小さくて可愛いものを探す旅をするため茨城まで行ったが、結果、真夜中の住宅街を車で追っかけられることになった。なぜだ。なぜこうなった。事の顛末はこうだ。コメダ珈琲で話をしようということになったのだが、私の方が「これ以上悩み相談を聞けない！」と無理になり、敵前逃亡した。悩む人に会った時、できることなら力になりたいと思う。だが、最近、悩みなんて全部幻想で、本当は「この世の中は好きに生きれば良いだけのやりたい放題パラダイスである」という思いが強く、悩みたい人は悩みたいから悩んでいるのだ、好きにすればいい、それがあなたの人生だ、みたいに思ってしまう。

敵前逃亡した私を、敵（敵と言うのは失礼な話だ。だが、便宜上敵と呼ばせていただく）は車で追っかけてきた。私は徒歩だ。当然、逃げ切ることはできない。追いつかれて「きゃー！」となって、私は、車が入る事のできない路地裏に逃げた。テレビ番組の逃走中みたいな感じだった。逃げながら、なぜ、私は逃げ出さなければならなかったのか考えた。人間関係がうまく行く時と、まったくうまく行かない時の違いは何か。月並みだが、それは「お互いにリスペクトをしているか」だと思う。自分の悩みにどっぷり浸かってしまうと、相手に敬意を払うことを忘れてしまう。無意識の間に失礼な言動を連発してしまって、相手に不快感だけを与える。

なぜ、相手への敬意を忘れるのか。それは「日常的に、尊敬できない人を無理して尊敬したり感謝することを自分に強制しているために、自分の中にあるエネルギーが枯渇して、真に大切にしなければならない瞬間を大切にする余力がなくなっている」からだと思った。その逆もある。昨日、茨城在住の別の人から「よかったら泊まりに来なよ」と言われた。会った事のない人だが、親切で開放的な感じだった。だが、自分が軽く扱われているような、そこに行ったら確実に疲れるだろうなという予感がしたので、断った。もしも泊まったら「泊まらせてくれただけ感謝だ」とか思いながら、私の内臓は調子を崩し、呼吸は浅くなり、精神は逼迫し、免疫は壊れ、血液は汚れ、体温は奪われ、波動は下がり、あっという間に病気になる。病気の原因は、ズバリ、ストレスだ。私に悩み相談をする女性は、乳房や子宮の摘出手術経験者が多い。

悪人の悪意より、善人の無神経さに精神はやられる。大事なことは「あふれちゃん」である。自分の心の中に棲むあふれちゃんが喜ぶ生き方をするのだ。愛は絞り出すものではない。あふれ出すものだ。感謝は絞り出すものではない。あふれ出すものだ。愛と感謝を絞り出し続けると、ボロ雑巾みたいな人間になる。真夜中の住宅街を車で追っかける、ゾンビ（失礼）みたいな人間になる。ゾンビになるな。人間になれ。お前の言葉には血が通っていない。血が通っていない人間が多過ぎる。地球のキャパシティーは三十億人が限度と言われている。人口調整が始まっている。生き残りたかったら、人間になれ。人間の血を取り戻せ。乳房や子宮で済んだならマシな方だ。最悪、地球から摘出される。

意識高い系の人々は「人生は一度切りなのだから、やりたいことをやろう」と煽る。騙されるな。人生は一度切りだからこそ、よし、今世は思い切りのんびりとしようと思うのもありだ。お前に必要なのは、多分、こっちだ。疲れたら寝る。寝て、寝て、寝る。寝まくると、あふれちゃんが顔を出す。あふれちゃんが「これをやりたい」と言った時だけ、何かをやればいい。あとは、空や海や森や川を見ながら、のんびり過ごせばいい。コジコジを思い出せ。コジコジは、周囲からどう思われたいみたいなエゴがない。お前を苦しめているのは、お前のエゴだ。エゴを殺せ。変なことをするな。プー太郎になれ。プー太郎は最高だ。クマのプーさんは世界中から愛された。人間のプーさんになるのだ。嫌なことからは逃げる。失礼だなと感じたら逃げる。付き合わない。離れる。敵前逃亡する。一人になれる空間に戻り、エックハルト・トールのニュー・アースを読みながら、沢田研二の憎みきれないろくでなしを聞く。それが私だ。