2024-05-21

anond:20240521065441

事実摘示ではなく意見論評に当たると認められる

(2)原告が、名誉毀損に係る不法行為の成立を主張する表現は、本件記載のうち、「女性に対する性差別ハラスメント行為」との部分を除いた、「今般、日本中世史を専攻する男性研究者による、ソーシャルメディア(SNS)を通じた、(中略)あらゆる社会的弱者に対する、長年の(中略)ハラスメント行為が広く知られることとなりました。」という表現であるところ、

「あらゆる社会的弱者に対する、長年のハラスメント行為」という表現(以下「本件記載部分」という。)が、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として、

証拠等によってその存否を決することが可能特定原告特定行為存在を明示的又は黙示的に主張するもの理解されるのか、

証拠等による証明になじまない、原告行為価値善悪、優劣についての批判論議などに属すると理解されるかのいずれであるかについて検討する。

社会的弱者」に対する「ハラスメント行為」という表現は、それぞれ、一定の評価を含む概念を指す表現であるから、本件記載部分のような表現は、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準としても、前後文脈等により、

①どのような属性の者に対するどのような行為を指しているか具体的に想起可能であって、そのような行為の存否を証拠によって決することが可能場合もあれば、

逆に、②一定行為存在を前提として、当該行為について「社会的弱者」に対する「ハラスメント行為である評価したもの理解される場合もあり得るといえる。

これを本件についてみると、本件記載中の「日本中世史を専攻する男性研究者」が原告であり、「ソーシャルメディア(SNS)」がツイッターを指すことは争いがないことに加えて、

本件声明が、原告ツイッター原告アカウントにおいて、北村に対する揶揄誹謗中傷謝罪し、公開設定とされていた原告アカウント投稿引用したまとめサイトが作られるなどした直後の時期に発表されたものであること(認定事実(1)アないしウ、同(2)イないしょ)など一般の読者が知り得た事情をも併せ考慮し、

一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とすれば、本件記載が、原告による、ツイッター原告アカウントを通じた何らかの投稿社会に広く知られたという事実摘示するとともに、

当該投稿を指して、「あらゆる社会的弱者に対する、長年のハラスメント行為」に該当し非難されるべきものであるとの評価を主張したもの理解できるから

本件記載部分は、上記のような被告意見論評を摘示したものであると認めるのが相当である


(3)これに対し、原告は、本件声明ハラスメント防止宣言引用していることを踏まえ、

本件記載部分は、性別性的指向性自認社会身分人種民族国籍宗教信条、年齢、職業学歴職歴身体的特徴、障害の有無、病歴、犯罪歴犯罪被害歴、出身地といった被差別属性を有する者に対する差別行為差別的言動及びアカデミックハラスメントを指すと主張し、

原告上記の「差別差別的言動を長年継続していた」事実証拠等をもってその存否を決することが可能な具体的な事実摘示である旨を主張する。

しかし、原告は、ハラスメント防止宣言における「ハラスメント」の定義のうち「個人人格にかかわる言動によって、(中略)その尊厳を損なうすべての行為」を「差別行為差別的言動」と同義である解釈しているのに対し、

被告はこれに限られないと主張しているところ、「ハラスメント」の定義の前段において差別対象となりやすい様々な属性が列挙されていることを踏まえても、

「その尊厳を損なうすべての行為」が差別行為差別的言動に限られることが一義的に明らかであるとは言い難く、「尊厳を損なう」とはどのような行為ないし状態包含するかに評価が含まれから証拠による証明になじまないといわざるを得ない。

また、「ハラスメント行為」という概念について、裁判上でその該当性が争われ、裁判所が判断を示す場合があるとしても、法的評価としての判断可能であることを理由に、当該評価の表明が事実摘示に当たると解することもできないというべきである(前掲最高裁平成16年7月15日第1小法廷判決参照)。

さらに、本件では、原告が本件各投稿を行ったことは当事者間に争いがなく、このうち本件投稿3が「あらゆる社会的弱者に対する、長年のハラスメント行為」に該当するか否かについて当事者間の主張の対立があるのに対し、

その他に原告行為自体の存否が争いとなっているものはない。すなわち、本件において当事者間で実質的紛争になっているのは、

社会的弱者」という表現から容易に想起される属性を有する具体的な者に対するハラスメント行為原告が行った事実の有無や、「ハラスメント行為」に該当することが明らかな具体的な行為原告が行った事実の有無ではなく、

原告が行った本件投稿3が、「あらゆる社会的弱者に対する、長年のハラスメント行為」と呼んで非難するに値する行為であるか否かという、原告特定行為に対する善悪評価についてであると解される。

このことからも、本件記載部分は、証拠等をもってその存否を決することが可能事実摘示に尽きるものではなく、意見論評の表明に当たると解するのが相当である

(4)以上によれば、本件記載部分は、事実摘示ではなく、意見論評に当たると認められる。

記事への反応 -
  • anond:20240520211053 日本歴史学協会の声明 歴史研究者による深刻なハラスメント行為を憂慮し、再発防止に向けて取り組みます(声明) http://www.nichirekikyo.com/statement/statement20210402.html 呉座...

    • 日本歴史学協会が「あらゆる社会的弱者に対する長年のハラスメント行為」にあたると書いた呉座の投稿 ●人種差別的な書き込み 1.無能な白人記者にとっては日本は格好の獲物だ...

      • 本当に男の腐ったようなヤツだな。

      • 「意見」でしかねぇし、特定者を指し示さないと意味が分からんでしょ。 これで差別だっていうなら「対立意見」は全部差別でしょ。 被差別者は差別された状況(不利益。感情を害する...

      • やべーやつじゃん

      • はてなのバカ共って本当に成功者の足引っ張るの好きだよな そりゃお前らが誰からも愛されない底辺で人を叩くことでしか生を実感できてないとしても世の人間はお前らよりも遙かに幸...

        • たぶん本当に成功してイキイキと生きている人間は、ネットであんなことを書き散らしていないと思う

        • 成功していない人がひがんでいるだけでは

      • なんか掲示板文化を内面化したまま育っちゃった人、みたいな感じで、読んでいると恥ずかしくなる 共感性羞恥ってやつかな

      • 相手の弁護士神原だったんだ 神原って色んなところに現れては差別狩りしてて感じ悪い

    • これ読んでも理解できる大脳持ったブックマーカーは10%いないと思うわ

      • そもそも理解できる人はブクマしないんじゃないか アレな人ホイホイになってる感じしかしない

        • でもdaydollarbotchさんがちゃんとツッコミを入れてくれて満足です

        • 事情を知らなかった故に構図が分かり難い。A氏が日本歴史学会含めた方々を論評、それに対して歴史学会がA氏を論評、それについてA氏が名誉毀損だと訴えた話なのかな? やべえなと...

          • まあ事情知らないと声明文に難癖つけて裁判起こしてるなんて普通思わんからな

    • こういうのを個別にレクしてくれる弁護士っているの? 自分の書き込みが名誉棄損や侮辱になるラインを見極めてみたい。 (別に特定の人への執拗な粘着行為とかしてないよ)

    • 裁判所の争点を書かないのはわざとやってるの?

    • 長すぎ、俺が要約してやる 負けたでGOZAる! ガッハッハっ!!!!

    • 「よって無罪」   いや、刑法第二百三十条を根拠にした違法行為の709条裁判だから その違法行為は認定されない、つまり無罪だから「敗訴」(提訴した呉座)つぅ理屈はわかるが ...

    • こんな難しい文章アンフェに理解できねえよ 日本歴史学協会が謝罪したと誤読してるレベルの国語力だぞ

      • https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20240521065531 そう!なにも!何も理解できていないのである!!! アンフェブックマーカーたちは感情が先にあって現実を捻じ曲げるので論理的な話...

    • 一連のブックマーカーの反応を見ると実は党派の差より知能の差の方が大きいんだなあと思う今日この頃

    • ほーん じゃあ、今後は女の人に「今般、社会学を専攻する女性研究者による、ソーシャルメディア(SNS)を通じた、男性をはじめ、あらゆる社会的弱者に対する、長年の性差別・ハラス...

  • https://anond.hatelabo.jp/20240521065825 あの人偉そうに法律とかいろんなことについて解説者ごっこやってるのに こんな初歩的なこともスキップして暇空に訴訟で負けたのか 失望しました。リ...

    • 事実の摘示(てきし) →「あいつはウソつきだ」 意見論評→「あいつの言っていることはいつもウソだ」 意見論評→「あの弁護士はまたウソを繰り返すんだろうな」 →どの弁護士か...

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