"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」   作:あるミカンの上にアルミ缶

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第18話

 あいと喧嘩別れをして早二か月が経とうとしている。

 あれから彼女と一度も会ってはいない。

 どうやら彼女がずっと事務所に泊まり込んでいるみたいだ。

 おばちゃんには説教された後「早く仲直りしなよ」と言われたが、事務所も分からんし無理である。

 

 それと、あの時彼女が豹変した理由として、もしかしたらこれかもと思い当たったものがある。

 それは喧嘩別れして一週間後、用が合って図書館に行った際、目に留まった本を読んで知った。

 親に頼れない子供について簡単に書かれた本で、孤児の精神分析っぽいのがいくつか書いてあった。

 メンタル面についての箇所を読んでみると、朧気ながらに点と点が繋がりそうな項目があった。

 発達障害といった項目の中に、愛着障害といった内容があった。

 それは彼女の境遇が当てはまる障害で、色々書いてあったがその中で特に気になったのは"執着"という言葉。

 自分が気に入ったものへの執着心が強く、離されるのを極端に嫌がる。

 彼女は施設で、殆ど笑わなくなってから他人とのコミュニケーションを極端に避け始めた。

 話し方などは変わったが、残ったのは変わった彼女に対して、ずっと態度を変えなかった俺だけ。

 おばちゃんとか施設職員は他の仕事とかで忙しく、あまり構ってやれなかったのが痛い所だ。

 彼女が仮に、俺には執着心を持っていたとする。

 それは恋といったものではなく、ただ単純にずっと一緒にいてくれて、否定をしてこない精神衛生上で気が楽な人だろう。

 つまりはお気に入り。

 そんなお気に入りが突然、自分から離れると言ったらどうだろうか。

 俺が言ったのは「仕事をする」だが、彼女的に言い換えればこうかもしれない。

 仕事をする、自分との時間を減らされる。

 自分との時間を減らされるという事は、つまりその分、自分から離れていくという事。

 彼女の場合は更にそれを拡大解釈し、こちらを放っておいて仕事をするイコール自分とは離れたいといった考えまで、もしかしたらしてしまったのかもしれない。

 今回は"仕事をする"という、それぞれの解釈不一致が原因で起こってしまった事象なんじゃないかと、とりあえず結論付けた訳だ。

 

 とは言っても、それが分かったとてその関係が戻る訳ではないが。

 今考えればもっと大人の対応として、やりようはいくらでもあったはず。

 うむ、俺が悪い。大人なんだから。

 

 

 そして話は変わるが、前に受けた事務所のオーディション。

 結果は合格だった。いやあ、本当にありがたい。

 合格通知が施設に届きおばちゃんから聞かれたので、話して問題なく仕事の許可を貰えた。

 とりあえず一件、CMの撮影でエキストラとしてだが先週仕事が入り、やっと子役デビューを果たせた。

 初めてでめっちゃ緊張した記憶しかない。

 初回なので保護者代わりとして付き添いしてくれたおばちゃんが妙にテンション高くて、それが面白かった。

 

 そんな子役デビューを果たした俺な訳だが、現在街中をぶらぶらしていた。

 目的はあるが、それが見つからないからである。

 あてどなく二時間くらい歩いているが、一向に見当たらない。

 そして気付いた。交番に行けばいいと。

 そうと決まればいざ足早に交番へ向かい、対象となり得る施設の候補をリストアップしてもらった。

 足を運べば一件目、違う。二件目、違う。

 三件目……やっと見つけた。

 目の前には小さなライブハウス。

 その階段に貼られているポスターに彼女はいた。

 ポスターの中央に、笑顔の星野アイがいた。

 

 ホントにデビューするんだな。

 

 何かここに来てようやく、それが実感出来た気がする。

 とにかく今日は会場の確認が出来て良かった。

 チケットとかは当日買うのかな、まあ買えるか。なんて考えながらその場を後にする。

 

 願わくば、彼女がこの笑顔でずっといられます様に、なんて呟きながら。

 


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