楽になる勇気。
私が暮らす熱海は、観光地として一度廃れ、数年前に奇跡の復活を果たした。商店街は原宿の竹下通りもびっくりの賑わいを見せて、レトロ好きの若者も大勢来る。普通、観光客が増えると、飲食店も営業日を増やす。だが、熱海の飲食店は、休業日を増やした。資本主義的な考え方だと「稼げる時に稼げ」となるのだろうが、熱海の人々は「これまで五日働かなければ稼げなかった額を四日で稼げるようになったから、休みを三日に増やそう」みたいな感じで、金より時間を選んだ。私は、これを本当に素晴らしいことだと思う。命より金を大切にする世の中から、金より命を大切にする世の中になった。
人混みが苦手な私は、熱海駅から少し離れた伊豆山と呼ばれる地域に暮らしている。源頼朝が崇敬した伊豆山神社(旧・伊豆山大権現)は、伊豆山全域を神域のように清浄なものにしている。私は、伊豆山にいると「街全体が味方してくれている」と感じる。おおらかで肌艶の良い住民が多いが、人間だけではなく、花や鳥や虫や猫など、生き物の全部が自分に味方をしてくれているように感じるため、居心地が良い。だから、安心して出かけることができる。出先でボロボロに疲れても、自分には熱海がある。自分には伊豆山がある。伊豆山に行けば自然がある。自然を見て、何度でも蘇ることができる。
必要以上にものを求めて、栄養剤を投入して、自然の限界を超え、無闇矢鱈に作物を作ると、土壌は痩せ細る。今年はたくさん作れても、来年、再来年には、作物の質が落ちる。そして、最後は土壌そのものが使い物にならなくなる。「もっともっと」と求めることは、一時的な満足にはなっても、恒常的な幸せにはならない。「まだ足りない、まだ足りない」と、慢性的な欲求不満を生む。自然が破壊され、土壌が痩せ細るという現象が、今、人間に起きている。無理をしてまで自分を働かせて、栄養剤を投入して、精神的な娯楽で鬱憤を散らして、自分の限界を超えて、無闇矢鱈に作物(金)を作るよう仕向ける。結果、自分という土壌が痩せ細る。自分という土壌を守るためには「もう充分だ」と思うことが必要になる。求めれば求めるほどに、心も体も貧しくなる。必要なものは充分にある。そう思えた時、精神的な飢餓は消える。
数年前、百万円以上するネックレスを貰った。困った時は売ればいいと思って保管をしていたが、昨日、捨てた。売るのではなく、誰かにあげるのではなく、ゴミ箱に捨てた。最初は「もったいないかな」と思った。だが、私はそのネックレスをすることはなかったし、自分が気に入っていないものを誰かにあげることも違うと思った。だから、捨てた。ゴミ箱に捨てた時、私は「勝った」と思った。何に勝ったのかは不明だが、おそらく、自分に勝ったのだと思う。もったいないからと言う理由だけで、好きでもないものを長期間保管していた。ネックレスそのものは大した重量ではないが、ネックレスを捨てた瞬間、家の体重や自分の体重が一気に軽くなったのを感じた。実際の質量と、エネルギーの質量は別物で、これほどまでに軽くなるのかと驚いた。売るという行為を避けたことに、もったいなさを感じることもなかった。金に変えるよりも、自分が楽になることを優先した。
家の近くに池があり、そこには亀が暮らしている。幼少期、実家で亀を飼っていた。だから、亀には愛着を覚える。私は、亀を「先輩」と呼んでいる。晴れた日に池に行くと、先輩は間違いなく日光浴をしている。その姿を見て、私は「先輩は相変わらずだな」と思って、和む。亀は何も言わない。表情だけを見れば、仏頂面だし、愛想もない。だが、たまらなく愛おしい。百万円のネックレスは私の手元を離れたが、私には熱海がある。私には伊豆山の自然があり、私には先輩があり、自分という土壌がある。亀の速度で生きていると、周囲から馬鹿にされることも増える。だが、亀は、人間が見落としてしまうことに、しっかりと気づいている。人生は一度切りなのだから、やりたいことをやろうと言われる。しかし、人生は一度切りだからこそ「今世はのんびりしよう」と思って、亀の速度で生きることも、素晴らしいことだと思う。
坂爪さん
こんばんは。昨日は遠くまで来てくださったにもかかわらず
大変失礼な対応をしてしまい、ほんとうに申し訳ありませんでした。
夜中にふとんのなかで「自分は狂っている」と思い至りました。
私は狂った自分を坂爪さんに調律していただきたかったのだと気付きました。
狂っている自覚のないまま、それを坂爪さんにぶつけてしまいました。自覚をもってやる以上に、私は坂爪さんに悪質なことをしました。
大切な時間を奪ってしまってほんとうにごめんなさい。
私は坂爪さんのように、すぐに立ち去ることができませんでした。いつも離れることが怖くて、執着して、やりすぎて、自分の感情がわからなくなっていました。
坂爪さんが書かれていたように、私はまさにゾンビだし、坂爪さんにとって敵です。
それでもこの人は本音を書いてくれるんだ、と驚きました。
坂爪さんは私によるストレスでやられてしまっていたにも関わらず、です。
寝て寝ろ。自然のなかでゆっくりすごせ。お前に必要なのは多分こっちだ。人間になれ、コジコジになれ、プーさんになれ。
これは坂爪さんのやさしさだと思いました。この人は見捨てないんだと思いました。
うなぎパイと一緒に渡してくださった本、家で開いたときにはじめてカードが添えられていたことに気付きました。
丁寧な美しい文字で、一文字一文字心をこめて書いてくださったことが伝わってきました。
こんなに心をこめて用意してくださっていたのに、返してほしいと言わせてしまった。
坂爪さんがおっしゃっていたとおり、エゴに取り憑かれている私に今一番必要な本です。カードと一緒に大切にします。
ずっと楽に生きたかったんだ。そう思うと心が軽いです。
坂爪さん、私、仕事も、会社も、社長も、ほんとうに樂しくて大好きでした。こんなに大切なものを手放すのだから、きっと大丈夫なのだと思います。もっと、心を喜ばせてあげようと思います。
自分のジメジメした感情が、坂爪さんに照らされてカラッと乾いていくような、風が通るような感じがします。
私、コジコジ大好きなんです。自分がコジコジになれるなんて思ってもみなかったけど、なれるんですね。ゾンビからコジコジになります!
お会いできてよかったです。坂爪さんはやっぱりハンパじゃなく美しい人です。ほんとうにありがとうございました。
おおまかな予定
5月23日(木)静岡県熱海市界隈
以降、FREE!(呼ばれた場所に行きます)
連絡先・坂爪圭吾
LINE ID ibaya
keigosakatsume@gmail.com
SCHEDULE https://tinyurl.com/2y6ch66z
バッチ来い人類!うおおおおお〜!
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