"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」 作:あるミカンの上にアルミ缶
恋愛リアリティショーなるジャンルのドラマ撮影が始まった。
結局、ギリギリまで目立たないか、楽しむかで結論は出なかった。
撮影場所に到着し、スタッフや演者と挨拶をした。
そこで決めた。
楽しむと。
だって女の子達みんな可愛いんだもん。前世の高校生より全然大人っぽく見えるから、あんまり子供として見れないんだもん。
そう、これは、俺が悪いんじゃない。やけに大人っぽい高校生が多いこの世界が悪い!
出演者は男子四人、女子四人の計八名。
なーに、序盤くらいはっちゃけても、終盤にかけて黙り込んじゃえば皆の印象から無くなるんだから。
初回の撮影開始。
せめてものカモフラージュとして細い銀縁のメガネを借りて、装着した状態でスタートする。
最序盤、皆測り兼ねているのか中々話題が出ないので、精神的先輩として話題を提供し、軽くディスカッション。
そこで意見が近い人たちを二人グループにして、一緒に話題について話し合わせて発表させる。
そこからはもう、それぞれ最低限は話せる様になってるからフリータイムとして自由に話をさせる。
皆、俺のとこに集まり、他の話題がないか言ってきた。
こやつら、台本が無いからって、人を頼るなっ。
まあ仕方ないと、他の話題を提供し、今度は意見に関係なく別の二人組を作り自由にディベートさせる。そこからはフリータイムだ。
意見がまとまったのか、それぞれの組から人がやってきては、纏めた答えを俺に言ってくる。誰もそんな事は頼んでない。
カメラが向いてない隙にプロデューサーをやっている監督を見る。
取れ高があるのか、めっちゃいい笑顔で頷いてきた。
やつは使えんと、演者たちに意識を戻せば、彼らはそれぞれ自然に話し始めていた。
なんだ、出来るじゃないか。
関心関心と頷きつつ、それぞれの輪にちらっとだけ順繰り混ぜてもらう。
なになに、好きなタイプ?
ほうほう、君は大人っぽくて包容力があって頼りがいがある人がタイプと。
流し目で俺を見てくるが、大人を舐めるんじゃない。
俺はそうだなあ特にはなかったけど、
「優しくて気遣いが出来て、一緒にいて楽しい人がいいなって……君を見てたらすごい思った」
笑顔で頭を撫でると顔を赤くした。ふっ、俺の勝ちだ。
そんな感じで各組を回りコミュニケーションを図っていく。
そんなこんなで初回の撮影が終わった。
皆、俺とも仲良くしてくれる様で、連絡先を交換しグループチャットにも招待してくれた。実に良い子たちである。
俺は合法的に華の女子高生たちと楽しく話が出来て大満足。
帰る準備をしていると声をかけられ、何やら出演者で打ち上げをしたいらしい。
予定はないから構わぬと伝えれば、笑顔になって他の人のところへと走っていった。可愛らしくて何より。
どこの店がいいか全員で考えていたが中々決まらないので、監督におすすめの店を聞いてそれを伝えたら全員了承。
比較的近い場所だったので歩いて移動し、目的の店に到着。
「……な、なんかすげえ高そうじゃね?」
「う、うん、払えるかなあ……」
なんて若人たちの声が店先で上がったので「いーのいーの、別に奢るから」といって、全員の背中をそれぞれ押して無理やり入店させた。
流石に精神的おっさんが学生と割り勘なんて、みっともなさ過ぎるし。
運良く個室が空いてたので、そこに通され料理が運ばれてくる。
最初は皆恐る恐るだったが、次第に調子を取り戻し、現場の様な明るさになっていた。
とりあえず、それぞれと話をしながら楽しんでいたが、時間が経ち皆の腹も膨れたらしい。
まったりとした空気になったので、ラストオーダーとして全員で飲み物を注文する。
トイレに行くついでに会計を済ませ、戻ると各々帰り支度をしていた。
じゃー帰るかー、の号令に異口同音で「はーい」と返され、店主に挨拶をして店を出る。
帰り道歩いている途中で誰かが「……あれ? そういえば会計は?」との声で、何やら皆が固まっている。
振り返り「早く帰るぞー」と声をかければ、畏怖の様な目で俺をみてくる男子たちの顔が印象的だった。君らもいずれはこうなるんだから。
共演者がいるのも面白いな。
そう感じさせてくれた、初回の撮影だった。