鳥肌が立った。これほどきれいな再現があるだろうか。34年前の89年12月24日の有馬記念は、大井出身のイナリワンが制した。先に抜け出したスーパークリークを目指し、少しずつ追い詰めるイナリワン。1完歩ごとに縮まった差はゴールした時に鼻差逆転した。そして同じクリスマスイブ決戦となった今年、イナリワンと同じ5月7日が誕生日のドウデュースが復活劇を披露した。逃げるタイトルホルダーを追い詰める。捉えてもなお、内からスターズオンアースが接近してきた。しかしドウデュースの伸びは衰えず、半馬身差で押し切った。前方の馬を追いかける姿、内の馬との接戦。馬名、着差は違えど、同じ鹿毛の馬体を躍動させる様はそっくりだった。
イナリワンの馬名の由来となった穴守稲荷神社。同馬が制したG1の優勝レイなどの記念品を展示している。同社の宮司で展示品を管理している井上直洋氏は大一番の前に「最推しはドウデュースです。クリスマスイブの有馬記念を制すのは、ドウデュース以外にありえません」と力強く言っていた。それが現実のものとなった。井上氏は「素晴らしいですね。びっくりしました。すてきなご縁をありがとうございました」と喜んだ。イナリワンの展示品は参詣をした人は誰でも見られるようになっている。実は以前に展示品を撤去話が持ち上がったこともあった。それでも井上氏は「イナリワンを見ていたファン、そしてウマ娘などのコンテンツで現役時代を知らなくても同馬のファンのため」と抵抗し、現在に至っている。
同社のX(旧ツイッター)では、同馬の応援馬券として、単複5000円ずつ購入したことをポストしている。そして的中した際には全額子ども食堂への寄付を宣言。今回、イナリワンに縁のある神社を取材したことにより、競馬の面白さ、感動を改めて思い知らされた。そしてさらに競馬が好きになった。有馬記念史上でも印象的な年だった。それは穴守稲荷神社とイナリワン、そしてドウデュースとの不思議な縁のパワーによって確立された。