2022/12/24
立花孝志物語 4 NHK本部 スポーツ報道センター時代 のつづきです。
毎年新年にはNHK 22階の会議室でアマチュアスポーツ新春懇親会が催されていた。アマチュアという言葉から受ける印象とは異なり、この懇親会は会長海老沢が主催するNHKにとって非常に重要なパーティーだった。なぜならば、このパーティーには大勢の大物政治家が出席することが恒例となっていたからだ。
なぜ大物政治家がアマチュアスポーツの会合に出席するのか。それは、日本バドミントン協会会長は綿貫民輔元衆議院議長、日本バスケットボール協会会長麻生太郎元総理、日本綱引連盟会長中曽弘文元外務大臣、このようにアマチュアスポーツと政治家とは繋がりがあるからだ。
スポーツは票につながる。政治家とつながればそのスポーツがNHKで放送される。NHK予算決算の承認権は国会が握っている。3者はWin-win-winの関係なのだ。
失敗は許されない。アクの強い国内有数の有力者がNHK内外から集まるため想像を絶する精神的負荷が運営サイドにのしかかった。
孝志はこのパーティーの責任者を5年間務めた。
アマチュアスポーツ新春懇親会の会場の設営、会長のスピーチ原稿の作成や司会者候補の選定など会の全てに注意を払うことが孝志の仕事だった。参加者の機嫌を損ねず上機嫌で帰って貰うためには司会者の選定で成功することが非常に重要な要素だった。その点、有働由美子アナウンサーが司会者なら絶対に問題はなかった、と孝志は言う。
孝志はこのパーティーの司会者の要件として「政治的な空気を読む力」を重視していた。「政治的な空気を読むというのは、会話の表面では仲良くしているが、本当は敵対している関係を察知するという力」だと孝志は考えていた。有働は天然ではあるが、「権力者が誰なのか」とか「冗談が通じる相手かどうか」など空気を読む力は優れていたと評価している。
孝志は有働とNHK時代親しい関係だった。有働の出張旅費の精算、年末調整、マンション購入時の税金対策、裏金でビールの提供などは孝志が代わりに行っていた。オリンピック中継のため出張したアメリカ・ソルトレークで孝志と有働は深夜まで仕事や恋愛について語りあったことが幾日もあった。
孝志はソルトレーク滞在中、付き合っていた女性にフラれて泣いたことがあった。当時、有働だけがそのことを知っていた。
孝志は有働と親しかったが、後年、有働の衣装問題を、週刊新潮とアサヒ芸能で記事にしている。
2002年ソルトレーク・オリンピックで孝志は日本円で300万円前後の観戦チケットを転売し裏金を捻出している。これはMチーフプロデューサーによる業務命令であった。
孝志がオリンピックの観戦チケットを転売してまで300万円の裏金を作らざるを得なくなった背景には、海老沢が主催するアマチュアスポーツ新春懇親会があった。そのパーティーの局内招待者にM報道局長が入っていなかったのだ。
孝志はソルトレークへ出発する直前の2002年1月9日夕刻、報道局長室でM報道局長から約1時間にわたり叱責されている。そしてM報道局長は「スポーツ報道センターの伝票はしばらく決定しない」と繰り返し発言し、実際にその後3か月以上決定印の押印を拒否した。
孝志はチケットを転売し裏金を捻出せざるを得なくなった。
後に、この件で孝志だけが懲戒処分を受けている。
テレビ体操の出演者との契約交渉から出演料の支払い請求と支払い決定まで孝志がしていた。孝志はテレビ体操の実質的な責任者であった。
2000年8月シドニーオリンピックで高橋尚子が金メダルを取り世間が盛り上がっていた頃、おかあさんといっしょ第6代体操のおにいさんであり、その後2000年までテレビ体操ラジオ体操みんなの体操で活躍していたNHK体操講師がレイプ事件を起こした。毎年恒例の夏休みラジオ体操で講師、ピアノ伴奏者、実技をするアシスタント数名が地方に泊りがけで出張していた際、講師がアシスタントの一人をレイプしたのだ。
NHKはこの事を現在に至るまで隠蔽している。体操講師では最も人気があったW氏がその後テレビ体操を含むNHKに一切出演していないことがなによりの証拠であると孝志は主張している。そして、NHK職員時代、自分もその隠蔽に加担したことを告白している。
福岡ダイエーホークス代表取締役社長高塚猛はホテルシーガイヤのスウィートルームで、阪神タイガース球団社長野崎勝義はライトスタンド下の球団事務所で、孝志を相手に放送権料の交渉をしていた。
孝志がNHK本部で球団オーナーや経営陣を相手に交渉をしていた頃、近鉄バッファローズの買収話が世間を騒がしていた。騒動の中心人物はホリエモンこと堀江貴文だった。
「堀江貴文はまともなことを言っている。でも、あんなことをしたら潰される」「楽天イーグルスを堀江みたいなやつに誰が渡すかよ」そんな会話がNHK内部では交わされていたという。
孝志はプロ野球中継で編成当番という207スタジオでの最高責任者となり地震発生時の対応や野球の延長時間の決定もしていた。
ある日、地上放送で巨人VS阪神戦の放送を延長するか、冬のソナタを定時から放送するかでかなり編成ともめた経験が孝志にはある。
冬のソナタは孝志が購入を指示したソフトだった。
孝志自身も野球が好きでペンギンズというチームでNHKグランドや神宮球場で野球をした。このチームは外部の編集マンが中心だった。このことから外部の編集マンがろくに休みもなく安い給料で働いている事を孝志は知り、編集マンの処遇改善に努力した。
社会部記者の野球チームの人が足りなくてよく助っ人に行った。NHKに15ある野球チームを集めた大会の運営もした。
孝志は活発であり心の病を患うようなタイプではなかった。
2001年11月タイガーウッズが静岡の御殿場に来た時に、孝志は山中湖にあるTBS保養所でTBSの取締役と共にいた。
孝志 「草野満代さんには、TBSはいくら払ったのですか?」
TBS取締役 「契約金1億円・年俸7000万円」
孝志 「うちの有働アナはTBSとして必要ですか?」
TBS取締役 「もちろん!彼女はスポーツ・芸能・ニュースがしゃべれるし、年寄りにも人気がある」
孝志 「有働アナならいくらだしますか?」
TBS取締役 「契約金2~3億円・年俸1億円」
有働はその後、2018年3月にNHKを退職。同年10月、日本テレビ『news zero』のメインキャスターに就任した。そして、2021年総選挙の党首討論に、党首として参加する孝志と再会することとなる。
大相撲の中継に年間31.5億円もの多額の放送権料を支払う理由を、在職当時孝志は報道局スポーツ報道センター長に聞いたことがある。
「相撲協会経由でヤクザに金を払うためだ」と言う回答であった。
相撲協会がどこのヤグサに払っているかまでは聞いていない。
孝志は視聴者からの電話は大好きで、飲み会に遅刻してでも一人一人大切に対応していた。視聴者の意見はなるほどと思うものが多かった。誤解して批判の電話してきた人に、真相を説明して説得した時の充実感はたまらなかった。
孝志は在職時、技術職員と次のようなやり取りをしたことがあった。
孝志「地上波がデジタルになれば技術的にスクランブルをかける事できるの?」
技術職員「B-CASを使えばとても簡単にスクランブル化できます。既にBSデジタルで行なっているBS受信契約のテロップはスクランブルをかけるシステムとほぼ同じです」
NHK時代孝志には複数の愛人がいた。その内何人かはNHK職員やNHK関係者だった。しかし経費で愛人との交際費を捻出したことは一度もない。NHKの給与とパチンコ収入で対応していた。
孝志はNHK在職中すでにパチンコで年平均5百万円ほど稼いでいたし、愛人にパチンコ教えてパチプロに育てていたからだ。
孝志は出世したいとは考えていなかった。高卒でNHKに入って出世しようなどとは「バカな考え」だと思っていた。
その証拠として、孝志は堂々と愛人がいると上司に伝え愛人同伴で上司と飲んでいた。出世欲があればこんな行動しない、と孝志は後年説明している。
NHKで地方から東京に転勤してきた者は、3万円前後で社宅を借りることが出来た。
しかし、深夜帰宅する際にタクシーを使わない、緊急時はすぐに局に出れるようにするため孝志は渋谷のNHK渋谷放送センターの近くにある初台にマンションを借りた。家賃は月245,000円だった。NHKからは5万円の家賃補助が支給されていた。
孝志は自転車で通勤した。
孝志は報道局長賞を受賞したことがある。
2004年7月、週刊文春中村竜太郎記者の記事により「NHKプロデューサー巨額横領事件」が報道されることとなった。孝志の上司であった大久保建男は「文春の記者に睨まれたら終わりだ」とつぶやいた。
その週刊文春が発売される前夜、NHKは記者会見を行い、その事件を自ら報道した。
その翌日、孝志は報道局から編成局に異動となり「紅白歌合戦に関連している不正」を調べる担当となった。
この日を境に孝志の運命は大きく変わることとなる。2004年7月21日のことだった。
立花孝志物語 6 不正調査へつづく
ここも2ちゃんねるに立花さんの書き込みをベースに書いています。アマチュアスポーツ新春懇親会の部分については、別の情報も加味して僕なりの解釈を付け加えています。
この文章は後に映像化されることを前提に書いています。プロジェクトXなどのドキュメンタリーをイメージして書いているため、登場人物の敬称は省略させていただいています。
なんか経理の人って一日中机の前に座っているイメージがありますし、僕が見てきた経理の人ってみんなそうでしたけど、立花さんって色々なことしてますよね。どういう日常だったのだろう。今度、機会があったら聞いて見ようと思います。
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モリヤマ ヒデキ/歳/男
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