少し顎を引いてもろて」
「んぇ」
白くほっそりとした指で顎をやんわり押されながら彼女の顔をチラリと覗き見ると、真剣ながら子供のようにキラキラして楽しげで。
「……っふふ」
「え、アオキさん今笑っ……」
パシャッ
「「あ」」
チリさんが振り向きかけた時、うっかりシャッターに指が当たってしまったらしく……
「……アオキさんの笑顔、撮ってもうた……」
「撮られてしまいましたね、はい」
「……」
「えっ今の投稿したんですか?」
「へへん♪」
ドヤ顔でスマホロトムを見せてくるチリさん。
『#飯テロ #ランチ #アオキさんと!』
「炎上とか、しませんかね……?」
「せえへんせえへん!むしろバズること間違いなしや!」
「ばずる……」
「さて、頂きます!んー美味い!」
席に座り直してもっきゅもっきゅと焼きおにぎりを頬張る彼女の可愛い横顔を見ていたら、もう『消してください』などとは言えなくなりました。
むしろ、こんな自分が彼女をこんなに楽しそうな顔にできたことが嬉しく思えてきて。
もうどうにでもなーれです。
さて、午後のタスクも頑張りますか。


*************


はー、ようやっと帰れる!
捌き切った書類の山をトップに届けて、休憩室でコーヒー啜りながらスマホロトムを呼び出すと、えっぐい量の通知が来とってびっくらこいた。
「な、なんやなんや……?」
ロックを外すと、昼に上げたアオキさんとのツーショへの膨大な数のいいねと拡散とコメントが!
『アオキさんが笑ってる……だと……!?』
『守りたい、この笑顔』
『チリちゃんのビックリ顔も珍しいね』
『2人とも可愛いいいいいい』
『なんだこの尊い2人は』
コメントの山をつつつーっとスワイプして読みながら……誰も周りに居らんから、チリちゃんいま盛大にニヤニヤしとる。
『アオキさん、チリちゃんを見て笑ってるよね?』
『なんかアオキさんがチリちゃんのパパに見えてきて和む(ニッコリマーク)』
『非凡なパパの笑顔にびっくりする娘(イケメン)』
『なにそれ尊い』
『てえてえ……』
「……パパ?アオキさんが、チリちゃんの?」
その後についたコメントも、同じく親子に見えるだのなんだの。
「ぐぬ……ちゃうねん、そうやないねん……」
匂わせ写真、のつもりやってん。
欲しい言葉はそういうんやなくて……
「『お似合い』とか誰か言うてくれへんかなぁ」
ベンチの背もたれにごちっと後頭部をぶつけながらぼやくと、ぬぅっとアオキさんが覗き込んできた。
「お疲れ様です」
「……お疲れさんです」
ぽふぽふとベンチの座面を叩くと、素直に座ってくれるアオキさん。
「どうかしましたか?」
「これ、見て」
「?」
アオキさんに画面を見せながら、さっきみたいにつつつーっとスワイプ。
どんなリアクションするんかなと横顔を見つめてたら、なんやろな、アオキさんごっつ名状し難い表情になってきた。
「……親子みたい、ですか」
「凹みました?」
「いえ、別に」
嘘やん。歳離れてるゆーてひと回りくらいなもんやのに、親子みたい言われたらショックやろ……
って、コメント欄見せといて言うんもアレやけど。
でも、撮らせてくださいって撮って投稿したんやしどういう反響があったか伝えるんは別に変やない、よね?
「凹みはしませんでしたが、ただ……」
「ただ?」
「……………………まぁあれです、炎上とかしなくてよかったなと」
「いまの長考なに?」
「別に」
目を逸らしたアオキさんの耳が赤くなってくのをぼーっと見ながら、ぬるくなったコーヒーを飲み干した。
「チリさん、これから空いてますか?」
「ん、空いとりますけど」
「じゃあ、晩飯奢らせてもらっても?」
「そら嬉しいですけど……なんで?」
「昼飯を奢ってもらったお礼と、リベンジです」
「リベンジ?」
どういうことなん?と聞き返す間もなく、アオキさんは休憩室の椅子から立ち上がってスタスタと自分のカバンを取りにロッカーへ向かう。
慌てて後を追いかけて、2人でリーグを出た。


「このお店、個室席なんてあったんやなぁ」
「ええ、取引先の方と食事するときなどによく利用しています」
「ほぉー」
料理とビールが届いて、個室にごっつ食欲を掻き立てる匂いが満ちる。
「はー、お腹空いたぁ。アオキさん、乾杯しません?アオキさん?」
「ちょっと待っていてくださいね……よし」
何故かスマホロトムをインカメにしてウチらを写すアオキさん。
「ロトム、3分後にシャッターをお願いします」
「かしこまりましたロト!」
「え、え、なんなん?何が始まるん?」
「チリさん、先ほどのSNSへの投稿の話ですが」
「あっはい。勝手に投稿して、すんまへんでした……」
「いえ、そうではなく。正直に言いますと、自分はとても悔しいんです」
「……その心は?」
「自分は貴女よりもひと回りも長く生きている、こんなにも草臥れたおじさんです。そして貴女は男女共に人気があり、若く明るく可憐な女性だ。言うなれば月とカジリガメです」
「可憐て、え、ちょ」
「こんな自分がそんな貴女の隣にいても、せいぜい"お父さん"が限界だろうと、自分でも客観視しながら思いました」
「……」
「ですが、昼食の後もコメントを見せてもらった時も、そこをゴールとして、終わりにしたくないと思った」
アオキさんのごつごつした大きな手が、チリちゃんの手をそっと取った。
「チリさん、貴女の隣に並んでも恥ずかしくない、お父さんではなく1人の男である自分になれるよう、努力していきます。ですから、自分を貴女の彼氏にしてくれますか?」
「う、あ」
「返事をお聞きしても?」
「……ひゃい」
アオキさんはうちらの手をスッと上に挙げて、インカメにしたロトムに目線を向けて……
ちゅ。
パシャッ
『#もうパパだなんて言わせない』のタグつけて投稿しよった。

秒で鳴り響く通知音(デカい)
『えええええええ』
『エンダァァァァァ』
『いやぁぁぁぁ!!』
『おめでとう!』
『ありがとうございます(アオキさんの返信)』
『ちょっと待ってどういうなにこれ』
『ビッグカップルの誕生ですね!!』
『私たちのチリちゃんがぁぁぁあ』
『末長く爆発しろ』
『チリちゃんは渡さん!!!!れ!!』
『うぼぉぉいおいおいおい!!』
『2人は明日朝イチで私の執務室に来るように』
『ここに教会を建てよう』
『顔真っ赤なチリちゃん可愛すぎ』
まだまだたくさん、こんなコメントが続々と。
「チリさん、これからよろしくお願いします」
「はひ……」
その後、テーブルの向かい側に戻ったアオキさんが、無言でもしゃもしゃと料理を食っとる。
いや、なんか言うてや!緊張するやん……っ!
「あのぉ、アオキさ……」
「あっ。すみません。かんぱーい」
「あっえっハイ、かんぱーい」
チン、とジョッキを合わせ、くぴりとビールを飲む。
「バズる、って」
「え?」
「バズるって、いいですね」
「あの、しれっと投稿してはったけど、アオキさんSNS……」
「はい、昼食の後少し時間が余っていたので、同僚たちに教えてもらいながらインストールしたんです。チリさんのアカウントをフォローさせて頂きましたので、後でよかったらフォロバしてください」
「あっはい」
「もぐもぐ……あっ、食べる前に撮るの忘れちゃったな。俺も食事画像載せようと思ってたのに」
いつもより少し砕けた口調と……
えっ、アオキさん一人称『俺』?
「……ほんまえらいやっちゃで、自分」
「もぐ?」
「なんでもあらへんよぉ」
とんでもない人に恋してもうたな、チリちゃん。
まだちょっと頭追いつかれへんけど……
とりあえず、ご飯たべよ。
「匂わせるどころか直接バーン!やもんなぁ……」
「もぐ?」
「なんでもあらへんてー」
チリちゃんのスマホロトムもエグい通知音鳴り出したけど、今はとりあえずねんねしてもろて。
ほっぺにご飯粒付けてるアオキさんを肴に、お腹いっぱい食べました。

コメント

  • デリアン Delriun

    『エンダァァァァァ』と 『いやぁぁぁぁ!!』が合わさって完璧な歌詞になる部分で吹き出しました。 こんなラブコメ好きです!! 明日の朝の仕事は明日の朝の二人に任せて、今はこの甘い空気を楽しむことです

    2023年9月2日
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