"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」   作:あるミカンの上にアルミ缶

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第2話

 とりあえず星野アイとは仲良くなっておこうというサブミッションは行わないといけないので、休み時間ごとに話をしていた。

 しかしながら彼女、やはり人気なのである。

 特に男子。

 休み時間になれば率先して彼女の席に何人かが駆け寄り、幼稚園児以下のIQになったかの様な拙い話し方で興味を引こうとしては、彼女が向けてくれる完璧な笑顔に屈し、ただのモジモジ君に成り下がる。

 次の休み時間にもまた我先にと駆け寄り、晴れてモジモジ君が出来上がる。

 彼女は正にモジモジ君製造機と化していたのだった。

 

 しかしながらまだ皆幼女だというのに、いやはや女性とは得てして恐ろしいもの。

 新学年二日目にして、星野アイ(一番星)は男子生徒にとっては目を奪われる存在(完璧で究極のアイドル)

 同じクラスの女子生徒にとっては遠巻きから、思わず訝しみを浮かべてしまう存在となっていた。

 

 そんな中俺はというと。

 モジモジしながら彼女の周りに生えているニョロニョロ共のせいで、彼女の母親について訊けないでいた……!

 モジモジ君なんだから壁に張り付いてろとは思うが、そこはあくまでも俺、大人ですから?

 余裕を持った笑みでその光景を見ている。

 まあ放課後でも別にいいだろうし、そう考えて現在進行形で青春を謳歌している鼻たれ小僧共に楽しい時間を与えていた。

 子供とは余裕が違うのだよ、余裕が。

 普通に甥っ子たちを見ている気分になって微笑ましいというのもあるが。

 

 

 それはさておき、脳内では別の事を考えていた。

 俺のにわか知識によれば、星野アイは当初母親と一緒に暮らしていたが、なんやかんやあって母親が逮捕され、めでたく施設入りを果たしたと記憶している。

 現在の彼女の住まいさえ聞ければ、星野ママの居場所がハッキリするから、正直、秒で終わる質問をするだけでいい。

 可能ならムショ入りしている方が、個人的には都合が良かったりする。

 何故なら実家暮らし状態だと、彼女は母親に愛してもらいたいけど同時に虐待にも怯えていて、俺が母親と親しくなっている姿を見られると徐々に俺に対して警戒心を持たれて、せっかく圧倒的な美少女と仲良くなっておくのがおじゃんになってしまう。

 親子丼なんてしないよ? ホントだよ?

 

 まあ実際の話、星野アイといい関係になるのは正直難しいとは思っている。

 だって無敵で最強のアイドルと並べる自信ある? 無理だね。

 おじさんは究極のアイドルと時折プライベートで話が出来れば御の字よ。

 

 そんな未来の一番星様を軽く横目で見てみる。

 どうやらモジモジ君の番組は終わったようだ。

 もうすぐ休み時間が終るチャイムが鳴るし残当か。

 俺も一応教科書だけは出しとかないと。

 そう思い視線を戻そうとした刹那。

 

 俺の聴覚に極僅かな吐息音が届いた。

 

 そして視界の端にも映像が映る。

 

 

 一人でいる時の最適な姿をしている偶像(アイドル)の、その口角が極々僅かに下がっている姿が。

 

 

 ありゃりゃ、まあ絶対的な一番星も、今はまだ生まれたばかりだからねえ……。

 最強のアイドルが見せてくれたプライベート映像に、こちらは微笑ましくて思わず微かに自分の頬が緩むのを感じた。

 そして瞬きをしたその数舜後、彼女は完璧なアイドルへと戻っていた。

 ……まあ無理かもしれんけど、休める時は休みなよー。

 前世の甥っ子を思い出し、胸中ではあるがそんな言葉を呟いた。

 さてさて、とりあえず真面目アピールで教科書とノートだけは出しておこう。

 始業を知らせるチャイムに急かされて、俺の視界は机の中へと向かった。

 

 

 

 

 そんな姿を、究極のアイドルが微かに横目で捉えている事など知る由も無い。

 


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