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この作品「バレンタインデー」は「アオチリ」「アオキ(トレーナー)」等のタグがつけられた作品です。
バレンタインデー/すずの小説

バレンタインデー

5,661文字11分

2/11『シガーキス』『バレンタインデー』
aocrワンドロより『バレンタインデー』

前半はチリちゃん視点でワンドロの日に、
後半はアオキさん視点で2/15に書きました

※キャラの口調迷子
※なんなら性格も迷子
※捏造がひどい

※なんでも読める人はどうぞ

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『バレンタインデー』


今日はバレンタインデーだ。
他の地域と過ごし方が違っており、ここでは男性が女性へ愛を証明するイベントだ。
女性は男性からの愛を受け止めるために着飾り、それぞれの愛の形が表現される。

見た目から女性人気があるチリはこのイベントに駆り出されることになった。

「これでえぇんかな?」

四天王のフロアでチリが首をかしげている。
いつもの格好にプラスしてジャケットを羽織り、いつも以上にかっこよさがアップされている。
この後テーブルシティでリーグの宣伝をしながら薔薇の花を配る予定だ。

「いくら仕事とはいえ、花でよかったなぁ」

チリの出身地であるジョウトでは女性から男性へチョコレートを贈り告白する日だ。
さすがに不特定多数にチョコをあげる気はなく、花だからという理由で今回しぶしぶ参加することにしたのだ。
まあ、トップからの圧力に負けたとも言う…


時間になりテーブルシティへ向かう。
中央にあるバトルコートの周りには今か今かと待つ人々が立っていた。

『ちょっと待てぇや、予定より多くあらへん?』

事前に聞いていた人数よりも多い。
花が足りるのかも不安だし、何時に終わるのか目途が立たないのではないか。

『とにかく、早く終わらせな!』

にこりといつもの笑顔を浮かべて気合を入れる。
イベントが始まった。


「つっっっかれた~~~」

大きなため息とともに吐き出された言葉。
当初の予定より3倍は多かったであろう人、人、人。
最後の方は笑顔が引きつっていた気がするが、目がハートになっている参加者はきっと満足しただろう。

「片づけはこちらでするので、チリさんはもうリーグへ帰って大丈夫ですよ」

スタッフのありがたい言葉に甘えて戻ることにした。
とは言え、今日の報告書を出さねばならない。
それもあってスタッフは声をかけてくれたのであろう。
これが終われば帰れるとは言え、もう定時を過ぎている。
本当なら定時ダッシュをしてチャンプルタウンへ行きたかったが仕方ない。

リーグに着くとジャケットを脱ぎパソコンの電源を入れる。
予定よりも人数が多かったことと、薔薇の花を追加した経費をまとめる。

「ホンマ、花屋さんが大量に仕入れしてくれてなかったら足りひんかったで」

来年チリはもう出ない方がいいだろう。
そのことも付け加えておく。リーグの宣伝よりもチリの宣伝になってしまっていた気がする。
本来の目的が遂行されないのは自分としても不本意だ。
報告書をまとめあげるとメールに添付して送信する。
これで今日の業務は終了だ。
時計を見るがやはりチャンプルタウンへ行って帰ってくる時間はない。

本当ならさっさとイベントを終わらせてアオキさんにチョコを渡しに行きたかった。
彼は今日、チャンプルジムで仕事がありリーグには戻ってこないのだ。

これがアオキと付き合っていたら、渡した足で彼の自宅へお泊りなどもできたであろうが、まだ二人はそんな関係ではなかった。
チリの片思いで今日告白するつもりだった。
不慣れながらもチョコを作って冷蔵庫に入れていたのだ。
その努力も今日のイベントで無駄となってしまったが…

「ん~手作りやし今日中に食べた方がえぇやろな」

給湯室へ向かいながら考える。
ここまで来たら急いで帰る意味もないため、コーヒーと共にチョコを食べてから帰宅しようと決めた。

給湯室でコーヒーを入れる。
コポコポと鳴る音を聞きながら、やっとゆっくりした時間を噛みしめる。
しばらくはファンサをしたくないなと思いながら、仕舞っていたチョコを取り出そうと冷蔵庫を開けた。

「あれ?あらへん…」

おかしい、朝は確かにここに入れたはずだ。
黒い箱に白いリボンをつけたチョコがなくなっていた。

ここは四天王とトップのみが入れるフロアであり、今日リーグにはチリしか出勤していない。
どうしてだろうと冷蔵庫の前で考えていると人の気配がした。

「どうしたんですか?」

気配と同時に声をかけられる。
本来ならここで聞けないはずの声が。

「あ、アオキさん?」

入り口を見ると、会いたかったアオキが立っていた。
さっきまでは会いたかったが、今は違う。あげるはずだったチョコがないのだ。

「今日は大変だったみたいですね」

こちらの動揺に気付くことなく話しかけられる。

「せや、予定よりも多くてめっちゃ疲れたねん」

大げさに答えて心を落ち着かす。
会えて嬉しいのと、チョコがない焦りでさっさと会話を終わらせることにした。

「せやからコーヒー飲んだら帰ろうかなと思ってん」

マグカップを持ちながら給湯室を出ようとするも、アオキが動かない。

「通してもらってえぇ?」

チリが首をかしげて聞くもアオキは動かない。
長考しているんかなと思ったがすぐに返答がある。

「チョコ、美味しかったです」

今、彼はなんと言った?

チョコが美味しかったと、そう言ったのか?

「え、アオキさ、、」

「来月、予定を開けておいてください」

それでは、と去っていった。

色々と言いたいことはある、が、もうその相手がいない。

明日問い詰めてやると気合を入れるも、1か月先のホワイトデーまでのらりくらりと躱されてしまい翻弄されるチリなのであった。




『Valentine‘s Day』

バレンタインデーの風習は土地によって違う。
ここパルデアに来てから、地元とあまりにも違う内容に初めて来た年はかなり驚いた。
街のあちこちで男性が愛を伝え、女性はその愛に応えている。
独り身は……などと言う人もおらず、皆、自分と自分のパートナーに夢中だ。

昔のように義理で配られるチョコへのお返しを考える必要もなく、この日は周りが騒がしい日だなと認識していた。


そう、彼女と出会うまでは。


「薔薇を配る、ですか」


目の前の書類を見る。
そこにはバレンタインデーにリーグの宣伝として、四天王のチリが薔薇をプレゼントするという企画が書いてあった。
ご丁寧に服装まで指定されており、ファンサービスに特化しているようだ。
目を細めての書類を見るアオキに構わずトップが説明を続ける。


「バレンタインのプレゼントを受け取るよりも、チリが配る方が良いと思いまして」

色々と大変でしょうから、と。


確かに、チリの人気を考えればバレンタインにプレゼントをしたいファンで溢れるだろう。
純粋に応援してくれているなら良いが、中にはたちの悪いプレゼントも紛れ込むことは簡単に想像できる。
それならば先にこちらからアクションを起こすことでファンの欲求を解消する方が良いのだろう。

理屈ではわかっているが、彼女が不特定多数に薔薇を配るのが気に食わない。
気に食わない、が、自分がそれを言える立場でもない。


ただの同僚である、自分には。


「いや〜チリちゃん、人気あるのは自覚しとるけどやりすぎちゃいます?」


当事者であるチリはピンときていないようだ。
そうか、彼女はまだこの土地に来てからバレンタインを経験していないのか。
ここの人たちはジョウトやカントー、シンオウの人たちとは違う。
どう伝えるべきなのか…


「道端で歌いながら花束を渡されても戸惑うことなく対処できますか?」


にこやかにトップが言う。
嘘やろと言わんばかりにチリが周りを見渡すが、残念ながら起こり得ることだろうと思わず首を縦に振った。
普段から冗談など言わない自分がした反応に本当だと悟ったのだろう。


「…わかりました、でも、せめてこの日の業務はこれだけってことにしてくれます?」


「もちろんです、終わればそのまま帰宅して問題ありません」


あっさりと要望を受け入れている。
想定通りの答えだったのだろう、どこまでこの人の掌の上なのだろうか、そう思いながら企画書へ目を戻す。
この日は自分もリーグに出社しておこうと心に決めた。



バレンタインデー当日、アオキは焦っていた。


『まさかジムへ行かないといけないなんて』


チリがバレンタインのイベントに駆り出されると決まってから、アオキは業務を調整していた。
せめて当日は彼女の近くにいたかったが、ジムチャレンジの予約が入ってしまった。
最近やる気に満ちた学生が多くなったらしく、良いことだが今のアオキにとっては残念なお知らせだ。


朝からチャンプルタウンで挑戦者を待っていると次々とやってきた。
ジムチャレンジは時間の指定をしていないが、まさか連続でバトルになるとは想定していない。
二人目とバトルが終わり、休憩となるはずだったがすぐに三人目が来てしまった。


「バトルお願いします!」


「…ポケモンのコンディション調整があるので、しばらく待っていてください」


今日は一体なんなんだ。
それでなくても早くリーグへ行きたいのに、足止めばかりをくらっている。


「それじゃあ間に合わない! じゃあキャンセルでお願いします!」


そう言うと学生は急いで出て行ってしまった。
何だったのだろうかと思っていると、職員が宝食堂に入ってきた。


「すみませんアオキさん、本日のジムチャレンジは以上で終了です」

「どういうことでしょうか」

先ほどのキャンセルと同じ理由なのだろうか。
長考しようとしたタイミングで職員が話を続ける。

「なんでも、チリさんを一目見ようとテーブルシティに向かったようです」

「それなら最初から行けばよかったのではないでしょうか」

「なんでも、バッチを一つでも集めてから会いに行きたかったみたいですよ」

集めたバッチの数を申告したらチリさんが褒めてくれるという噂があったみたいで、と。


「なんですか、それ…」


きっとトップが変な宣伝をしたのだろうということがわかり、ため息が出た。

職員はそれを勘違いしたらしく、今日はこちらでまとめるのでアオキさんも本部へどうぞと勧められた。
残っている仕事があるのにジムチャレンジのためにここに来たと思っているようだ。

「では、お言葉に甘えまして…何かあれば明日以降にお願いします」

余計なことは言わないアオキは、そのまま本部へ移動した。


途中、上空からテーブルシティを見下ろしたが、中央がすごい人だかりになっていた。
やはりチリの人気っぷりを侮ってはいけなかったと実感した。


リーグ入り口から四天王しか入れないフロアへ向かう。
これもチリが四天王になってから新しく作られたルールだ。

書類のやり取りで必要以上にチリに話しかける人が多く、チリの仕事がはかどらない時期があった。
本人はそういった相手にもにこやかに対処していたが、少しずつ疲れが溜まっていたのだろう。
トップに進言した結果、四天王への書類は専用のエレベーターで運び込まれるようになり、人の出入りも制限したのだ。
会える環境にいるから会いたい、そうでなければ社会人として仕事をする人たちであり、それからは平穏になった。


やはり会えるとなると人が集中するのだろう、来年からはまた違う対策が必要になるだろうと考えた。
…なにより、思い人を切り売りするような真似はしたくない。
トップへどう報告しようか考えることにした。


しばらく仕事を続け、休憩でコーヒーを入れに行く。
コーヒーメーカーのスイッチを入れる。
ついでに何かないだろうかと冷蔵庫を開けると、目の前にそれがあった。


黒い箱に白いリボンが包装されている。


昨日帰宅する時にはなかったものだ。
それにこのフロアへは四天王とトップしか入ることができず、ここ給湯室の清掃も自分たちで行っている。
今日はトップは出張で不在、ハッサクはアカデミー、ポピーは家族と過ごすと言っていた。

つまり、必然的にこれを冷蔵庫に入れたのは一択である。


「どなた宛、なんでしょうか」

駄目だとわかっていても気になって仕方がなかった。
まず人のものを触るのも良くないし、誰かへのプレゼントと思われるものを触るなんて、人としてどうかと思う。

思うが、耐えられない。

だって、どう見ても今日のために彼女が準備したものだろう。


誰もいないとわかっていても思わず入り口を見る。
また視線を冷蔵庫に戻すと、そっと箱を取り出した。


手に取って改めて箱を見るとリボンにはタグが付いていた。
丸いタグが裏返しになっている。


これを見たら相手の名前がわかるのだろうか。


彼女の、チリさんの思い人が…。


せめてそれだけでも確認して戻そう。
もう触ってしまったのだからいっそ自分に引導を渡してしまおう。


そう思ってタグをめくった。




コポコポと音が鳴っている。
コーヒーメーカーを使っているのであろう。


「あれ?あらへん…」

冷蔵庫を開けた音と彼女の声が聞こえた。

「どうしたんですか?」


そう聞きながら入り口へ立つ。
給湯室の奥、冷蔵庫の前に立つチリを見つめる。

「あ、アオキさん?」

「今日は大変だったみたいですね」

「せや、予定よりも多くてめっちゃ疲れたねん」


こんな時間までかかっていたということはかなり疲れているだろう。
それに、別の理由でもきっと内心穏やかではないだろう。


「せやからコーヒー飲んだら帰ろうかなと思ってん」


彼女がマグカップを持って近づいてくる。


「通してもらってえぇ?」



「チョコ、美味しかったです」


シンプルに、伝えたいことを伝える。


「え、アオキさ、、」

「来月、予定を開けておいてください」


さて、彼女へのお返しは何にしようか。
それよりも先にチョコの件を詰められるだろうが、ホワイトデーまで待っていてもらおう。

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