新スタジアム建設への長い道のり

 サンフレッチェ広島の新本拠地となるスタジアム建設は、2003年に広島県や広島市、広島商工会議所などを中心に「スタジアム推進プロジェクト」が発足されたものの、財源の確保や候補地選定が難しく、一度はとん挫した。再び市民の間で新サッカースタジアムを要望する声が高まったのが2012年。サンフレッチェ広島は、過去にプレーヤーとして在籍していた森保一氏(現サッカー日本代表監督)を監督に招聘した2012年シーズンを、20年目にして初のJ1優勝という快挙で終える。広島県サッカー協会を中心に行っていた『スタジアム建設に関する署名』には多くの人が賛同。2013年1月には、約37万件の署名が集まったことを広島県、広島市及び広島商工会議所に対して報告をする。これを受けて同年6月に、広島県、広島市、広島商工会議所、広島県サッカー協会の4者の要請により、サッカースタジアムの建設を具体的に進める「サッカースタジアム検討協議会」が設置された。

検討協議会立ち上げから6年目にして建設地決定

 検討協議会ではその後、広島におけるサッカースタジアムのあるべき姿などを議論。それを踏まえたうえで候補地の選定を進めた結果、2009年までプロ野球の広島東洋カープが本拠地としていた野球場のあった中央公園内の「旧広島市民球場跡地」と、広島港に隣接する「広島みなと公園」の2カ所を候補地として絞り込み、2014年12月に上記の4者に提言が提出された。

 その後、広島県、広島市、広島商工会議所の3者で構成する「サッカースタジアム実務者検証作業部会」は、2候補地の検証を行い、スタジアムの規模や多機能化・複合開発、概算事業費などの点で、広島みなと公園が優位とした。一方で、利用者側の代表ともいえるサンフレッチェ広島は、広島みなと公園ではEスタと同様に市内中心部からのアクセスに課題があるなどの懸念を表明し、候補地の選定が難航した。

 この状況を打破すべく、4者による意見交換が行われ、2つの候補地以外の他の候補地に関しても改めて検討することについて合意。2016年9月には、当初は試合開催時の騒音などによる近隣の生活環境への影響が懸念され候補地から外れていた「中央公園広場」、現在のEピースが建設された場所を第3の候補地として検討することとなった。その後、近隣住民からは中央公園広場の建設候補地撤回を求める申し入れ書が提出されるなどしたが、個別説明会を繰り返し開催するなどして、住民の懸念点に対する対策などについて説明を行った。

 こういった経緯を経て、2019年2月に中央公園広場を建設場所とすることについて、広島県知事、広島市長、広島商工会議所会頭、サンフレッチェ広島会長の4者で合意。Eピースは、2024年2月1日に開業し、同月10日にこけら落としを行った。