"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」   作:あるミカンの上にアルミ缶

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第12話

 あいちゃんと同じ施設で暮らす様になり、早一か月。

 学校に通う為に目を覚ましたが、思考がいまいち纏まらない。

 気付けば溜息をこぼしていた。

 何だかちょっとやる気が起きない。

 決して体調が悪い訳では無く、あくまでメンタルの問題。

 理由は明白だった。

 

 星野ママに会えなかったからだ。

 

 理由は大きく二つ。

 一つはあいちゃん。

 部屋は違えど一緒に生活している以上、必然的に生活スタイルが丸被りしてしまう。

 朝起きる、あいちゃんに会う。

 あいちゃんと登校し、あいちゃんと下校する。

 あいちゃんとご飯を食べて、あいちゃんと同じ家で寝る。

 俺の生活には必ずあいちゃんがいる状況になった。

 

 いや、これは正直最初から分かっていた事であって、特段問題は無かった。

 問題は他にあった。

 

 休日に誰も見ていない状況だと確認し、今だと玄関から出ようとしたら、

 

「あれ、カズマくんお出かけするの?」

 

 適当な街ブラになり。

 あいちゃんがおばちゃんたちと部屋に入っていき、何やら大事な話を始めそうだったのでこれ幸いと駆け足で玄関に向かえば、

 

「あ、カズマくん。今から出かけるの? だったらもうすぐ話が終るから一緒に行きたい!」

 

 偶然、トイレに行こうとして部屋から出てきた彼女に見つかり、見飽きてしまった街ブラへ。

 ならばと早朝にランニングと見せかけて子供たちがまだ寝てる時間に抜け出そうとすれば、

 

「カズマくんちょうど良かったよ、あいちゃんが風邪ひいちゃったみたいだから、ちょっとだけ診てておくれよ」

 

 病院に連れていくまで忙しいおばちゃんたちの代わりに看病する事となり、その後あいちゃんたっての希望で、病院に付き添いする事となったり。まあこれは致し方ないから別に良いんだが。

 とりあえずこんな感じで、あいちゃんの力なのか原作の修正力が働いているのか分からんが、会いに行けるタイミングが無かった。

 まあ、これは間が悪かっただけで、特にあいちゃんを邪険に思う事も無いから、仕方のない要因だった。

 

 

 そしてもう一つ、それは俺と星野ママとの間を塞ぐ大きな壁。

 タイミングを悉く潰され織姫と彦星ばりに会えないので、ならば今度は事前に知識を入れてやると意気込む事にした。

 例えば面会の方法や、手続きといった、星野ママに会えるまでのハードルを一応知っとくかという事である。

 しかし何をやるにしてもあいちゃんが現れて、図書館でそういった難しい本を開こうとすればあいちゃんが覗き込んでくるので断念。

 ならばと学校のコンピューター室で密かに調べようとすれば、ポンコツPCアンドあいフラで断念。

 であればと最終手段。

 あいちゃん含め子供たちが寝静まった夜に、せっせと仕事をしているおばちゃんにちょっとだけ調べたい事があると言って、携帯電話を借りれないかとお願い。

 今までの実績で、俺が変な事をしない子という認識は持ってくれているので、特段渋られる事無く借りられた。

 まだガラケーだった。めっちゃ懐かしい。

 この時代ってもうパケット定額サービスはあったっけなあ、なんて元携帯販売員として懸念したが、まあ画像や動画は見ないから大丈夫かと切り替える。

 

 やはりガラケーは、前世でスマホ慣れした俺からするとすげー使いずらい。

 そりゃガラケーは使ってはいたが、結局スマホの方が色々と便利である。

 まずはブラウザ、インターネット。

 ○モードやら細かい事は端折るがガラケー、というかこの時代のネットは、ガラケーで検索すればガラケー用のサイトしか表示されず、PC用の画面に切り替えると表示出来たり出来なかったりする。

 故にパソコンで検索するよりも圧倒的に得られる情報量が少なかったんだ。

 なのでPCサイトの検索に対応したスマホの方が使いやすいという理由。

 閑話休題。

 

 けどまあ俺が調べたいのはお堅い公共の情報。

 割とすぐに知りたい情報にヒットし、下ボタン連打がめんどいと思いつつサイトをスクロールしていく。

 そしてようやく知りたい情報がある程度揃った。

 抜かりなく閲覧履歴は削除しておく。

 おばちゃんにお礼を言って携帯を返し、静かに自室に戻る。

 早く寝るんだよー、なんておばちゃんの言葉に片手を上げて返しといた。

 部屋に入り、俺だけ何故か一人部屋だが、今はそれがありがたかった。

 布団にダイブし、ため息を吐く。

 

 俺が星野ママに会うのはほぼ無理ゲーだった。

 

 面会は平日の日中だけとか、面会手続きに身分証明書が必要だったりとか。

 そして今の星野ママがいる場所は拘置所か刑務所っぽく、見立てが悉く甘かった。

 裁判で判決が出るまではずっと警察署とかに留置されてるのかと思ってたし、何より星野ママについて考えてる時は、今思えば意識が完全に前世の状態になってたから、大人の感覚で会いに行けると錯覚してしまっていた。

 故に改めてため息。

 

 まずいぞ、これで俺の"推しの子世界で勝ち組ライフ"が振り出しに戻ってしまった……。

 勝ち組の定義? そりゃあ可愛い美人な女性と好き合って結婚する事でしょ。

 星野ママは俺が狙える範囲内で最高の美女だと思っているから、ならそこにいきたいじゃん。

 メンヘラだろうが何だろうが、前世の経験からして何ら抵抗は無いし、寧ろウェルカムでもある。

 束縛だろうがご自由にどうぞ。嫉妬してヘラる? 大歓迎だね。

 毒親なのかもしれないが、俺の前世の年齢から考えれば星野ママは恐らく年下か同い年くらいだろうし、まあ俺もクズだからさ。

 そんな美人をみたら守ってあげたい、何とかしてあげたいって思っちゃう訳よ。

 ……まあその被害の対象が知り合いのあいちゃんってのだけちょっと心残りだけども。

 とにかくクズな俺からすれば、どうしても「それはそれ、これはこれ」って考えちゃうから、何とか星野ママと関係性を持ちたいって思う。

 彼女は他の男であいちゃんを産んでるって?

 過程よりも結果を求める俺からすれば、別の男の子供を産んでたっていいじゃない。処女厨は人生の幅を狭めるだけだぞ?

 結果として今その人の心が俺に向いているなら、それでいい。

 だから俺は星野ママを求める。

 だけど――。

 

 会いたくても会えないもどかしさに、寝るまで気落ちしたまま、冒頭の俺へと繋がった。

 


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