"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」   作:あるミカンの上にアルミ缶

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第11話

 翌朝、学校であいちゃんと会い、いつもの授業。

 そして授業が終わり、現在は放課後。

 あいちゃんから昼休みに話を聞いたところ、今日はまっすぐ帰って、そこから引っ越しらしい。

 といっても最低限の荷物しかないから、すぐ終わるとの事。

 とりあえず俺は昨日おばちゃんから、今日からあいちゃんが仲間になるから、紹介とかするんで早く帰ってこいと言われてたので、一人で即帰宅。

 家に着けば、おばちゃん含め職員がせっせと飾り付けを行っているのが目に入った。

 どうやら歓迎会でもやるらしい。

 とりあえず自室に行こう。

 

 

 途中でおばちゃんに見つかってしまい、結局手伝わされる羽目に。

 数人で内職の様に飾り付けを作ってるのを見てそれは面倒そうだと感じ、率先して床掃除を担当する。

 ゆっくりやりながら他の子たちが帰ってくるのを待ってたら、予想通り続々と帰宅してきたので、手伝ってやれーと声をかければイベント事でワクワクしていたのか我先にとちびっ子たちが手伝い始める。めっちゃいい子たち過ぎて泣けるわ。

 

 やがて年長組も帰宅し、全員揃って最終準備をしていれば、おばちゃんがあいちゃんを連れて食堂にやってきた。

 おばちゃん、連れてくるのちょっと早いよと恐らく全員が思ったに違いない。

 それはさて置きと言わんばかりにあいちゃんの紹介を始めた。

 

「今日から一緒に生活する事になる星野アイちゃんだよ」

 

「星野アイです! これからよろしくお願いします!」

 

 元気で明るい彼女の挨拶に、皆の反応は二種類だけに別れた。

 片や施設にやってきた人がする訳がないテンションに圧倒されポカンとする人。

 残りは魅入られる人。

 俺は笑顔で手を振っといた。あ、これじゃ三種類か。

 

 その後は一人ひとり自己紹介を行い、そして夕飯。

 おばちゃんが気を利かせたのか、あいちゃんが隣の席にきた。

 

「カズマくん、改めてこれからよろしくねっ」

 

 完璧な笑顔で挨拶されたので「おー、よろしくー」と気軽に返す。

 さて、今日も一日頑張ったんでご飯食べますかー、なんて考えつつおばちゃんから白米の入った茶碗をもらいながら、いつもより少し豪華な夕餉を頂こうとしたが、横目に映ったあいちゃんに、思わず手を止めた。

 同じく受け取った白米を見て、彼女の表情が僅かに強張ったからだ。

 そこで思い出す。

 あ、そういやあいちゃんって、白米に何かトラウマがあった様な気がする……。

 学校では給食時の班が違かったんで、すっかり忘れてた。

 異物混入とかそんなんだっけか?

 

 まあ白米食えなくても別に俺としてはいいんだけど、食えるなら食えた方が良いっしょ。

 彼女が全く白米に手を付けられないか分からんが、とりあえず確認してみるか。

 

「あいちゃん」

 

 彼女だけに聴こえる声量で話しかける。

 他のメンツもそれぞれで話してる人もいるから、こちらを意識されるという事は無いだろう。

 

「ん? なに、カズマくん?」

 

 あいちゃんがこちらを向いてくれたので、俺は持っている茶碗に入ったご飯に本日未使用の箸を刺して、かなり行儀悪いが解す様に軽くかき混ぜた。

 

「こらカズヤ君、行儀悪いよ!」

 

 やべ、おばちゃんに見つかった。

 とりあえず「すんませーん」と悪ガキよろしくに返しおばちゃんの目が逸れたので、明らかに頭の上に疑問符が出ているあいちゃんにかき混ぜたご飯を見せる。

 まあ白米だし、見た目は何も変わらない。

 ご飯をあいちゃんに見せながら軽く箸で掬い、一口食べる。

 そして白米の残った茶碗を彼女に差し出す。

 

「こっちの方が美味しいご飯だから、良かったら食べる?」

 

 そう伝えれば、ポカンとした表情。

 ……そりゃそうか。

 だが次第に笑顔になり、やがて声を押し殺しながら笑われた。

 しかもツボに入ったのか、声を押し殺してても肩が上下に揺れてて笑ってんのが丸わかり。めっちゃ解せぬ。

 やがて一頻り笑い終えたのか、口から大きく息を吐きだしていた。

 えーえー、良いギャグになったみたいで良かったですよー。

 私、おじさんなんで別に拗ねたりしないしい?

 

 とりあえずご飯食うかと腕を引けば、その動きを止められた。

 あいちゃんが、俺の茶碗を両手で掴んでいた。

 

「カズマくんのご飯が美味しそうだから、そっち食べてもいいかな?」

 

 この美幼女、俺のギャグを天丼してきやがった……!

 けどそれで照れない拗ねない怒らないが大人の三原則。

 どうぞー、と軽く流し、今度はあいちゃんからそちらの茶碗を受け取った。

 あいちゃんがこちらを見ている気がするが、構わず自分のおかずに箸を伸ばす。

 あー、ウィンナーうまー。

 視界の端では、彼女もようやく食べ始めた様だ。

 これしきで彼女の苦手意識が無くなるとは当然思えないが、少しでも改善できそうなら改善してあげたいって思うのがおっさん心ってやつ。

 

 

 ――ありがとう。

 

 

 右の耳に届いた幻聴は、気にする事なく左に受け流し箸を進めた。

 


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